【詳しく】コロナ・インフル同時検査キット一般販売(更新版)

新型コロナとインフルエンザに感染していないか同時に調べることができる「同時検査キット」は一般向けの販売が解禁され、薬局やインターネットなどで買えるようになります。
キットを使う際の注意点は?キットは十分供給されるの?
Q&A方式でまとめました。(12月14日時点で情報を更新しました)

Q1.「同時検査キット」ってそもそもどんなもの?

新型コロナの抗原検査キットは使ったことがある方も少なくないと思いますが、「同時検査キット」は、一度の検査で新型コロナとインフルエンザ両方の感染の有無を調べることができるものです。

これまでは医療機関での使用に限られていましたが、同時流行が懸念される中で医療機関のひっ迫を防ぐためにも自宅で検査できる体制を整備しようと、厚生労働省は11月28日、一般向けの販売解禁を認めました。
薬剤師が常駐する薬局のほか、ドラッグストアやインターネットでも販売できることとなりました。

また、販売の際には薬剤師から使い方などの説明を受けることが条件になっています。

一部の製品は早ければ12月中にもインターネットでの販売が始まる見通しです。

Q2.キットの使い方は?

新型コロナの検査キットと同じように、鼻の穴から検体を取ります。

そして、線がどこに出るかで、コロナ・インフルそれぞれの「陽性」「陰性」の結果が分かります。
新型コロナで陽性だった場合、基本的には各地域ごとに設けられている「健康フォローアップセンター」に登録し、自宅療養をすることになります。

一方、症状が重い場合は、コロナでもインフルエンザでもかかりつけ医などを受診し、軽い場合は電話やオンラインでの受診を検討してほしいとしています。

注意点として、陽性だった場合にキットで出た線が時間がたつと薄くなってしまう場合があります。

このため検査後の線が出た状態のキットをスマートフォンなどで撮影し記録しておくようにしましょう。

Q3.自宅で使う際の注意点は?

キットを実際に自宅で使う場合の注意点について、日本小児科医会公衆衛生委員会の委員、時田章史医師に取材しました。

時田医師は東京・港区のクリニックで発熱外来も担っています。

【ポイント1】発熱から12時間以上たってから使う

コロナとインフルエンザ、いずれも発熱の直後は感染している場合でも「陽性」にならずに「偽陰性」となってしまう可能性があります。

特にインフルエンザは発熱から陽性になるまでの時間がかかるので、自宅でキットを使う場合は、発熱後おおむね12時間以上たってから検査してほしいということです。(※医療機関では早期に検査できる場合もあるので相談を)

時田医師
「のどが痛い、熱も出てきた、といってすぐ検査をしたくなる気持ちはわかります。しかし、特にワクチンを接種していると、最初からすぐにウイルス量が多くなく陽性になりにくいケースもあります。検査の結果が陰性でも、仕事に行ったりせずにしっかり自宅で休んで様子を見て、時間を置いてもう一度検査をしてほしい」。

【ポイント2】検査キットは冷やしすぎない

検査キットの保管温度は2度~30度。

冷蔵庫の中に保管していたり、冬場で暖房が入っていない部屋で使うと反応が進まず「偽陰性」になるケースがあります。

時田医師
「細かいことですが温度も影響してきます。逆に、真夏に入手して放置していた検査キットを使うと偽陽性となることもあるので、適正に使用してほしい」。

【ポイント3】検体採取はなるべく奥の方からしっかりと

医療機関では「鼻咽頭」と言われる鼻の奥のウイルスが多い場所まで綿棒を差し込んで検体を採取していますが、自宅で使用する場合は出血が起こりやすいことから鼻先2センチほどの場所から採取することになっています。

このため、時田医師によりますと、医療機関で行う場合に比べて10%ほど感度が落ちてしまうということです。

鼻先で検査する場合も「添付文書」と呼ばれる説明書に書かれている範囲内でなるべく奥の方まで綿棒を入れて、定められた回数、しっかりと綿棒を回転させて、入念に採取してほしいということです。

【ポイント4】検体をしっかり溶かす

検体を採取した後、溶液が入った付属の容器に綿棒を差し込んで溶かし込みますが、ここでもポイントが。

綿棒を溶液の中で回したり、容器の上から複数回もみ込んだりして、よく溶かすことが大切です。

時田医師
「容器をつまんでもんだり、綿棒を回したりする動作は10回以上はやることがお勧めです。やりすぎることはないので、しっかりと溶かすことで結果がかなり違います」

【ポイント5】結果の判定ラインは色に注目

検体を溶かし込んだ溶液を判定キットに垂らすと、陽性かどうかを判断するラインが出現します。

ウイルス量が多いほど、線が濃くなりますが、この際に大切なのが「色」です。

検査キットごとに、定められた陽性の色と違う色が出現した場合は、陽性ではないのに反応した「偽陽性」の可能性もあるということです。

時田医師
「鼻水の中の成分が入り込むことなどで、偽陽性になる場合があって、その時は例えばピンクのラインが出るはずなのにグレーのラインが出る、といったことがあります。本来の色ではなかったり、ラインが薄くて判断できない場合は、医療機関に相談してください」。

【まとめ】自宅検査はあくまでも補助的存在

採取方法や採取部位、採取のタイミングだけでなく、熱が高いかどうか、ワクチンを接種しているかどうか、キットの保管状況なども、検査結果に影響します。

時田医師が強調するのは、同じ同時検査キットでも医療機関で検査する場合と自宅で行う場合で、精度に違いがあるということです。

このため、あくまでも発熱外来がひっ迫している時の補助的な手段として使うこと、検査の結果がすべてと思わず、特に症状があるのに陰性となったときは、結果に安心して外出したりしないことが大切としています。

その上で、自宅で使う場合も、できるだけ正しい結果に近づけられるよう添付文書をよく読んで、しっかりと使い方のポイントを抑えることが大切だといいます。
また、特に幼い子どもは、症状が似たさまざまな感染症にかかりやすく、中には重篤な結果となるものもあります。

このためコロナやインフルエンザが陰性でも安心せず、不安な症状があったらかかりつけ医を直接受診することが大切だということです。

Q4.キットの最新の供給状況は?

この記事が公開される12月14日の時点では、実際に国の承認を得て販売を開始するとしているのは、医療機関で使用されている4社の同時検査キットのうち1社の製品にとどまっています。

この1社は早ければ12月中にもインターネットでの販売を始める見込みです。
ほかの社の製品も承認の条件を満たしていますが、医療機関への供給を優先するため一般販売用の在庫を確保することは難しいなどとしていました。

こうした状況を受けて厚生労働省は一般向けの供給を確保するため、薬剤師が常駐する薬局で販売する場合、医療機関で使用されている検査キットであれば新たに一般販売のための承認を得なくても販売できるようにすることを特例で認めると12月9日に通知しました。

9社の製品が対象となり、このうち4社が販売を検討するとしています。

販売開始の時期や価格などは今後決まる見通しです。

Q5.そもそもインフルエンザの感染は増えている?

全国の医療機関から12月4日までに1週間に報告された患者の数は全国で636人でした。

1医療機関当たりの1週間の患者数が全国で「1人」を超えると「全国的な流行期」入りとされていますが、今の時点では0.13人と大きく下回っています。

新型コロナウイルスの感染拡大以降、おととし(2020年)と去年(2021年)はインフルエンザの感染は広がりませんでしたが、12月4日までの1週間では38の都道府県で患者が報告されました。

1医療機関当たりの患者数は、以下のようになっています。

▼京都府 0.49人
▼岩手県 0.40人
▼大阪府 0.37人
▼熊本県 0.33人
▼愛媛県 0.31人
▼東京都 0.26人

前の週から微増していて、専門家は引き続き注意を呼びかけています。

Q6.専門家は

新型コロナウイルス対策にあたる政府の分科会のメンバーで東邦大学の舘田一博教授は「コロナの感染者や発熱患者の数が爆発的に増加すれば発熱外来の現場がひっ迫する状況が起きてしまう。同時検査キットでコロナなのかインフルエンザなのか分かれば、重症化リスクが低い人はオンライン診療などで薬の処方を受けて自宅療養してもらい、外来でも重症化リスクの高い人たちを優先できるようになるので、意義は大きい」と話しています。

一方で、舘田教授は「注意すべきはコロナとインフルエンザで陽性になるタイミングが少し異なることだ。抗原検査では陰性だった場合でも、100%感染を否定できるものではないと理解する必要がある。陰性でも翌日にもう1回検査したり、調子が悪いときは外に出ずに感染を広げないような注意も必要になる」と指摘しています。