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日銀 金融緩和策の一部修正決定 円相場急激値上がり 株価下落

日銀はいまの大規模な金融緩和策の修正を決め、これまで0.25%程度に抑えてきた長期金利の上限を0.5%程度に引き上げることになりました。日銀が金利の上昇を許容することとなり外国為替市場では事実上金融引き締めにあたるという受け止めから円高ドル安が加速しました。
日銀は20日までの2日間、金融政策を決める会合を開き、いまの大規模な金融緩和策を一部修正することを決めました。

これまで短期金利をマイナスにし、長期金利をゼロ%程度に抑えるとしたうえで、長期金利は「プラスマイナス0.25%程度」の変動幅で推移するよう調節するとしてきましたが、この変動幅をプラスマイナス0.5%程度に変更しました。

欧米の中央銀行がインフレを抑えるため利上げを続け、日本でも長期金利の上昇圧力が高まる中、日銀はこれまで0.25%を上限に金利の上昇を抑え込んできました。

今回、長期金利の上限を0.5%程度まで引き上げ、変動幅を拡大することで市場の動きに柔軟に対応できるようにする狙いがあるとみられます。
日銀は引き続き緩和的な金融環境を維持するとして長期国債の買い入れについて、来月から3月まで、これまでの1か月あたり7兆3000億円から9兆円に増額するとしています。

ただ、今回の日銀の決定に対し、外国為替市場では事実上金融引き締めにあたるという受け止めから円高ドル安が加速し、株式市場では株価が大幅に値下がりしました。

円相場 132円台に5円以上値上がり 4か月ぶりの円高水準

20日の東京外国為替市場では円を買う動きが広がり、円相場は、一時、1ドル=132円台前半となり、日銀の発表前と比べておよそ5円値上がりしてことし8月以来、4か月ぶりの円高水準となりました。

午後5時時点の円相場は19日と比べて3円25銭、円高ドル安の1ドル=132円58銭から61銭でした。

また、ユーロに対しては19日と比べて3円60銭、円高ユーロ安の1ユーロ=140円70銭から74銭でした。

市場関係者は「日銀の金融政策の修正は市場から驚きだと受け止められている。金利の上昇によって企業の設備投資や個人の住宅の購入などに影響が出ることが予想され、景気の先行きや市場の動向に不透明感が広がっている」と話しています。

株価 一時800円以上値下がり

20日の東京株式市場は、日銀がいまの大規模な金融緩和策の一部を修正することを決めたことを受けて、午後の取り引きが始まると幅広い銘柄に売り注文が広がってほぼ全面安の展開となり、日経平均株価は一時800円以上値下がりしました。

▽日経平均株価、きょうの終値はきのうより669円61銭、安い2万6568円3銭、
▽東証株価指数・トピックスは、29.82、下がって、1905.59、
▽1日の出来高は18億4392万株でした。

市場関係者は「今後、金利の上昇によって企業の設備投資や個人の住宅の購入などに影響が出ることが予想され景気の先行きにも不透明感が出ている」と話しています。

国債の利回り 約7年ぶりの水準に上昇

20日の債券市場では日本国債が売られ、長期金利の代表的な指標となっている10年ものの国債の利回りは、一時、0.460%まで上昇し2015年7月以来、およそ7年ぶりの水準となっています。

日銀 従来は変動幅の拡大に否定的

日銀は、2016年9月から短期金利に加えて、長期金利に対しても誘導目標を設ける「長短金利操作」と呼ばれる今の枠組みを導入しました。

日銀は当初、「プラスマイナス0.1%」程度だった長期金利の変動幅を、市場機能の低下といった副作用などに配慮する形で段階的に拡大し、去年3月以降は、「プラスマイナス0.25%」としていました。

ただ、それ以降は長期金利の変動幅の変更について、日銀は否定的な考えを示していました。

黒田総裁は、ことし6月17日の記者会見で、欧米の中央銀行の金融引き締めによって長期金利に上昇圧力がかかっていると指摘したうえで、「こうした状況で、仮に長期金利の変動幅の上限を引き上げれば、長期金利は0.25%を超えて上昇することが予想され、金融緩和の効果は弱まると考えられるので、そういったことをやろうとは考えていない」と述べていました。

また、日銀で金融政策を担当する内田理事は、ことし5月10日に参議院の財政金融委員会で長期金利について質問された際、「現在の金融や経済の環境を前提とすると、長期金利の変動幅の拡大は事実上、利上げをすることになるわけで、日本経済にとって好ましいことではない」と述べ、変動幅を拡大すると、金融引き締めにあたり日本経済にとってよくないという認識を示していました。

債券市場 緩和策で市場機能の低下も

日銀が大規模な金融緩和策を続ける中、最近の債券市場では国債の取り引きが成立しない日もあるなど、取り引きが少ない状況が続き、市場機能の低下が指摘されていました。

その背景には、
▽世界的なインフレや、
▽日銀が長期金利の上昇を抑え込もうと、国債の大量買い入れを進めてきたことがあります。

アメリカのFRBなど、主要国の中央銀行が記録的なインフレに対応しようと大幅な利上げを進め、長期金利の上昇が続く中、ことしの春以降、日本でも長期金利の上昇圧力が強まりました。

そうした中で、日銀は4月から長期金利が0.25%を上回ることがないよう強力な措置に踏み出します。

原則として、毎日0.25%の利回りで無制限に国債を買い入れる「連続指値オペ」を導入し、その後、対象も拡大するなど国債の大量の買い入れを進めたのです。

その結果、ことし9月末の時点では、短期をのぞいて国債の発行残高の半分以上を日銀が保有する異例の状況になっていました。

また債券市場を運営する日本相互証券では、取り引きされる金利が上限の0.25%から動かない日が続いたほか、取り引きが成立しない日も相次ぎ、10月には1999年以降で初めて4営業日連続で取り引きが成立しませんでした。

日銀は、市場参加者を対象に、債券市場の取り引きの頻度や状態について定期的に調査を行っていますが、11月に行った調査でも、参加者からは市場の機能が低下していることを懸念する意見が多くなっていました。

日本商工会議所 小林会頭 “出口戦略検討するうえで妥当な措置”

日本商工会議所の小林会頭は、日銀が大規模な金融緩和策の一部修正を決めたことについて金融緩和の出口戦略を検討していくうえで妥当な措置だという認識を示しました。

小林会頭は20日の記者会見で「金融緩和の出口をそろそろ探し始めたほうがいいだろう、そのためには今までの緩和政策の検証をしたほうがいいと申し上げてきたが、この延長線上でアクションが取られたことは納得している。欧米に一歩近づく意味では妥当な措置ではないか」と述べました。

そのうえで一部修正の狙いについて、「企業が社債を発行するときに指標となる『イールドカーブ』を是正したのではないかと受け止めている。このカーブを正常化することで日銀サイドもコントロールしやすくなり、市場もある程度落ちつき社債が発行しやすくなる。こういう効果を狙ったのではないか」という見方を示しました。

その一方で小林会頭は「中小企業を含め企業全体としては金融コストが上がることになるので、コストアップ要因のひとつになる」と指摘し、企業活動への影響を注視していく考えを示しました。

鈴木財務相「物価安定目標の実現を目指すもの」

鈴木財務大臣は20日夕方、財務省で記者団の取材に応じ「金融政策は、日銀の独立性に委ねるが、今回の決定は、緩和的な金融環境を維持しつつ、市場機能の改善を図ることで金融緩和の持続性を高め、物価安定目標の実現を目指すものだと受け止めている」と述べました。

一方、今回の修正が株式市場や外国為替市場に与える影響については、「コメントしない」と述べました。

松野官房長官「今回の決定の影響も含め日本経済動向を注視」

松野官房長官は午後の記者会見で「金融政策の具体的な手法は日銀に委ねられるべきと考えるが、今回の決定は緩和的な金融環境を維持しつつ、市場機能の改善を図ることで金融緩和の持続性を高め、物価安定目標の実現を目指すものと受け止めている」と述べました。

また、記者団から「世界経済の先行きの不透明感が強まっている中で、実体経済に悪影響が強いという見方も出ている」と指摘されたのに対し「今回の決定の影響も含め、引き続き日本経済の動向について注視していきたい」と述べました。

自民 世耕参院幹事長「金融緩和の姿勢に変化はないと理解」

自民党の世耕参議院幹事長は記者会見で「日銀が以前から『イールド・カーブ・コントロール』=長短金利操作という政策をとっていて、基本的には従来の日銀の姿勢の延長上にある。マイナス金利は維持することを明確にしているほか、長期国債の買い入れ枠をさらに拡大するとしていることから、アベノミクスの基幹である金融緩和の姿勢には変化がないと理解している」と述べました。

立民 泉代表「異次元金融緩和の見直しは当然のこと」

立憲民主党の泉代表は党の会合で「ずっと疑問を呈してきたが、これだけの円安を招いたことも含めて、長年続いてしまった異次元の金融緩和を見直す状況になってきているのは当然のことだ。引き続き、市場との対話を通じながら、政策の柔軟性を高めていく必要があるだろう」と述べました。

国民 玉木代表「賃上げにマイナスの影響を与えないか注視する」

国民民主党の玉木代表は記者会見で「各国が金利を上げる中での苦肉の策だと思うが、少しタイミングが早すぎるのではないか。ようやく回復基調に入ってきた日本経済が腰折れしない万全の金融・財政政策が必要で賃上げにマイナスの影響を与えないか、しっかり注視していきたい」と述べました。

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