安倍元首相銃撃事件 容疑者の鑑定留置再延長の決定を取り消し

安倍元総理大臣が奈良市で演説中に銃で撃たれて死亡した事件で、奈良地方裁判所は容疑者の精神鑑定を行う「鑑定留置」の期間を再び延長した簡易裁判所の決定を取り消しました。これにより、鑑定留置の期間はもとの来年1月10日までとなりました。

ことし7月、奈良市で安倍元総理大臣が演説中に銃で撃たれて死亡した事件で、殺人の疑いが持たれている奈良市に住む無職、山上徹也容疑者(42)は、警察の調べに対し、母親が多額の献金をしていた「世界平和統一家庭連合」旧統一教会に恨みを募らせた末、事件を起こしたなどと供述しています。

奈良地方検察庁は「鑑定留置」をして刑事責任能力を調べるための精神鑑定を行っていますが「さらに鑑定をする必要が生じた」として2回目となる期間の延長を請求し、19日、奈良簡易裁判所は来年1月10日までとした期間を1月23日まで延長する決定をしました。

容疑者の弁護団がこの決定を不服として20日、準抗告の申し立てを行ったところ、奈良地方裁判所は延長の決定を取り消したうえで検察の再延長の請求も退け、鑑定留置の期間はもとの来年1月10日までとなりました。

弁護団によりますと、地裁は「今後の検察の鑑定作業の内容などを踏まえても、期間をさらに延長すべき必要性は認めがたい」などと説明したということです。

山上容疑者の弁護団「妥当な決定」

山上容疑者の弁護団は、鑑定留置の期間の再延長の決定が取り消され、検察の再延長の請求も退けられたことについて「妥当な決定だと考えている。検察官に対しては今後いたずらに延長請求に及ぶことのないよう求める」とコメントしています。

専門家「極めて異例」

鑑定留置の期間の再延長の決定が取り消され、検察の再延長の請求も退けられたことについて、刑事訴訟法が専門の近畿大学法学部の辻本典央教授は「極めて異例だ。精神鑑定は慎重に行う必要があるが、鑑定留置は身柄の拘束を伴う厳しい措置であり、奈良地方裁判所が安易な期間の再延長は認めないというきぜんとした態度を示したのは評価できる。今後、検察は延長を請求する時点で真に延長すべきなのかもっと熟慮する必要がある」と話しています。