北朝鮮産シジミを国産と偽装か 山口の商社など警察が一斉捜索

北朝鮮から日本に不正に輸入したシジミを国産と偽って全国各地で販売したとして、警察は、不正競争防止法違反の疑いで山口県の商社などを一斉に捜索しました。捜索先は福岡や埼玉などを含む、異例の数十か所に上っていて、警察は、国内のネットワークを通じて北朝鮮に資金が流れている疑いもあるとみて、実態の解明を進める方針です。

捜索を受けたのは、山口県下関市の商社「アイコー」と、水産物加工・販売会社「満珠水産」の役員宅、それに福岡や茨城、埼玉、東京の水産会社などです。

山口県警察本部など各地の県警の捜査員が21日、一斉に捜索し、捜査関係者によりますと、これらの会社は、北朝鮮から日本に不正に輸入したシジミを、各地の水産会社などを通じて国産と偽って販売したとして、不正競争防止法違反の疑いがあるということです。

日本政府は、北朝鮮に対する独自の制裁措置として輸出入を全面的に禁止していますが、シジミは北朝鮮から中国や韓国などをう回する形で日本に不正に輸入されたということです。

シジミは北朝鮮で採れたものとみられていますが、不正輸入の過程では、原産地をロシア産などと偽って、制裁をかいくぐっていたということです。

捜索先は異例の数十か所に上り、捜査関係者によりますと、捜索の対象となった商社や水産会社などでつくる国内のネットワークを通じて北朝鮮に資金が流れている疑いもあるということです。

警察は、押収した資料を分析するなどして実態の解明を進めることにしています。

警察の捜索 各地の状況は

山口

商社の「アイコー」が入る山口県下関市の中心部のマンションでは、午前9時半ごろ、10人ほどの捜査員が段ボール箱などを抱えて次々とエントランスから入っていく様子が確認できました。

埼玉

埼玉県警は、水産物の輸出入や販売を行っている、さいたま市の業者の関係先を捜索しています。

捜査関係者によりますと、捜索は複数の箇所で行われているということで、このうち、さいたま市の事務所には、午前10時前におよそ10人の捜査員が中に入り関係資料の捜索にあたっています。

福岡

福岡県警も21日午前、捜査員数十人態勢で県内の複数の関係先の捜索に入ったことが、捜査関係者への取材でわかりました。

このうち、新宮町にある会社の事務所や隣接する住宅では、捜査員が乗った車が次々に敷地内に入っていき、午前10時前に捜索が始まりました。

茨城

21日午前9時半すぎ、茨城県水戸市にあるシジミ直売所では、茨城県警の捜査員10人以上が次々と建物の中に入っていきました。

直売所の入り口には「シジミ不漁のため、当面の間、小売りの販売を中止しています。」という貼り紙がしてありました。

店の関係者は「シジミは夏はよくとれるが、冬は不漁のため、この時期は市場に出すだけで、一般客には売っていない」などと話していました。

過去の北朝鮮不正輸出入の経緯

北朝鮮による核実験や弾道ミサイルの発射を受け、政府は、平成18年から日本独自の制裁措置を実施していて、貿易に関しては、北朝鮮との間ですべての品目の輸入と輸出を禁止しています。

制裁は期限付きですが、政府は核やミサイル、拉致問題などで具体的な進展が見られないとして延長を続けてきました。

これによって、北朝鮮の外貨稼ぎに一定の影響を与えてきたとみられる一方、制裁を逃れた不正な輸出入もたびたび警察などによって摘発されています。

このうち、海産物については、制裁が始まった翌年に北朝鮮産のアサリを中国産と偽って輸入したとして船長らが逮捕されたほか、平成20年には北朝鮮産のウニを不正輸入したとして水産物販売会社の社長らが逮捕されました。

その後、食料品や日用品などを不正に輸入する事件も起きていて、平成27年には北朝鮮から大量のマツタケを不正輸入したとして食品卸売会社の社長らが逮捕されるとともに、警察が関係先として、朝鮮総連=在日本朝鮮人総連合会トップの議長の自宅なども捜索しました。

警察などは、制裁の実効性を担保できるよう取締りを強化してきましたが、ここ数年は個人の不正輸入などを除くと、大規模な事件の摘発などはありませんでした。

北朝鮮の資金源と捜査のねらいは

ことしに入って、これまでにない頻度で弾道ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮。核とミサイルの開発につぎ込まれる資金をどのように得ているのか。

国連安全保障理事会の専門家パネルは、最近は暗号資産の交換所などを標的にしたサイバー攻撃が重要な資金源になっていると指摘しています。

一方で、捜査関係者によりますと、北朝鮮のサイバー攻撃は、朝鮮人民軍のサイバー部隊など主に軍事部門のラインで展開されているとみられ、それ以外の資金獲得ルートも監視する必要があるとしています。

例えば制裁逃れによる外貨獲得は依然、有効な手段となっていて、禁制品の不正な輸出もその1つとされています。

今回の事件で、警察は、国産と偽って販売されていたシジミは、全国に幅広く流通していたとみていて、ある警察幹部は「家庭の食卓で出されるシジミが北朝鮮のミサイル開発の資金源になっていたおそれがあると思うと遺憾だ」と話しています。

また、捜査関係者によりますと、不正輸入を担った疑いのある山口県下関市の商社や水産物加工・販売会社を中心に、全国各地の水産会社などでつくるネットワークが存在し、中には、朝鮮労働党傘下の企業と関わりを持っているとみられる会社もあるということです。

警察は、北朝鮮から不正輸入された海産物の流通実態を把握するとともに、北朝鮮への資金ルートを解明し、制裁の実効性の確保につなげたい考えです。