グループホームが障害者の結婚に不妊処置を提案 北海道 江差町

北海道南部の江差町にあるグループホームが、20年以上前から、知的障害のある入居者が施設内で結婚や同居を望んだ際に不妊処置を提案し、これまでに8組16人が応じていたことが分かりました。北海道などは調査を始め、事実関係の確認を進めることにしています。

不妊処置を提案していたのは、江差町にある社会福祉法人「あすなろ福祉会」が運営するグループホームです。

「あすなろ福祉会」によりますと、20年以上前から、知的障害のある入居者が施設内で結婚や同居を望んだ際、不妊処置を提案し、これまでに8組16人が応じたということです。

19日会見した「あすなろ福祉会」の樋口英俊理事長は「子育てについては障害者に選択してもらう。子どもがほしいなら協力はするが、うちの法人では経験値がないので子育てのサービスは提供できないと伝えている」と説明しました。

そのうえで「不妊処置を理由にグループホームを退所した人はいない」と述べました。

こうした中、北海道と江差町は調査を始め、19日午後、職員を派遣して理事長らから聞き取りを行いました。

その後、取材に応じた道保健福祉部障害者保健課の相馬知人主幹は、「聞き取った内容やほかの人からいろいろ情報を受けて、再度、検討や調査をしていかなければならない」と述べ、事実関係の確認を進める方針を明らかにしました。

厚労省 北海道に事実関係の確認求める

北海道江差町にあるグループホームが、知的障害のある入居者が施設内で結婚や同居を望んだ場合に不妊処置を提案していたことについて、厚生労働省は道に事実関係を確認するよう求めたということです。

そのうえで、障害者を支援する障害者総合支援法に定められている「人格を尊重」するという点で問題がないかや、利用者の意に反して強制的に不妊処置が行われたかどうかがポイントになるとしています。

厚生労働省は、道が行う事実確認の内容によって対応を考えたいとしています。

専門家「受け止めるほうは選択肢がない」

障害者福祉に詳しい東京家政大学の田中恵美子教授は「施設側は話し合って決めているということだが、いまの支援がなければ暮らせない人たちに対し、その支援を切るということは、必然的に子どもをあきらめなさいと言っているのと同じだ。施設側の人たちは脅しているつもりはないかもしれないが、受け止めるほうは選択肢がなく、それは話し合っているとは言えないと思う」と述べました。

さらに、この社会福祉法人だけの問題ではないとしたうえで、「そもそも国として、障害のある人が結婚して子どもを育てることを想定しておらず、そういう制度設計の中で施設側に子育て支援の経験値がない面はあると思う。ただ、地域にある子育て支援のサービスなどにつなげることで子育てを支えることは可能だ。いまの日本は子育ての責任をすべて親に負わせているため、障害があればなおさら子どもを持つのは難しいとなってしまう。そうではなく社会全体で子育てを支える必要があるし、制度もそうなっていく必要があると思う」と話していました。

官房長官「事実関係確認し対応」

松野官房長官は、午前の記者会見で「北海道庁に事実関係の確認を求めているところだ。仮にグループホーム利用者が結婚などを希望する場合に、本人の意思に反して不妊手術や避妊用器具を用いる受胎調節などを条件とすることがあれば不適切であり、事実関係を確認したうえで北海道庁に対する助言など必要な対応を講じていく」と述べました。