【詳しく 岸田首相会見】出産育児一時金 “50万円に増額”

岸田総理大臣は10日夜記者会見し、旧統一教会の問題を受けた被害者救済を図るための新たな法律の成立を受け、被害者への支援を迅速に進めていく考えを示しました。また子育て支援をめぐり、原則42万円が支給されている「出産育児一時金」を、来年度から50万円に引き上げる方針を表明しました。

岸田総理大臣は、10日夜、国会の閉会を受けて記者会見しました。

まず、旧統一教会の被害者と面会したことについて、「胸が苦しくなる、まさに『凄惨(せいさん)』のひと言に尽きるものだった」と振り返りました。

そして、問題の深刻さを心に刻みながら国会に臨んだとした上で、旧統一教会の問題を受けた被害者救済を図るための法律が成立したことについて「被害に苦しむ元信者や家族が直面する困難を前に与党も野党もなく、野党の意見も可能な限り取り入れつつ、圧倒的多数の合意のもとで成立させることができた」と成果を強調しました。

その上で「われわれは新たなスタート地点に立ったばかりだ。被害者がこの制度を利用しやすい環境を早急に整備することに全力を傾ける。関係機関とも密接に連携しながら必要な政府としての支援を迅速に行い、新たな制度をしっかり運用していく」と述べました。

また、岸田総理大臣は、総合経済対策に盛り込んだ電気代や都市ガス料金などの負担軽減策について、今年度の第2次補正予算に基づいて、着実に進める考えを示しました。

そして、「5つの大手電力会社から値上げ申請が行われこれに追随する動きもある。政府としては、厳正で厳格な査定を徹底する」と述べました。

さらに、「『こども真ん中政策』を引き続き徹底していく」と述べるとともに、出産費用を助成するため原則42万円が支給されている「出産育児一時金」について、来年度から50万円に引き上げる方針を表明しました。

引き上げ幅は過去最大だとしています。

このほか、今後の経済政策について「新しい資本主義」を通じて国内の投資拡大を目指すほか、リスキリング=学び直しの支援などを通じて、産業構造の大きな変革にあわせた「失業なき労働移動」を進めることで、構造的な賃上げを実現するための制度的な土台を作っていく方針を示しました。

一方、年末年始の新型コロナ対策について、医療提供体制などの強化に引き続き取り組むと説明するとともに、早期のワクチン接種や換気をはじめとする感染対策への協力を求めた上で「共に乗り越え、来年は平時の生活を全面的に取り戻そう」と呼びかけました。

最後に「年内、防衛力の抜本的強化、来年度予算編成と税制改正など重要課題が山積しており、1つ1つにベストの結果を出していく」と述べました。

そして、「特に防衛力の抜本的強化は、厳しい安全保障環境を前に、一刻の猶予もない待ったなしの課題だ。国家の意思としてきぜんと内外に示すという強い決意をもって臨む」と述べました。

また、今後5年間での防衛力の抜本的強化に加え、2027年度にGDPの2%に達する防衛費の予算措置、それに必要な安定財源の確保に取り組む考えを強調しました。

内閣改造 まったく考えていない

岸田総理大臣は記者会見で「いくつもの内外の難局に同時に直面している中、それぞれの難題に、正面から立ち向かい、国民にベストな結果を出していかなければならない。そのために適材適所でベストな体制を組み、内閣総理大臣として先頭に立って取り組んでいく。内閣改造については、まったく考えていない」と述べました。

解散総選挙はまったく考えていない

また、岸田総理大臣は「防衛増税を争点に、衆議院の解散・総選挙を行うことも選択肢に入るか」と質問されたのに対し、「解散総選挙は、まったく考えていない」と述べました。

防衛力の強化・維持目的 未来の世代に責任を

防衛力の抜本的な強化に関連して、「増税が目的でなく、防衛力の強化・維持が目的だ。5年間で抜本的に防衛力を強化することを決断したが、それが国家・国民の平和と安全を預かる総理大臣、自衛隊の最高司令官としての使命だ」と述べました。

そして「必要な財源のおよそ4分の3は歳出改革などの努力でまかなう道筋ができたが、残りの4分の1は国民に協力を頂くことを考えている。令和9年度に向けて複数年かけて段階的に実施し、開始時期は柔軟に対応する。個人の所得税負担が増加する措置は取らず、来年度から増税を開始することもない」と述べました。

そのうえで「私たちのいまの平和で豊かな暮らしを守るために、私たちの世代が未来の世代に責任果たすために協力を頂きたい」と理解を求めました。

G7広島サミット 強い意志を示したい

来年G7=主要7か国の議長国になることについては「来年の『G7広島サミット』では、武力侵略も核兵器による威嚇も国際秩序の転覆の試みも断固として拒否するというG7の強い意志を歴史に残る重みを持って示したい。そうした考えのもと、対ロシア制裁や対ウクライナ支援、周辺国への協力など、G7各国と協調しながら、引き続き、強力に推進していきたい」と述べました。

訪中など何も決まってはいない

また、日中関係について「私自身の訪中などは何も決まってはいないが、今後も、首脳レベルを含め、あらゆるレベルで緊密に意思疎通を図り、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含め対話をしっかり重ね、共通の課題は協力する『建設的かつ安定的な関係』を双方の努力で構築していくのが基本的な考え方だ」と述べました。

日米ガイドラインの扱い 決まっていない

岸田総理大臣は防衛力の抜本的な強化に向けて、「国家安全保障戦略」など3文書を年末までに策定することに関連し、「日米ガイドラインの扱いは現時点で何ら決まっているものはない。引き続き、さまざまな分野での日米の防衛協力をさらに推進し日米同盟の抑止力・対処力をいっそう強化していく」と述べました。

憲法改正 活発な議論を期待

また、憲法改正をめぐり「臨時国会では緊急事態条項をめぐって各党の主張に関する論点整理が行われた。国会で与野党の合意を得ながら1つ1つ結論を出していく必要があると考えており、そのための一歩として歓迎したい。引き続き、与野党全体でいっそう活発な議論が行われることを期待したい」と述べました。

新型コロナ 感染症法上の位置づけ 専門家の意見聞き判断

岸田総理大臣は新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけについて「5類への引き下げを含めた扱いの更なる見直しについては専門家の意見を聞きながら、最新のエビデンスに基づき議論を進めていきたい」と述べました。

また、位置づけの変更時期については「感染状況などをしっかりと確認したうえで専門家の意見も聞きながら判断していかなければいけない」と述べました。

子ども政策予算 来年の『骨太の方針』で当面の道筋示す

子ども政策に関する予算について「少子化対策、子ども予算は岸田政権の最重要課題の1つだ。こども家庭庁のもと、子どもの視点に立って必要な政策は何なのかをしっかり議論した上で、社会全体での費用負担のあり方の検討とあわせて、政策の充実に取り組む。来年の『骨太の方針』で、将来的な予算の倍増を目指し、当面の道筋を示していきたい」と述べました。

防衛費増額 国民に説明を尽くす

防衛費の増額をめぐり「先の参議院選挙の時点で、税負担の可能性を国民に問うべきではなかったか」と問われ「選挙の時期に合わせて公約などで訴えることは大事だと思うが、選挙の時期に関わらず、政治はずっと動いている」と述べました。

そのうえで「北朝鮮の挑発行動がますますエスカレートするなどわが国をめぐる安全保障環境がたいへん厳しい中、一刻も早く具体的な対応を考えなければならない。こうしたことについて国民に説明を尽くし、信頼を得ていくことは政治にとって大切な姿勢ではないか」と述べました。

防衛費増額 財源に国債ない

また、防衛費増額に向けた財源の不足分を追加の国債発行で賄う考えはないか問われ「安定した財源が不可欠だがこの点まで『国債で』というのは未来の世代に対する責任としてとり得ない」と述べました。

防衛費増額 安全保障政策や日本の財政政策で大きな転換

岸田総理大臣は防衛費の増額に関連して「政策内容の説明がないまま、財源論が先行しており拙速ではないか」と問われ「今回の取り組みは安全保障政策や日本の財政政策においても大きな転換だ。だからこそ、内容と予算と財源を一体として議論することが重要だと言ってきた。年末に向けて議論を取りまとめそれを示すことで国民の安心、安全につなげていきたい。拙速だという指摘もあったが、過程を積み上げてきたことも含め、国民に説明する努力を続けていきたい」と述べました。