自民 薗浦衆院議員が議員辞職 検察は近く略式起訴へ

自民党の薗浦健太郎衆議院議員は、政治資金パーティーの収入をめぐり、近く政治資金規正法違反の罪で略式起訴される見通しとなったことを受けて、
21日に議員を辞職するとともに、自民党を離党しました。

また、薗浦議員が代表を務める政治団体などの収支報告書に、複数の政治資金パーティーの収入およそ4000万円が記載されていない疑いが指摘されている問題で、薗浦氏が21日午前、東京地検特捜部が政治資金規正法違反の罪で略式起訴の手続きを進めることに同意したことが、関係者への取材で分かりました。これを受けて、薗浦氏は近く略式起訴されるものとみられます。

薗浦議員は、みずからが代表を務める政治団体などの政治資金収支報告書に、複数の政治資金パーティーの収入合わせておよそ4000万円が記載されていない疑いが指摘されています。

東京地検特捜部は、薗浦氏が秘書と共謀して収支報告書に過少な記載をしていたとみて、政治資金規正法違反の罪で略式起訴する方向で調整を進めていて、薗浦氏が21日午前、手続きを進めることに同意したことから、近く略式起訴するものとみられます。

これを受けて、薗浦氏は21日午後1時ごろ、代理人を通じて細田衆議院議長宛てに議員辞職願を提出し、直ちに許可されました。

また薗浦氏は自民党に離党届も提出し、持ち回りの党紀委員会で受理されました。

薗浦氏は衆議院千葉5区選出の当選5回で50歳。読売新聞の記者や麻生副総裁の秘書を経て、2005年の衆議院選挙で初当選しました。

党内では麻生派に所属し、麻生副総裁に近いことでも知られています。

薗浦氏の辞職に伴う衆議院千葉5区の補欠選挙は、早ければ来年4月に行われる見通しです。

近く略式起訴へ 罰金刑確定なら原則5年間公民権停止

薗浦議員が代表を務める政治団体などの政治資金収支報告書をめぐっては、複数の政治資金パーティーの収入のうち、合わせておよそ4000万円が記載されていない疑いが指摘されています。

団体の会計責任者を務めていた公設第1秘書は、これまでの東京地検特捜部の任意の事情聴取に対し、これらの収入を記載しなかったことを認めていて、薗浦氏本人も特捜部の任意の調べに対して「パーティーの収入の一部を記載しないことは秘書から事前に報告を受けていた」などと説明しているということです。

この問題で、特捜部は、薗浦氏が秘書と共謀して収支報告書に過少な記載をしていたとみて、政治資金規正法違反の罪で略式起訴する方向で調整を進めていて、薗浦氏が21日午前、手続きを進めることに同意したことが、関係者への取材で分かりました。

略式起訴は、検察が簡易裁判所に書面だけの審理で罰金刑などを求めるもので、手続きを進めるには本人の同意が必要です。

これを受けて、薗浦氏は近く略式起訴されるものとみられます。

今後、薗浦氏が略式起訴され罰金刑が確定すれば、原則として5年間公民権停止となります。

薗浦議員 コメントを発表

薗浦議員は、この中で「私が代表を務める政治団体の政治資金収支報告書に誤った記載をしたことに、私にも一定の責任があることを認め、国政に送り出していただいた有権者の気持ちを思うとざんきに堪えないが、その責任をとるために議員辞職することとした」としています。

そのうえで「透明性が求められる政治資金について誤った収支報告書を提出してしまったことは、国民の政治不信を招きかねないものであり、誠に申し訳なく、心より反省している。長年、支援してくださった支援者や国民の皆さまには、大変なご心配とご迷惑をおかけし、改めておわび申し上げる」と陳謝しています。

一方で「当該団体の収支報告書については引き続き調査を進め、適切に対応する」としています。

問題の経緯と特捜部の捜査

問題の発端は去年、薗浦氏の政治団体が収支報告書のパーティー収入の記載を訂正したことでした。

薗浦氏が代表を務める「新時代政経研究会」は、2019年に開いた政治資金パーティーの収支合わせて200万円余りを記載していなかったとして去年3月、収支報告書を訂正。
これについて、大学教授が政治資金規正法違反の疑いで薗浦氏やこの団体の会計責任者を務める公設第1秘書の告発状を東京地検特捜部に提出しました。

関係者によりますと、その後、特捜部がこの秘書から任意で事情を聴いたところ「複数のパーティーについて総額4000万円の収入を報告書に記載していなかった。収入を記載しないことは事務所関係者と2人で事前に薗浦氏にも報告していた」などと説明したということです。

また、動機については、「事務所で自由に使える資金を確保するためだった。資金は遊興費などに充てていた」などと周囲に説明していることも明らかになりました。

一方、薗浦氏は、この問題が明らかになった先月30日、報道陣の取材に対し、「いわゆる『過少申告』という認識は私にはなかったし、秘書に指示をしたこともない」などと説明し、不正への関与を強く否定。

しかし、今月13日以降に行われた特捜部の任意の事情聴取に対しては一転して過少記載について秘書から事前に報告を受けたことを認め、秘書との共謀についても否定しない意向を示していました。

政治資金規正法の虚偽記載と不記載の罪は、法律上、会計責任者が処罰の対象ですが、政治家本人も共謀が認められれば刑事責任を問われます。

関係者によりますと、特捜部は、一連の捜査で得られた供述や資料から薗浦氏が秘書と共謀して収支報告書に過少な記載をしていたとみて、政治資金規正法違反の罪で略式起訴する方向で調整を進めていて、薗浦氏は、21日午前、手続きを進めることに同意しました。

松野官房長官「常に襟を正す必要がある」

松野官房長官は、記者会見で「個々の議員に関わることを、政府として答えることは控える」とする一方「政治資金の取り扱いは、一人一人の政治家が責任を自覚し、法令に沿って適正に処理することが大切だ。政治家として常に襟を正す必要がある」と述べました。

自民 萩生田政調会長「改めて党内で共有し綱紀粛正を」

自民党の萩生田政務調査会長は、記者団に対し「政治資金の問題で国民や有権者の信頼を裏切ることはあってはならないと思っている。国会議員の政治資金については公認会計士が調べているが、その手前で正しい会計処理をしていなければチェックができず、今回のことを改めて党内で共有し、綱紀粛正に向け、しっかり指導したい」と述べました。

一方、政権運営への影響について「このことで地方議会の選挙に影響を与えてはいけないので、しっかり反省して襟を正していきたい。政権運営には直接の影響はないと思う」と述べました。

自民 衛藤党紀委員長「党としても大変申し訳ない」

自民党の衛藤晟一党紀委員長は、記者団に対し「こういう事態になり、党としても大変申し訳ない。優秀で将来を嘱望された人だけに非常に残念な思いだ。再発防止をどうするかは、幹事長室を中心に考えていく」と述べました。

自民千葉県連会長 浜田防衛相「大変申し訳ない」

自民党千葉県連の会長を務める浜田靖一防衛大臣は、「コロナ禍に、国民に長く大きな負担をお願いしているこの時期に、『政治とカネ』の不祥事を起こしてしまったことは大変申し訳ない。議員辞職は、政治家として当然避けては通れないものだと考えます」とコメントを出しました。

自民 麻生派 森元法相「仲間として非常に残念」

薗浦氏が所属する自民党麻生派の事務総長を務める森英介元法務大臣は「こういう事態になったことは、仲間として、非常に残念に思う。今後の捜査の推移を見守りたい」というコメントを発表しました。

立民 岡田幹事長「自民党はほかの議員の点検を」

立憲民主党の岡田幹事長は、記者団に対し「4000万円という多額なお金であり、政治資金収支報告書に記載のない収入は、いわば裏金のような存在で、本当に反省しているのであれば 個人的に使ったのかや政治活動で使ったのかを説明してもらいたい」と述べました。

そのうえで「巨額の不記載がほかの議員でも行われていないのかを自民党にはきちんと点検してもらいたい。極めて異常なことが、それなりの立場のある議員によって行われたことは重く、離党や議員辞職したからいいということではない。政治とカネの問題は有権者の政治不信を招きかねず、しっかりと国会でも取り上げていきたい」と述べました。

維新 馬場代表「政治家の1人が法律守らないのは残念」

日本維新の会の馬場代表は、記者団に対し「政治家の出処進退はご自身で決めるべきものであり、議員辞職したことは一つの判断として受け止めたい。自民党の中枢で働き、将来を嘱望された政治家の1人が法律を守らないということは残念でならない」と述べました。

公明 石井幹事長「国民への説明責任を」

公明党の石井幹事長は「薗浦氏本人が自ら決断されたのだと思う。議員辞職願を提出した理由については、報道を通じて承知しているが、国民への説明責任を尽くしてもらいたい」というコメントを発表しました。

共産 穀田国対委員長「本当に情けないしことばがない」

共産党の穀田国会対策委員長は、記者団に対し「引き続き真相を解明する必要があるし『離党したらおしまいだ』と涼しい顔をしている自民党の責任は極めて重大だ。本当に情けないし、ことばがない。事実上の企業・団体献金である政治資金パーティーは禁止する必要がある」と述べました。

地元では「辞職は当然」の声

自民党の薗浦健太郎衆議院議員が辞職したことについて、地元の千葉県市川市では、辞職は当然だという声が聞かれました。

60代の女性は「最初は精かんで意欲的な人だと思っていたが、最近は印象が悪くなっていた。政治資金をごまかして議員を続けるのはおかしなことだと思うので、辞職は当然だと思う」と話していました。

20代の会社員の男性は「お金の問題で辞職するのであれば、市民への説明責任をしっかり果たしてもらいたい」と話していました。

40代の会社員の男性は「政治家の立場でお金の問題を起こせば、信頼の失墜につながる。非常に残念で有権者を裏切らないでほしい」と話していました。

「政治とカネ」めぐり議員辞職相次ぐ

政治資金をめぐっては、政治資金規正法を所管する寺田稔総務大臣が地元後援会の収支報告書の記載内容などに関する問題が指摘され、先月、大臣を辞任したばかりです。

さらに、「政治とカネ」をめぐっては、ここ数年、閣僚経験者を含め、国会議員が議員辞職に追い込まれるケースが相次いでいます。

このうち、菅原一秀 元経済産業大臣は、選挙区内の有権者に秘書が香典などを渡していたとして公職選挙法違反の疑いで告発され、いったん起訴猶予になりましたが、検察審査会に「起訴すべきだ」と議決され、去年6月に衆議院議員を辞職しました。

菅原元大臣はその後、略式起訴されて罰金40万円が確定。3年間公民権が停止され、すべての選挙に立候補できなくなりました。

また吉川貴盛 元農林水産大臣はおととし12月、大手鶏卵生産会社から現金を受け取っていた疑いが報じられ、自民党の役職をすべて辞任したうえで、健康状態を理由に衆議院議員を辞職しました。

吉川元大臣は、この会社の元代表から現金500万円の賄賂を受け取った収賄の罪に問われ、ことし6月に1審で執行猶予の付いた有罪判決を受けました。

河井克行 元法務大臣は、妻の案里元議員が初当選した3年前の参議院議員選挙で、地元議員ら100人に現金を配ったとして公職選挙法違反の罪に問われ、当初は無罪を主張していましたが、裁判の途中で起訴された内容の大半を認め、判決前の去年4月に衆議院議員を辞職。また、案里元議員も執行猶予の付いた有罪判決を受けたあと、去年2月に議員辞職しました。河井元大臣は、去年10月に懲役3年の実刑判決が確定しています。

このほか、政治資金収支報告書の記載をめぐっては、「桜を見る会」の前日に開催された懇親会の収支合わせておよそ3000万円が安倍元総理大臣の後援会の収支報告書に記載されていなかったとして、おととし12月に安倍氏の当時の公設第1秘書が政治資金規正法違反の罪で略式起訴され、罰金100万円の略式命令を受けています。