埼玉 親子3人殺害事件 被害者「容疑者知らない」今年1月警察に

埼玉県飯能市で親子3人が殺害された事件で、被害者はことし1月に容疑者が車を傷つけた疑いで逮捕された際、警察に対し「容疑者のことを知らない」と話していたことが捜査関係者への取材でわかりました。

警察は一方的に恨みを募らせた可能性もあるとみて調べています。

今月25日、飯能市美杉台の住宅でこの家に住むビショップ・ウィリアム・ロス・ジュニアさん(69)と妻の森田泉さん(68)、夫婦の長女で都内に住む会社員の、森田ソフィアナ恵さん(32)が、殺害された事件では、近くに住む斎藤淳容疑者(40)が逮捕され、ビショップさんに対する殺人の疑いで27日送検されました。

これまでの調べに対し、供述を拒んでいるということです。

ビショップさん夫婦は5年ほど前に現場の住宅に引っ越しましたが、去年、車が傷つけられる被害をたびたび受け、警察はことし1月、斎藤容疑者を器物損壊の疑いで逮捕していました。

この際、警察がビショップさんらに斎藤容疑者のことを知っているか確認したところ「知らない」と話していたことが捜査関係者への取材で分かりました。

容疑者は不起訴になったということです。

警察は容疑者が被害者に一方的に恨みを募らせた可能性もあるとみて詳しいいきさつを調べています。

斎藤容疑者とは

警察や近所の人によりますと、斎藤容疑者は現場近くの2階建ての住宅に1人で暮らしていました。

この住宅で生活をはじめたのは数十年前で、そのときは親や祖母など家族とともに暮らしていたということです。

子どもの頃はサッカーが得意で人気があったということです。

当時の印象について近所に住む60代の女性は「小さい頃は普通の子でした。スポーツマンのような感じでした」と話しました。

また、容疑者の自宅近くに住み、子どものころから知っているという70代の女性は「子どものころは、サッカーをしていて、顔だちもよく、人気もあった。うちの娘もかっこいいと話していた」と振り返りました。

関係者などによりますと、斎藤容疑者はその後、大阪にある芸術大学に入学したということです。

卒業後の平成19年ごろには映画監督として映画の製作に取り組んでいたといいます。

しかし、大阪で開かれた映画祭に向けた作品の編集中に連絡が取れなくなり、作品は完成しなかったといいます。

取材に応じた関係者は「クランクアップしましたが編集中に調子を崩し、未完のままスタッフとも音信不通になってしまいました。その後、話し合いのために飯能市のニュースに出た彼の家に2回行きました。当時は親の持ち家に1人で住んでいると聞き、印象は穏やかでした」と振り返りました。

容疑者は現場の住宅から家族が出て行くなどして、長い間1人で暮らしていたとみられます。

近所の人によりますと、ゴミ出しなどで顔を合わせることはあったと話す人もいますが、目立った交流はなかったということです。

容疑者の自宅近くに住む80代の女性は「以前、自治会の用事で自宅のインターホンを押した時は反応がありませんでした。ゴミ出しの時などにあいさつしたときは特に変わった様子はありませんでした。ただ、日中でも家にいて、仕事をしている様子はなかったので、どうしたのだろうと思っていました」と話していました。

ビショップさんは“気さくな人柄”

近所の人などによりますと、ビショップさんは、近所の子どもたちに笑顔で話しかけるなど気さくな人柄だったということです。

また、小説などを執筆していると話していたということです。

散歩中に話したことがあるという30代の女性は「ビショップさんは足を悪くしているようで、棒をついて散歩していました。他愛もない話ですが、立ち話をしたことがあり、とても気さくな方でした。子どもに笑顔で話しかけるので、紳士だという印象を抱きました」と話していました。

また、30代の男性は「自身が書いたという本について話してくれました。その後も何度か散歩中に会って話をし、気さくな方だと思っていました」と話していました。

妻の森田泉さん 11月末に「怖いです」と近所の人に話す

近所の人によりますと、森田泉さんは、5年ほど前に夫のビショップさんとともに現場の住宅に移り住みました。

泉さんは、笑顔がすてきな人で、夫婦仲よく散歩する姿がよく見られ、地域の清掃活動などにも参加していたということです。

近所に住む60代の女性は、11月末に泉さんと話したといいます。

このとき、車が傷つけられる被害を気にかけて「最近、どうですか」と尋ねると「最近は大丈夫です。でも、怖いです」と話していたということです。

長女の森田ソフィアナ恵さんはほがらかな人

近所に住む人によりますと長女の森田ソフィアナ恵さん(32)はほがらかな人で、最近も母親の泉さんと仲よく買い物する様子がみられたといいます。

SNSなどによりますと、日本で生まれ育ち、2009年からは海外の大学に通っていましたが、2015年に日本に戻ったとしています。

現在は両親とは別に都内で暮らし、広告会社で働いていたということです。

会社は、事件を受けて27日夜コメントを出し、ソフィアナさんについて「明るく、非常に優秀で、弊社の大切な社員の一人でした」としています。

そのうえで「社員一同とても驚き、大きなショックを受けています。ソフィアナさんならびに亡くなられたご両親のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族・ご友人の方々に対し衷心よりお悔やみ申し上げます」としています。

3人の死因は

警察は27日までに3人の遺体を詳しく調べ死因を発表しました。

いずれも首を鈍器で殴られたことによる傷が致命傷となり
死因は
▽ビショップ・ウィリアム・ロス・ジュニアさん(69)が頚髄損傷
▽妻の森田泉さん(68)が出血性ショック
▽長女の森田ソフィアナ恵さん(32)が失血死だったということです。