五輪談合 “8割の入札で参加合意企業の一覧表”作成し共有か

東京オリンピック・パラリンピックのテスト大会に関連する業務の入札をめぐる談合事件で、大会組織委員会が、8割の入札について、参加に合意した企業の一覧表を事前に作成し、電通など複数の会社と共有していた疑いがあることが関係者への取材で分かりました。東京地検特捜部などは、受注調整を示す資料とみて捜査を進めているものとみられます。

一方、業務を受注し、捜索を受けた8社のうち、少なくとも電通など4社は受注調整を否定しているということで、今後の捜査では一覧表が作成された経緯や意味づけの解明が焦点になるとみられます。

東京オリンピック・パラリンピックの大会組織委員会が発注した各競技のテスト大会に関連する業務の入札をめぐっては、組織委員会が関与する形で電通など複数の企業が談合を行った疑いがあるとして、東京地検特捜部と公正取引委員会が先月、落札した企業のうち広告大手・電通など8社を独占禁止法違反の疑いで捜索するなどして捜査を進めています。

関係者によりますと、容疑の対象は、テスト大会の計画立案の委託先を選ぶために2018年に実施された26件の入札で、組織委員会は競技によっては入札に参加する企業が出てこない事態を懸念し、その前年の秋に参加が見込まれる企業の実績や意向調査を電通に依頼したということです。

そして入札が始まる直前の2018年の春、26件の入札のうちおよそ8割について、参加に合意した企業の一覧表を作成し、電通など複数の会社と共有していた疑いがあることが関係者への取材で新たに分かりました。

一覧表では、合意が得られたとみられる8割の入札が青色で塗られ、組織委員会は一部の会社には具体的な競技名を挙げて、入札への参加を依頼していたということです。

入札の多くは一覧表に沿う形で落札されたということで、特捜部などは事前の受注調整を示す資料とみて解明を進めているものとみられます。

一方、業務を受注し捜索を受けた8社のうち少なくとも4社が、特捜部などの調べに対して不正を否定していることが関係者などへの取材で分かりました。

不正を否定しているのは、
▽電通
▽電通ライブ
▽セレスポ
▽フジクリエイティブコーポレーションの少なくとも4社で
ほかの4社の認否は明らかになっていません。

NHKの取材に対し電通の関係者は「組織委員会に依頼され意向調査には協力したが、入札が不調になったケースもあった。一覧表は各社の競争を制限するものではない」などと説明し、不正を否定しているほかの会社の関係者も「一覧表に書かれていない入札にも参加した。表のとおりに動いたわけではない」などと話しています。

今後の捜査では一覧表が作成された経緯や意味づけの解明が焦点になるとみられます。

電通広報「調査に全面的に協力しています」

NHKの取材に対し電通の広報は「多大なるご心配、ご迷惑をおかけしていることを心よりお詫び申し上げます。当社グループは全容解明に向けて調査に全面的に協力しています」とコメントしています。

下請け「組織委員会は寄せ集めの組織」

東京オリンピックの競技会場の1つで、大会の運営に下請けとして携わったイベント会社の担当者がNHKのインタビューに応じました。

この中で、テスト大会に関連する入札で談合の疑いが持たれていることについては「現場のスタッフは何とかこのイベントを成功させようという思いで取り組んでいたので、残念というのが率直な感想だ」と述べました。

そのうえで事件の背景については「スポーツイベントの運営では予期せぬ事態が起こることがあり、リスクを回避する意味では、その競技に特化した運営会社やスキルを持った広告会社に任せる方がスムーズだ。組織委員会は寄せ集めの組織で、短時間に業者を選んで、大会を運営するためには競技に精通している会社の意見を聴いて、任せた方が成功すると思ったのではないか」と指摘しました。

専門家「合意の立証がポイント」

公正取引委員会で審査長などを務めた東京経済大学現代法学部の中里浩教授は、今後の捜査では個々の受注業者が、談合を行うことについて、どのように合意していたかの立証がポイントになると指摘しました。

この中で中里教授は「事業者の中で主導的な役割を果たしたとされる電通と発注者の組織委員会から、個々の入札について決まった内容がどのような形で各社に伝達されていたのか。その中で、個人がどのような役割を果たしたかの解明が極めて重要だ」と述べました。

そのうえで「本来であれば入札の前に受注調整の割りふり表は存在しないはずで、一覧表の作成にあたって、電通が組織委員会からどの程度、意見を求められたのか、関与の度合いも焦点の1つになる」と指摘しています。