「餃子の王将」社長射殺事件から9年 事件の背景依然わからず

京都市で「餃子の王将」を展開する会社の社長が銃撃され殺害された事件から、19日で9年です。
銃撃の実行役として暴力団幹部が殺人などの罪で先月起訴され、警察は指示した人物がいるとみて捜査を進めていますが、事件の背景は依然としてわかっていません。

9年前の平成25年12月19日に、「王将フードサービス」の京都市の本社前で、社長だった大東隆行さん(当時72)が拳銃で撃たれて死亡した事件では、福岡県の特定危険指定暴力団 工藤会系の暴力団幹部、田中幸雄被告(56)が、銃撃の実行役として、殺人などの罪で先月、起訴されました。

田中被告は、これまで勾留されていた京都市の山科警察署から、今月16日に京都拘置所に移送されました。

捜査関係者によりますと、警察の調べに対し、黙秘を続けていたということです。

これまでの調べで、被告と大東さんとの間に接点は確認されていないということで、警察は指示した人物がいるとみて、事件のあと、会社の第三者委員会が報告書で指摘した、特定の企業グループとの間で不動産売買などの不適切な取り引きが繰り返され、巨額の資金が流出した問題について、事件に関係していなかったか慎重に調べています。

しかし、事件の背景は依然としてわかっておらず、全容解明の見通しは立っていません。

遺族「事件の真相をすべて明らかに」

事件の発生から9年となり、亡くなった大東隆行さんの長男の剛志さんが、警察を通じてコメントを発表しました。

コメントの全文です。
「私たち遺族にとって、一生忘れる事のない大切な父親の命を奪われたあの日から丸9年という長い月日がたちました。犯人が逮捕され約2か月がたち、極刑を望む気持ちに何ら変わりはありません。警察には今後の捜査で背後関係を含め事件の真相をすべて明らかにしてもらいたいと思います。犯人逮捕後も多くの方々から私たち家族に対し、励ましや温かい言葉をいただき、本当に心の支えとなり感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。最後にマスコミの皆様へのお願いです。現在私たちが置かれている状況、心情等をごしん酌いただき、我々遺族に向けての取材等は控えていただきますようお願い申し上げます」

趣味仲間「安らかに眠ってほしい」

当時、現場で倒れていた大東隆行さんを見つけた、富岡正和さん(67)は、19日午前0時すぎ、現場を訪れて祈りをささげました。

富岡さんは、趣味の「ハトレース」を通じて大東さんと知り合いました。

大東さんが飼っていたハトの世話などをしていて、毎朝、大東さんの出社に合わせて本社に顔を出していました。

事件当日は、大東さんが倒れているのを見つけると、急病を疑い、救命処置にあたったということです。

その後、富岡さんは、大東さんをしのんで写真を常に車の中に保管していて、毎年12月19日に日付が変わると現場で献花をすることにしています。

ことしの12月19日も日付が変わったあとすぐに、大東さんが当時倒れていた場所に花を手向けて手を合わせ、深々と一礼していました。

富岡さんは、「亡くなる前の大東さんの笑顔が浮かびました。安らかに眠ってほしいですし、私たちのことを見守ってほしいです。警察には事件の真相解明に向けてとことん捜査してほしいです」と話していました。

裁判員裁判で審理行うかどうか 京都地裁の判断に注目

福岡県の特定危険指定暴力団 工藤会系の暴力団幹部、田中幸雄被告は、先月、殺人などの罪で起訴されたあとも、京都府の山科警察署に勾留されていましたが、今月16日に京都拘置所に移送されました。

今後、裁判に向けた手続きが進められますが、裁判官と検察官、それに弁護士の3者が集まって争点などを絞り込む「公判前整理手続き」は始まっておらず、初公判の日程も決まっていません。

この事件は、一般の市民が審理に加わる裁判員裁判の対象ですが、裁判員法では裁判員の生命や財産に危害が及ぶおそれがある場合は対象から除外しなければならないと定められています。

6年前、工藤会系の暴力団幹部の裁判で、幹部の知り合いが裁判員に声をかけて脅したとされる事件以降、福岡などで、暴力団員が関係する事件で裁判員を除外し、裁判官だけで審理するケースが相次いでいます。

今回の事件で、京都地方裁判所が裁判員裁判で審理を行うかどうか、判断が注目されます。