レーザーを使った核融合の分野で国内の研究をリードする大阪大学レーザー科学研究所は、今回の実験の成功を発表したアメリカの国立研究所などとともに、共同研究チームに参加しています。
大阪大学レーザー科学研究所の藤岡慎介教授は、今回の成果について「1950年代以降、長年にわたって理論上はできるとされ、目指してきたことが実現したと聞いて大変うれしく思う。実用化に向けてはまだ遠い道のりが待っているが一歩、大きな前進をしたことは間違いない」と指摘します。
ただ、核融合炉の将来的な実用化に向けては、より効率的に、繰り返しレーザーを照射できる装置や、核融合反応で出た熱を取り出す設備などが必要で、今後の研究による技術開発が待たれる部分も多く残ります。
大阪大学では、レーザーの出力を高めることや連続して照射する制御技術の開発に力を入れていて、来年初頭から実証実験を始め、10年程度をかけてレーザー核融合による発電システムが成立するか検証する計画だということです。
“核融合実験 効率よく十分なエネルギー発生に成功” アメリカ
次世代のエネルギー源として期待されている核融合をめぐり、アメリカ・エネルギー省は、効率よく十分な量のエネルギーを発生させる実験に初めて成功したと発表しました。核融合の実用化に向けてはほかにもさまざまな技術開発が必要とされ、今後の研究の進展に注目が集まりそうです。
アメリカのエネルギー省は、カリフォルニア州にある国立研究所が今月5日に行った核融合実験で、投入したエネルギーよりも多くのエネルギーを発生させることに成功したと13日、発表しました。
実験では、容器に閉じ込めた水素に強力なレーザーを当てて核融合を起こし、投入したエネルギーのおよそ1.5倍にあたるエネルギーを発生させたとしています。
核融合は二酸化炭素を出さないなど次世代のエネルギー源として期待されています。
しかし、核融合を引き起こすには、強力なレーザーや電磁石を使って太陽のような恒星の中心部にも匹敵する高温・高圧の状態を作る必要があるため、大量のエネルギーを投入しなければならず、効率よく、投入した以上のエネルギーを発生させられるかが大きな課題の一つでした。
実験の成功についてエネルギー省のグランホルム長官は、「実験室で成功したのはこれが初めてで、21世紀における最も偉大な業績の一つだ」と述べました。
一方、核融合の実用化に向けては、ほかにもさまざまな技術開発が必要とされ、商業利用にはまだ長い時間がかかるとみられ、今後の研究の進展に注目が集まりそうです。
大阪大学レーザー科学研究所「一歩 大きな前進」


藤岡教授は「例えば、今回の実験では一日に1回の頻度で起こしている反応を将来的には1秒間に10回以上起こすことが必要なので、そうした技術開発で日本からも研究開発を主導できるよう励みたい」と話しています。