ウクライナ軍女性衛生兵 ロシア軍捕虜となった過酷な体験語る

ウクライナ軍の看護師として激戦となった東部マリウポリで兵士の看護に当たり、5か月間にわたってロシア軍の捕虜となった衛生兵の女性が26日にNHKの取材に応じ、ロシア軍による暴力など当時の過酷な体験を語るとともに捕虜の解放を呼びかけました。

避難先のポーランドからNHKのオンラインインタビューに応じたのはウクライナ軍の衛生兵だったビクトリア・オビディナさん(28)です。

オビディナさんは、看護師として激戦となった東部マリウポリのアゾフスターリ製鉄所でウクライナ兵の看護にあたっていましたが、ことし5月、製鉄所に残っていた民間人とともに退避する際、ロシア軍に拘束され捕虜となりました。
オビディナさんは製鉄所で当時4歳だった娘のアリサちゃんとともにいて、ロシア軍の攻撃を非難するためアリサちゃんの「家に帰りたい」などと訴える動画をSNSに投稿しましたが、それがロシア側の目にとまり、拘束されることになったということです。

娘のアリサちゃんは、退避することが許されましたが、オビディナさんはその後、東部ドネツク州の親ロシア派が支配する地域にあるオレニウカの捕虜の収容施設など複数の場所で、5か月間にわたって拘束され続けたということです。
その間、オビディナさんはウクライナ軍に関する情報を話すよう、ロシア兵からたびたび暴力を受けたということです。

当時の状況についてオビディナさんは「6人用の部屋に24人が閉じ込められた。情報をはかせようとあばらを殴られ、首を絞められた。十分な食事を与えられることもなく、体は痩せ細っていった。ゴキブリが入った食事や小魚が入った湖の水を出されることもあった」と過酷な体験を語りました。

さらに「動く時は目を閉じた状態で両手を後ろにまわして走れと言われ、壁にぶつかるとからかわれた。私たちの存在価値はないし、誰にも必要とされていないと責められた」と話し、ロシア軍による捕虜の扱いの実態を明らかにしました。
オビディナさんはその後、ウクライナとロシアがことし10月に捕虜の交換を行った際に解放され、心身の治療を経たのち、今月中旬にようやく娘のアリサちゃんと避難先のポーランドで再会を果たしました。
オビディナさんは「とてもうれしかった。いまは娘とずっと一緒にいられる。クリスマスの食事もできた。状況が落ち着いたら再びウクライナに戻って看護師の仕事をしたい」と話していました。

そのうえで「早くこの戦争が終わってほしい。ロシア軍に拘束されたすべての捕虜が解放されて家族のもとに帰れることを願っている」と話し、捕虜の解放を呼びかけました。