中国の安全保障に詳しい防衛省防衛研究所の飯田将史米欧ロシア研究室長は、台湾周辺での中国軍の軍事演習について、アメリカで台湾に対する今後5年間で最大100億ドルの軍事支援を盛り込んだ法律が成立したことがきっかけになっていると指摘したうえで、「中国としては、台湾とアメリカに対し、明確にけん制する姿勢を示さなければならないと考えたと思う」と述べました。
また、中国海軍がロシア海軍と合同で軍事演習を行っていることに関連して、「中国は今後かなり長期にわたりアメリカと競争し、対立すると覚悟していると思う。長期的な観点からロシアの戦略的な価値が高まってきていて、中国としてはいっそう、ロシアとの連携を強化していきたいと考えていると思う」と述べました。
そして、今後の中国軍の動きについては「中国が今後もアメリカと対立していくならばアメリカだけでなく、同盟国の日本をもけん制するため、台湾や日本周辺での軍事演習を強化していく可能性が否定できない」と指摘しました。
中国軍 台湾周辺で軍事演習 米の台湾への巨額軍事支援に反発か
中国軍は、アメリカで台湾に対する巨額の軍事支援を盛り込んだ法律が成立したことに反発を示したとみられる軍事演習を、25日に台湾周辺で行ったと発表しました。
台湾国防部は、26日朝までの24時間にこれまでで最も多い、延べ71機の中国軍機の活動を確認しました。
中国軍で東シナ海を管轄する東部戦区の報道官は25日、「アメリカと台湾が共謀して挑発行為をエスカレートさせていることへの断固とした反応だ」として、台湾周辺で軍事演習を行ったと発表しました。
アメリカで、台湾に対する今後5年間で最大100億ドルの軍事支援を盛り込んだ法律が成立したことなどに反発したとみられます。
台湾国防部は、26日午前6時までの24時間に台湾周辺で、中国軍の航空機延べ71機と艦艇延べ7隻の活動を確認したと発表しました。
航空機のうち「殲16戦闘機」など延べ47機が、台湾海峡の「中間線」を越えたり、台湾の南西沖の防空識別圏に進入したりしたということです。
台湾周辺の空域で一日に活動が確認された中国軍機の数としては、現在と発表の形式が違いますが、アメリカのペロシ下院議長が台湾を訪問したあとのことし8月5日の延べ68機を上回り、最も多くなっています。
台湾国防部は、「中国の行いは、立場の違いを武力で解決して、地域の平和と安定を破壊しようという考え方を改めて浮き彫りにした」と非難しました。
専門家「明確にけん制する姿勢示す」
米 ホワイトハウス報道官 “引き続き台湾の自衛能力維持へ支援”
今回の中国側の動きについて、アメリカ・ホワイトハウスの報道担当者は26日に声明を出し「中国による挑発的な軍事活動は、地域を不安定化させ、誤解のリスクを招くものだ」と懸念を示しました。そのうえでアメリカとして引き続き台湾が十分な自衛能力を維持できるよう支援していくとするとともに「1つの中国」政策に変わりはないと強調しました。