東京五輪汚職 AOKIの青木前会長 起訴内容認める 東京地裁

東京オリンピック・パラリンピックのスポンサー契約などをめぐる汚職事件で、大会組織委員会の元理事に賄賂を渡した罪に問われている紳士服大手「AOKIホールディングス」の前会長ら元幹部3人の初公判が開かれ、前会長は起訴された内容を認めました。検察は元理事とAOKI側との具体的なやり取りを示し、組織委員会の森喜朗元会長がスポンサーの選定に大きな影響力を持っていたことも明らかにしました。

AOKIホールディングス前会長の青木拡憲被告(84)と前会長の弟で副会長だった青木寶久被告(76)、それに、元専務執行役員の上田雄久被告(41)の3人は、東京大会のスポンサー契約などに関して便宜を図ってもらう目的で、組織委員会の元理事、高橋治之被告(78)に2800万円の賄賂を渡した贈賄の罪に問われています。

東京地方裁判所で開かれた初公判で、青木前会長ら3人は「間違いありません」と起訴された内容を認めました。

検察は冒頭陳述で、組織委員会の森元会長が理事会からスポンサーなどの決定を一任されていたとした上で、「高橋元理事は森元会長からスポンサー集めを任せられ、理事の権限に基づき、窓口となっていた電通の担当者にも働きかけをしていた。組織委員会と電通の中では『高橋理事案件』と言われ、できる限り実現するよう努めていた」と述べました。

また、AOKIがスポンサーに選定されるまでの過程について「前会長らは、元理事と会食をした際にスポンサーの話をもちかけられAOKIのブランド力を高められるならと考え、その場で『やりましょう』と伝えた。その後、森元会長とも会食し、青木前会長らはスポンサー選定や公式服装の受注について、好感触を得た」と述べました。

その上で「スポンサー選定の手続きが遅れていることを知ったAOKI側が元理事に急ぐよう繰り返し依頼し、元理事は、組織委員会に対して、AOKIホールディングスの選定を強く指示した」と主張しました。

被告人質問で青木前会長は、組織委員会の理事がみなし公務員だということは全く知らなかったと述べ「知らなかったこととはいえ、このような事件を起こして申し訳ない」と謝罪しました。

東京大会をめぐっては、受託収賄の罪に問われている高橋元理事や、業界大手の5つの企業の創業者や経営トップらあわせて15人が起訴されていて、一連の事件で裁判が開かれたのは初めてです。

検察側 スポンサーなどの決定「森喜朗元会長に一任」

検察の冒頭陳述によりますと、東京大会のスポンサーなどの決定は本来、理事会の決議事項でしたが2015年の理事会の決議により森元会長に一任されたということです。

高橋元理事は大手広告会社の電通で長年にわたりスポーツマーケティングの第一人者とされてきたことから組織委員会の理事に選任され、森元会長からマーケティングを担当する理事としてスポンサー集めなどを任されたとしています。
検察は「組織委員会と電通の中では元理事がスポンサー候補企業を紹介した案件は『高橋理事案件』などと呼ばれ、できる限りこれを実現するようにしていた」と強調しました。

AOKIをめぐっては、森元会長も青木前会長や高橋元理事と会食を繰り返していたということです。

検察は「2017年7月、森元会長と会食した前会長ら3人は、スポンサー選定や公式服装の受注について好感触を得た」と述べ「高橋元理事が『なんだかんだオリンピックを決めているのは森さん』と言っていた」とAOKI側が供述していることも明らかにしました。

森元会長の供述調書の内容も明らかにされ、高橋元理事の誘いで青木前会長らと会食し、服装の受注について話を聞き、AOKIへの好印象は変わらなかったなどと話していたということです。

そして、AOKIがスポンサー契約を結ぶまでのいきさつについては、「森元会長から好感触を得たAOKI側からスポンサー契約を早めるように繰り返し依頼を受けた高橋元理事が組織委員会の担当局長に働きかけ、その結果、契約の優先順位を上げ、契約時期が前倒しされた」と主張しました。

その上で、AOKI側は元理事とコンサルタント契約を結び、有利な取り計らいを受けたことの謝礼などとして、2017年10月から毎月100万円を支払うことを合意したとしています。

22日の裁判で上田元専務執行役員は「『月100万円払っているんだからダメ元でも高橋さんにお願いしてみろ』と前会長から言われた」と証言しました。

また青木前会長は高橋元理事の影響力に期待してコンサルタント契約をしたことを認めたうえで「契約について深く反省しないといけない」と述べました。