【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(29日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる29日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ベラルーシにウクライナ軍のミサイル落下か 国営通信が伝える

ベラルーシの国営通信は29日、ウクライナ北部に隣接するベラルーシの南西部ブレスト州イワノボでウクライナ軍の地対空ミサイルシステムS300のミサイルが落下したと伝え、現場の写真を公開しました。

ベラルーシの国防省などが調査を続けていて、ルカシェンコ大統領にも報告したとしています。

また、けが人などの情報は入っていないとしています。

ブチャ 深刻な電力不足 日本の発電機設置も

軍事侵攻のあと、一時、ロシア軍に占拠されていた首都キーウ近郊のブチャでは、その後も電力施設への攻撃が続き、年の瀬を迎えた今も深刻な電力不足となっています。

こうした中で今月、日本が提供した大型の発電機がブチャにある2か所のボイラー施設に設置されました。停電中も発電機を使ってボイラーを動かし、市民が暖房を使えるようになったということです。

ブチャの副市長は「発電機があれば、冬に凍える人を救うことができ、本当に感謝しています。これからさらに寒くなると気温がマイナス10度から20度まで下がることが想定され、迅速に発電機を送ってくれた日本政府や日本の人々に感謝します」と話していました。
一方、同じブチャにある食品などを扱う商店では、暖房が稼働していませんでした。寒さをしのぐため、店員たちが店の中でもダウンジャケットなどを着込んで客への対応に当たっていました。

店では電力不足から精肉など保存のきかない生鮮品の取り扱いができなくなっているということです。

53歳の店員の女性は、「電気もないし、お客さんも来ません、とても大変な状況です。家の中は寒いのでいろいろ着込む必要がありますが、祖母はまもなく91歳で寒さに震えています。水と暖房さえあればなんとか耐えられるのですが」などと目に涙を浮かべながら話していました。

“ロシアは120発以上のミサイル発射”

ウクライナのポドリャク大統領府顧問は、29日、SNSに「重要なインフラ施設を破壊し、大勢の市民を殺害するためにロシアは120発以上のミサイルをウクライナ側に発射した」と投稿しました。

各地でミサイル攻撃か ウクライナ全土に防空警報

ウクライナ軍は29日午前、ロシアによるミサイルなどが各地に飛来しているとして、SNSを通して国民に対し、安全な場所に避難するよう呼びかけています。

NHKの取材班がいる首都キーウ市内のホテルでも現地時間の午前8時半ごろ、日本時間の午後3時半ごろ、少なくとも2回、「ドーン」という爆発音のような音が聞こえたあとおよそ30分後にも断続的に同じような音が聞こえました。

ウクライナでは29日、朝から全土に防空警報が出されています。

ウクライナ 約1400機の偵察用無人機など購入

ウクライナのフェドロフ副首相兼デジタル転換相は、28日に配信されたAP通信のインタビューの中で、これまでにおよそ1400機の偵察用の無人機などを購入したと明らかにしました。

さらに、「偵察ドローンはある程度配備できた。攻撃ドローンを使った次の段階に移るときだ」と述べ、ウクライナのインフラ施設などに対し、ロシア軍が無人機による攻撃を繰り返す中、敵の無人機を空中で迎撃できる機体などを開発する方針を示しました。

その上でフェドロフ氏は、「ドローンに関する状況は来年2月から4月にかけて劇的に変化すると言える」と述べて、無人機を使った戦闘で主導権を握りたいという考えを強調しました。

ゼレンスキー大統領 “捕虜1456人が解放された”

ウクライナのゼレンスキー大統領は28日、ウクライナの議会にあたる最高会議での演説で、ロシアによる侵攻開始以降に捕虜となった人のうち、1456人がすでに解放されたと明らかにしました。

その上で、「ウクライナの領土を取り戻すという目標は、ロシアの刑務所にいる人や捕虜となっている人、それに私たちの土地から強制的に立ち退かざるをえなかった人など、すべての人を取り戻すことにつながる」と述べました。

ゼレンスキー大統領 “他国へ避難の国民に 帰国の保証を”

ウクライナのゼレンスキー大統領は28日、新年を前にウクライナの議会にあたる最高会議で演説し、領土の解放や復興などの課題の解決に向けた見解を明らかにしました。

この中でゼレンスキー大統領は、ロシア軍が侵攻した地域でこれまでに1800の町や村を解放したと述べ、引き続き領土の奪還を進めていく考えを強調しました。

また、深刻な電力不足が続く中、火力発電への依存を減らして近代的なグリーンエネルギーを推進していきたいと述べました。

さらに、何百万人もの人が国を離れて避難を余儀なくされているとして、こうした人たちを受け入れている国々に謝意を示した上で「避難している国民がウクライナ社会から切り離されないよう、帰国を保証しなければならない」と述べ、安全の確保や経済の立て直しを進めることで、帰国への道筋を示したい考えを強調しました。

東部ルハンシク州 拠点の奪還めぐり攻防激化か

ウクライナ軍は、ロシアに支配された領土の奪還を目指して反転攻勢を続けていて、このうちロシア軍がことし7月に全域の掌握を宣言した東部ルハンシク州では、要衝クレミンナの奪還に向けて攻勢を強めているとみられています。

戦況を分析するイギリス国防省は28日、「ロシア軍がここ数日、クレミンナ周辺での軍備を増強している可能性が高い。ロシア軍は東部ドンバス地域の戦闘において、クレミンナを物資輸送などの拠点として重視している」と指摘していて、双方の攻防がさらに激しくなるとみられます。

ロシア大統領府 強硬姿勢崩さず 和平への道筋見えず

ウクライナのゼレンスキー大統領は和平に向けて、ロシア軍のウクライナからの撤退やウクライナの領土保全の回復など10の項目を掲げています。

これについて、ロシア大統領府のペスコフ報道官は28日、「ロシアの領土について、4つの新たな州がロシアに編入したという今の現実を無視する和平案はありえない」と主張しました。

ロシアのプーチン政権は、一方的な併合に踏み切ったウクライナの4つの州をウクライナがロシアの領土だと認める必要があるとの強硬姿勢を崩しておらず、和平に向けた道筋は見えていません。

ロシア 動員兵の精子凍結保存に財政支援の方針

ロシア国営のタス通信は28日、保健省が、ウクライナへの軍事侵攻で動員された兵士を対象に、精子を凍結保存するための財政支援を行う方針を決めたと伝えました。

それによりますと、動員された兵士や家族の支援を行う弁護士団体がロシア政府に働きかけた結果だとしています。

ロシアの独立系メディアなどによりますと、プーチン政権がことし9月に予備役の動員に踏み切ってから、不妊治療を行う各地の専門クリニックなどでは、若い世代の男性から精子の凍結保存の申し込みが相次ぎ、多いところでは以前の30倍になったということです。

ウクライナへの軍事侵攻で多くのロシア兵の死傷が伝えられる中、子どもを望む若い世代の間で将来への不安が広がっている現状が浮き彫りになっていることを示しているなどと、独立系メディアは伝えています。

侵攻開始から約10か月の戦況は

ウクライナ侵攻が始まってからこのおよそ10か月の戦況をまとめました。

【ロシアの侵攻開始】
ことし2月24日、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ東部の住民を保護するためとして特別な軍事作戦に乗り出すと発表し、侵攻が始まりました。
【原発を次々と占拠 重大事故への懸念高まる】
侵攻の開始直後から攻撃は各地に及び、市民にも犠牲が広がったほか、ロシア軍は、北部のチョルノービリ原子力発電所や南部にあるザポリージャ原子力発電所を次々と占拠し、原発をめぐる重大事故への懸念が高まりました。

【ブチャの惨状明らかに 停戦協議も進展せず】
侵攻開始からおよそ1か月後、首都キーウまで迫ったロシア軍は、ウクライナ軍の抵抗を受けて撤退しますが、解放されたあとの首都近郊の町、ブチャなどでは、深刻な状況が明らかになります。
多くの市民が遺体で見つかり、戦争犯罪の疑いがあるとして国際社会からロシアを非難する声が一層強まりました。
このころ、トルコが仲介して行われていた停戦をめぐる協議も、進展することはありませんでした。

【ロシアは東南部に攻勢 ウクライナは反転攻勢強める】
4月下旬、ロシア軍は軍事作戦が第2段階に入ったとして、東部や南部で攻勢を強め、5月下旬には東部ドネツク州の要衝マリウポリを掌握、7月初めには東部ルハンシク州の完全掌握を宣言しました。
これに対してウクライナ軍は、アメリカから支援された高機動ロケット砲システム=ハイマースなどを使って反転攻勢を強め、9月には東部ハルキウ州のほぼ全域を奪還したと発表しました。
11月には南部ヘルソン州でも反撃を強めるなか、ロシア軍の部隊は、州都ヘルソンを含むドニプロ川の西岸地域から撤退しました。
【ロシアの一方的な併合宣言】
一方、ロシアのプーチン大統領は9月下旬、東部と南部の4つの州の併合を一方的に宣言しました。
ロシア軍の劣勢も指摘されるなか、支配した地域については既成事実化を進めるねらいとみられます。

【ロシア インフラ施設へ攻撃】
10月上旬、ロシアが一方的に併合したウクライナ南部のクリミアにつながる橋で爆発が発生。
ロシア軍は、その報復として、ミサイルや無人機を使ってインフラ施設などへの攻撃を強めます。
ウクライナでは、発電所などが被害を受けて電力不足が深刻化し、厳しい寒さに見舞われるなか、市民生活に影響が広がりました。

【ロシア国内の複数の基地が攻撃か】
一方、ロシア国内では、12月に入って、戦略上重要な拠点となっている複数のロシア軍の空軍基地で爆発がありました。
ロシア側は、ウクライナ軍の無人機による攻撃だったとしています。
【戦争の終結は依然見通せず】
ウクライナに対する、いわゆる「支援疲れ」も指摘されるなか、ゼレンスキー大統領は12月下旬、軍事侵攻が始まって以降初めてとなる外国訪問でアメリカを訪れ、バイデン大統領に対して支援の継続を訴えました。
バイデン大統領は地対空ミサイルシステム「パトリオット」の供与を含む新たな軍事支援を発表しました。
こうした軍事支援に反発を強めるロシアのプーチン大統領は、核戦力をちらつかせることで、欧米側をけん制する動きを見せています。
ロシア軍は、来年の早い時期にも大規模な攻撃を仕掛けてくる可能性があるという見方も出ていて、戦争の終結は依然見通せない状況が続いています。