相次ぐ不適切な保育 対策として「防犯カメラ」に注目集まる
静岡県裾野市の保育園で元保育士3人が園児に暴行したとして逮捕された事件を受け、不適切な保育の対策の一つとして注目されているのが保育園の室内に設置する「防犯カメラ」です。保育園の運用をサポートする会社には、今月に入ってカメラの設置に関する問い合わせが相次いでいます。
元園長の証言「私の保育園でも虐待が…」なぜ?
保育園での不適切保育 実態調査で345件確認
不適切な保育をめぐっては、静岡県裾野市の認可保育園「さくら保育園」の元保育士3人が園児に暴行した疑いで逮捕されたほか、富山県や宮城県でも同じような事案が明らかになっています。
保育所での不適切保育について厚生労働省は2019年度に初めて実態調査を行いました。

調査では不適切保育を「保育所での保育士などによる子どもの関わりについて人権や人格の観点に照らし改善を要すると判断される行為」と位置づけたうえで、都道府県や市区町村の合わせて1063の自治体から回答を得ました。
それによりますと、96の自治体で合わせて345件の不適切な保育があったと確認されたということです。具体的な内容では「罰を与える・乱暴な関わり」が最も多い60の自治体で確認され、次いで「人格を尊重しない関わり」が46の自治体、「物事を強要するような関わり・脅迫的なことばがけ」が45の自治体でした。
一方、不適切保育の未然防止や発生時の対応に備えたガイドラインを作成している自治体は全体の4.1%にとどまりました。
それによりますと、96の自治体で合わせて345件の不適切な保育があったと確認されたということです。具体的な内容では「罰を与える・乱暴な関わり」が最も多い60の自治体で確認され、次いで「人格を尊重しない関わり」が46の自治体、「物事を強要するような関わり・脅迫的なことばがけ」が45の自治体でした。
一方、不適切保育の未然防止や発生時の対応に備えたガイドラインを作成している自治体は全体の4.1%にとどまりました。
年々増加する保育施設 保育の質の維持が課題に

厚生労働省によりますと、認可保育所で働く保育士の配置基準は児童福祉法に基づく省令で、子どもの年齢ごとに定められています。
具体的には、保育士1人が受け持つ子どもの人数は
▽0歳児は3人
▽1~2歳児は6人
▽3歳児は20人
▽4歳児以上は30人となっています。
具体的には、保育士1人が受け持つ子どもの人数は
▽0歳児は3人
▽1~2歳児は6人
▽3歳児は20人
▽4歳児以上は30人となっています。

保育所などの保育施設の数は年々増加していて、ことし4月時点では全国で3万9000か所余りにのぼっています。

一方で、仕事を求める人1人に対して何人の求人があるかを示す有効求人倍率は、ことし4月時点で保育士は1.98倍と全職種の平均の1.23倍を上回っていて、施設が増加する中で保育の質をどう維持していくのかが課題とされています。
防犯カメラの設置 保育園からの問い合わせ相次ぐ

こうした中、さいたま市にある、保育園の運営をサポートし、カメラの販売も行う会社では、事件が明らかになって以降、ふだんはそれほど多くない防犯カメラの設置に関する問い合わせが相次ぐようになりました。
現在は東京都内や埼玉県内の4つの保育園が購入を検討していて、その動機について「保護者が心配している」とか「何かがあったときにカメラの映像で説明できるようにしたい」などと話しているということです。
この会社の製造するカメラは、園内に設置するとパソコンやスマートフォンで見ることができるほか、その様子を録画する機能もついています。
現在は東京都内や埼玉県内の4つの保育園が購入を検討していて、その動機について「保護者が心配している」とか「何かがあったときにカメラの映像で説明できるようにしたい」などと話しているということです。
この会社の製造するカメラは、園内に設置するとパソコンやスマートフォンで見ることができるほか、その様子を録画する機能もついています。

「ベースジャパン」の白川辰郎 社長は「今後、保育園に預けるのが心配だという親も出てくると思う。どこの保育士もそうだと思われることが一番かわいそうで、保育士を守るためにももっと防犯カメラを普及させたい」と話していました。
防犯カメラ設置の保育園「保育の課題を見える化」
すでにすべての保育室に防犯カメラを設置している認定子ども園もあります。
東京 新宿区にある「大久保わかくさ子ども園」では、7年前の開園当初から、園内のすべての保育室や園庭など22か所に防犯カメラを設置しています。映像は園内にあるモニターなどでリアルタイムで見ることができるほか、常時、録画をしています。
東京 新宿区にある「大久保わかくさ子ども園」では、7年前の開園当初から、園内のすべての保育室や園庭など22か所に防犯カメラを設置しています。映像は園内にあるモニターなどでリアルタイムで見ることができるほか、常時、録画をしています。

録画した映像は、子どもが園内でけがをした際などに保護者の要望に応じてけがの原因を説明するのに使用しているということです。
この園では、例えば3歳児から5歳児を担当するクラスは5人の保育士で61人の子どもを見ています。
保育士の配置基準より余裕はありますが、それでも仕事に追われる時間帯などがあるため、カメラで撮影された映像は保育士のサポートに役立っていると言います。
カメラの設置による子どものプライバシーへの懸念はこれまでに寄せられていないということですが、映像は2週間たつと自動的に削除される仕組みで、慎重に活用しています。
20代の保育士の男性は「子どもがけがをしたときなどに保護者に説明するとき、カメラがあると映像で確認して保護者に丁寧な説明ができるので役に立っています」と話していました。
0歳と5歳の子どもを預ける30代の母親は「以前に子どもがけがをして帰ってきたときに保育士が映像を確認して丁寧に状況を説明してくれた。安心して子どもを預けることができています」と話していました。
別の0歳と5歳の子どもを預ける40代の父親は「以前に子どもの服がなくなったとき、映像で確認してもらって見つかったことがある。カメラが設置されていると安心です」と話していました。
この園では、例えば3歳児から5歳児を担当するクラスは5人の保育士で61人の子どもを見ています。
保育士の配置基準より余裕はありますが、それでも仕事に追われる時間帯などがあるため、カメラで撮影された映像は保育士のサポートに役立っていると言います。
カメラの設置による子どものプライバシーへの懸念はこれまでに寄せられていないということですが、映像は2週間たつと自動的に削除される仕組みで、慎重に活用しています。
20代の保育士の男性は「子どもがけがをしたときなどに保護者に説明するとき、カメラがあると映像で確認して保護者に丁寧な説明ができるので役に立っています」と話していました。
0歳と5歳の子どもを預ける30代の母親は「以前に子どもがけがをして帰ってきたときに保育士が映像を確認して丁寧に状況を説明してくれた。安心して子どもを預けることができています」と話していました。
別の0歳と5歳の子どもを預ける40代の父親は「以前に子どもの服がなくなったとき、映像で確認してもらって見つかったことがある。カメラが設置されていると安心です」と話していました。

福島正晃 園長は「カメラで撮影することで保育の課題などを見える化し、それをみんなで共有していきながら保育を行っていきたい」と話していました。
厚労省 不適切保育の未然防止や対応について手引き作成
厚生労働省は去年、不適切保育の未然防止や発生時の対応についてまとめた手引きを作成しています。
この中では、不適切保育が生じる背景について、子どもへの適切な関わり方を理解していないといった「保育士の認識」や、職員体制が十分でないなど「職場環境」に問題があると考えられるとしています。
そのうえで、不適切保育を未然に防止するため、保育士には子どもの利益が尊重されているかを意識することや、日々の保育を振り返る機会を定期的に持つ必要があると指摘しています。
また、不適切保育が疑われる事案を把握した時点で保育所は速やかに自治体に情報提供をして対応を相談し、市区町村や都道府県は迅速に指導・監査を行うことが必要だとしています。
この中では、不適切保育が生じる背景について、子どもへの適切な関わり方を理解していないといった「保育士の認識」や、職員体制が十分でないなど「職場環境」に問題があると考えられるとしています。
そのうえで、不適切保育を未然に防止するため、保育士には子どもの利益が尊重されているかを意識することや、日々の保育を振り返る機会を定期的に持つ必要があると指摘しています。
また、不適切保育が疑われる事案を把握した時点で保育所は速やかに自治体に情報提供をして対応を相談し、市区町村や都道府県は迅速に指導・監査を行うことが必要だとしています。
専門家「保育士の配置基準の見直しなど 環境整備が必要」

保育現場の問題に詳しい保育研究所の村山祐一所長は、不適切な保育が相次ぐ背景について今後詳しく調査すべきだとしたうえで、保育士の業務負担が大きいことが関係している可能性もあると指摘します。
村山所長は「事件は許されないが、保育のニーズが高まる中、人員が限られているぎりぎりの保育現場ではゆとりのある体制が保証されておらず、保育士どうしで情報共有したり助け合ったりすることが難しくなっている。保育の現場のゆとりがなくなっていて、どの園で虐待が起きてもおかしくない危険性が内包されている」と述べました。
そして、保育士に求められる仕事が増えていく中、国の保育士の配置基準が長年ほとんど変わっていないとして「国は保育士の配置基準について見直しを図るなど、保育士が余裕をもって働ける環境を整備する必要がある」と話していました。
一方、保育現場への防犯カメラの設置については「不適切な保育を防ぐには人と人との関係が重要で、根本的な解決策ではないが、保育士の無自覚な行動を振り返るのに一定程度、意義はあると思う」と述べました。
村山所長は「事件は許されないが、保育のニーズが高まる中、人員が限られているぎりぎりの保育現場ではゆとりのある体制が保証されておらず、保育士どうしで情報共有したり助け合ったりすることが難しくなっている。保育の現場のゆとりがなくなっていて、どの園で虐待が起きてもおかしくない危険性が内包されている」と述べました。
そして、保育士に求められる仕事が増えていく中、国の保育士の配置基準が長年ほとんど変わっていないとして「国は保育士の配置基準について見直しを図るなど、保育士が余裕をもって働ける環境を整備する必要がある」と話していました。
一方、保育現場への防犯カメラの設置については「不適切な保育を防ぐには人と人との関係が重要で、根本的な解決策ではないが、保育士の無自覚な行動を振り返るのに一定程度、意義はあると思う」と述べました。