山形 鶴岡 住宅の裏山崩れ約10棟倒壊 2人と連絡取れず捜索続く

31日未明、山形県鶴岡市で住宅などの裏山が崩れ、およそ10棟の建物が巻き込まれて倒壊し、高齢の夫婦2人と連絡が取れなくなっています。警察と消防などは、夜を徹して捜索を続けることにしています。

31日午前1時ごろ、山形県鶴岡市西目で「住宅がつぶれている」と近くにいた人から警察に通報がありました。

鶴岡市によりますと、住宅や空き家などの裏山が高さ20メートルから30メートル、幅およそ100メートルにわたって崩れ、およそ10棟の建物が巻き込まれて倒壊しているということです。

市によりますと、建物の損傷が激しいため、正確な棟数の把握に時間がかかっているということです。

この土砂崩れで、80代の男性と70代の妻の2人と連絡が取れず、警察と消防、それに県からの派遣要請を受けた自衛隊などがおよそ260人態勢で捜索を続けています。

すでに日が暮れて現場は暗くなっていますが、夜を徹して捜索を続けるということです。

鶴岡市によりますと、これまでに70代の男性と60代の女性の2人が救助され、いずれも軽いけがをしているということです。

避難指示が出されている西目地区の一部では、住民8世帯22人のうち、救助された2人を含む20人の所在が確認できていて、親戚の家や市が用意した避難所代わりのホテルなどで年越しする予定です。

鶴岡市が20人の所在確認

鶴岡市によりますと裏山が崩れ土砂が流れ込んだ西目地区にある集落には、8世帯22人が暮らしていて、このうち救助された2人を含む20人と連絡が取れ、所在が確認できたということです。

鶴岡市は、現場となっている西目地区の一部に避難指示を出し連絡が取れた20人のうち
▽14人は避難所となっている金山公民館に避難しているほか
▽4人は親族の家にいることが確認されたということです。
また、
▽2人が現場周辺から救助され病院に搬送されたことが確認されています。

国交省が専門家を派遣

土砂災害を受け、国土交通省は緊急災害対策派遣隊=「TECーFORCE」を現地に派遣することにしています。

被害の情報を確認し、崩れた斜面の監視など二次災害を防止するための措置をとるほか、原因の確認を進めるということです。

山形県 災害救助法を適用

山形県は多くの住民に被害が及ぶおそれがあるとして、災害救助法の適用を決めました。

これによって救助の実施主体は鶴岡市から県に移り、避難所の設置などについて、国や県が費用を負担するということです。

知事が現場を視察「2人の救出が第一」

山形県の吉村知事は31日午後3時ごろから鶴岡市の皆川治市長と土砂崩れが起きた現場を1時間ほど視察し、連絡が取れなくなっている高齢の夫婦の救助活動を見守りました。

視察のあと、吉村知事は報道陣の取材に応じ、「2人の救出が第一で、関係機関で全力をあげていく。寒空のもとで避難している人もいるため、1日でも早く戻られるように安全・安心の面から、調査や確認などを進めていきたい」と述べました。

また、鶴岡市の皆川市長は、12月に降った雨や雪の量が12月、1か月間の降水量で過去最多になっていることについて「雨量が例年よりも多いというような危機感は正直なかった。『どうしてこういったことが起こってしまったのか』というのが、まずは率直な思いだ。人命救助に全力をあげるが、原因などについても県と連携しながら対応していきたい」と述べました。

現場は

現場は、山形県鶴岡市の市街地から西に10キロ余り離れています。

JR羽越線の羽前水沢駅からは北西に1.3キロほどいったところで、近くは田畑や林が広がっているほか、住宅や会社の事務所などが点在しています。

現場を撮影した映像からは、建物の裏手の斜面が大きくえぐれて崩落し、赤茶色の地肌がむき出しになっているのが確認できます。

崩落したとみられる土砂が下に流れ出て、建物が押し出されたように見えます。一部の建物は大きく壊れたり、傾いたりしています。赤色灯を回した複数の消防車両が止まり、活動に当たる様子も確認できます。

近くにある田んぼのように見える地面には、ほとんど雪が積もっていません。
鶴岡市によりますと土砂崩れに巻き込まれた現場には8世帯22人が暮らし、住民のおよそ半数が65歳以上の高齢者だということです。

被害にあったのは住宅や空き家などおよそ10棟の建物で、このうち連絡が取れなくなっている高齢の夫婦が住んでいたのは、この区域の東側にある山のふもとから南に2軒目の住宅でした。

この住宅を含む周辺の建物は、いずれも全壊したということです。

一方、高齢夫婦の家の南隣の住宅に住んでいた男女2人も土砂崩れに巻き込まれましたが、午前4時ごろ救助され、いずれも軽いけがだということです。
国土地理院が公開している航空写真では、1960年代、現場周辺に住宅はなく樹木が生い茂っている様子がうかがえます。
このあと1970年代に撮影された航空写真では、現場を含む周辺一帯の山肌などが削られ、その下の茶色い土砂が広い範囲で確認できます。
そして、2016年の写真では、その削られた区域に複数の建物が建っているのが確認できます。
鶴岡市によりますと、今回、土砂が崩れた場所は、土砂災害が発生するおそれがある「土砂災害警戒区域」よりさらに危険性が高いとされる「土砂災害特別警戒区域」に指定されているということです。

救助された男性「竜巻のような音 家の中に大木が」

鶴岡市西目に住む加藤省一さん(76)は、自宅の2階のベッドで寝ていたときに土砂崩れに巻き込まれました。

加藤さんは、当時の状況について「竜巻のような音がして、家の中に大木が入ってきた。大変だと思ったらベッドごと横滑りしてドンと落ちた感覚があってそこから2時間動けなくなった」と話していました。

加藤さんは、体が少し動かせる程度の空間で、救助されるまでの2時間、待ち続けたということです。

加藤さんは「最初の30分は助けを求めて叫び続けた。サイレンの音が聞こえて救助隊員に助けてもらったときはほっとした。改めて現場を見て助かったのは奇跡だと思う」と話していました。

その上で「通報してくれた人と助けてくれた人に本当に感謝したい。避難生活は大変だが、命さえあればそれでいい。連絡がとれていない人も無事でいてほしい」と話していました。

避難した男性「外に出てあぜん」

近くの公民館に避難した40代の男性は「特に大きな音もしなかったため土砂崩れに気付かず、警察の呼びかけで午前2時ごろにはじめて知った。自宅から外に出てみると、50メートルほど先で裏山が大きく崩れてあぜんとした。『まさか』という思いだ」と話していました。

近所に住む男性「複数の建物が土砂崩れに」

午前2時前に現場を訪れたという近所に住む男性は、NHKの取材に対して「複数の建物が土砂崩れに巻き込まれていた。そのうち1軒は土砂が入り込み傾いているように見えた。現場の地区は人が住む集落で、土砂が入り込んだ家にも人が住んでいたと思う」と話していました。

男性によりますと、消防や警察が大勢かけつけて、救助活動などに当たっていたということです。また、近くの住宅を回って避難するよう呼びかけがあったということで、住民の一部が近くの公民館に避難しているということです。

男性は「これまで土砂崩れなどが起きたことがない集落なので、とても驚いています。けがをした人がいないか心配です」と話していました。

夫婦を知る自治会長「早く見つかってほしい」

裏山が崩れて住宅が巻き込まれ、連絡が取れなくなっている高齢の夫婦について、この地区の安倍長一自治会長は「年に1、2回ほど顔をあわせる程度だったが非常に優しいご夫婦で、雰囲気のいい人たちだった。とても心配で、とにかく早く見つかってほしい」と話していました。

鶴岡市では雨と雪を観測

気象庁の情報によりますと、現場から東におよそ15キロ離れた鶴岡市桂荒俣では午前1時までの3時間に1.5ミリの雨を、また、南に35キロほど離れた鶴岡市荒沢では午前1時までの3時間に0.5ミリの雨をそれぞれ観測しています。

さらに鶴岡市桂荒俣では、午前1時までの24時間で6センチの降雪を観測し、午前1時の積雪は34センチとなっています。

降水量 12月としては最多

気象庁によりますと、山形県鶴岡市では12月に入って30日までに降った雨や雪の量が500.5ミリと、昭和51年に観測を始めて以来、12月・1か月間の降水量として最も多くなっているほか、ほかの月と比べても過去4番目に多くなっています。

12月の鶴岡市の1日当たりの降水量は、7日に40ミリを観測したほか、山形県内に「顕著な大雪に関する気象情報」が発表された23日には46.5ミリを観測していました。

土砂崩れが発生した31日の時点で大雨警報や大雪警報などは発表されていませんでした。

専門家「経年劣化で斜面に亀裂か」

東京農工大学の石川芳治名誉教授は、勾配が急な斜面で「崖崩れ」が発生したと分析しています。

石川名誉教授は現場の状況について「現場はとても勾配が急でふだんから不安定な斜面であるように見え、もともと崩れやすい地形だったと考えられる。斜面の色を見ても赤茶色に変色していて、土の中の鉄分が空気や水に触れて酸化することで風化が進んでいたとみられる」と指摘しました。

その上で、「長い年月をかけて風化した斜面が、大雨や大雪となっていなくても突然、崩れることはこれまでにも各地で起きている。今回も経年劣化によって斜面に亀裂が入り、崖崩れにつながったのではないか」と分析しています。

また、今回の土砂災害の原因は詳しい分析が必要だとした上で、「山や崖の近くに住む人は、ふだんから斜面に亀裂が入っていないかなど、周囲の状況を確認しておくことが大切だ」と話していました。

突然の土砂崩れ 「前兆現象」に注意を

今回のような直前に大雨や大雪となっていない中での突然の土砂崩れは、過去にも発生しています。

2018年4月には大分県中津市耶馬溪町で山の斜面が幅160メートルにわたって大規模に崩壊し、住宅4棟が巻き込まれて6人が犠牲になりました。

2020年2月には神奈川県逗子市でマンションが所有する道路脇の斜面が崩れ、歩道を歩いていた18歳の女子高校生が巻き込まれて死亡しました。

いずれも、まとまった雨は降っていませんでした。

石川名誉教授は、こうした突然の土砂崩れが起きるリスクがあるのは、傾斜が急な斜面や地下水が集まりやすい地形の斜面だとしています。

長い年月をかけて風化が進むと、雨が降っていなくても崩れるケースが考えられるということです。

それでは、土砂災害のリスクのある地域に住んでいる人はどうすればいいのか。

石川名誉教授は雨が降っていないと大雨の警報などが発表されず事前の避難は難しいケースが多いとした上で、土砂災害のリスクのある場所に住んでいる人は「前兆現象」に注意してほしいとしています。

具体的には、崩れる前に▽小石がパラパラと落ちてくる、▽斜面に亀裂が生じたり徐々に広がったりする、▽湧き水の量が増えたり急に止まったりするなどの現象が確認される場合があるということです。

自分の家に土砂災害のリスクがあるかどうかは自治体によって「土砂災害警戒区域」に指定されているかなどで確認できます。

石川名誉教授は「リスクがある地域では、ふだんから裏山の湧き水や斜面の亀裂などの状況をよく確認してほしい。土砂崩れの前兆現象に気付いた場合にはたとえ大雨が降っていなくても安全な場所に避難することが大切だ」と話していました。