【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(9日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる9日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

モスクワ郊外 大型ショッピングセンターで大規模火災

ロシアのモスクワ郊外にある大型のショッピングセンターで9日、大規模な火災があり、爆発を伴って激しく炎上しました。

この火災で男性1人が死亡し、当局は建物内の溶接作業が原因ではないかとみて調べています。

モスクワ郊外にある大型のショッピングセンターで9日早朝、火災が起き、燃え広がりました。

現場で撮影された映像からは、大きな爆発音とともに建物全体から炎が激しくあがっている様子や建物が崩れ、がれきが散乱している様子が分かります。

ロシアの非常事態省によりますとこの火災で、男性1人が死亡したということです。

火災の範囲は7000平方メートルに及んだということで、当局は、建物内で行われていた溶接作業で安全規則の違反があったことが火災の原因ではないかとみて、詳しい調べを進めています。

ロシアでは
▽ことし9月、中部ウファのショッピングセンターの火災で5400平方メートルが焼けたほか、
▽11月20日、モスクワ中心部の倉庫で起きた火災で7人が死亡するなど大規模な火災が相次いでいます。

ロシア国防省 ベラルーシで軍事演習と発表

ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアの国防省は、隣国のベラルーシで軍の部隊が演習を行っていると発表しました。プーチン政権が同盟関係にあるベラルーシを参戦させようと圧力をかけているという見方も出ていて、ウクライナ側は警戒を強めているものとみられます。

ウクライナ各地では発電所などエネルギー関連施設に対するロシア軍のミサイル攻撃が繰り返されていて、市民は断続的に停電が発生する中で厳しい生活を余儀なくされています。ウクライナ軍の参謀本部は9日、「全土のエネルギー関連施設や重要インフラに対するミサイル攻撃の脅威は依然として残っている」とSNSに投稿しました。

一連の攻撃についてロシアのプーチン大統領は8日「たしかにわれわれはやっている」と述べ、エネルギー関連施設を標的に、攻撃を行っていると明言しました。

一方、ロシア国防省は8日、同盟関係にある隣国のベラルーシで軍事演習を行っていると発表し、映像を公開しました。演習場所は明らかにしていませんが、ロシア国防省は「われわれはひとつだ」とした上で、日中と夜間の戦闘を想定した演習を実施しているとしています。

ロシアのショイグ国防相は12月3日、軍の部隊を伴ってベラルーシを訪問し、ルカシェンコ大統領と面会していて、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」はプーチン政権の動きについて「ウクライナの戦争に参加させようとベラルーシに圧力をかけているとみられる」と分析しています。

ロシアとベラルーシは、ことし10月、国境地帯の情勢悪化に対応するためとして合同部隊を編成していて、ベラルーシ南部と国境を接するウクライナ側は、両国の動きに警戒を強めているものとみられます。

米軍統合参謀本部議長「ウクライナに必要な限りの支援をする」

ワシントンではウクライナ大使館が軍の創設記念日にあわせて主催した式典が8日、開かれ、アメリカ軍の幹部や国防総省の高官のほか、日本の防衛駐在官やヨーロッパなど40か国以上の駐在武官が招待されました。

この中で、アメリカ軍のミリー統合参謀本部議長が演説し「ウクライナ軍は多大な犠牲を払いながらも、ロシア軍を撃退し、ロシア軍の戦略計画を打ち負かした」と述べました。

その上で「しかし、戦争は終わっていない。バイデン大統領が述べたようにアメリカは、ウクライナに必要な限りの支援をする」と述べ、同盟国や友好国と連携し、軍事支援を継続する考えを強調しました。

アメリカは、ことし2月にロシアによる軍事侵攻が始まって以降、総額で190億ドル余り、日本円にしておよそ2兆5600億円の軍事支援を行っています。
ウクライナ大使館の駐在武官クレメネツキー氏は、「ロシアの侵略者たちに対し強力なメッセージとなったと思う。われわれは、あきらめることなく、戦い、そして勝利する」と話していました。

ザポリージャ原発 “ロシア軍が再び兵器持ち込む”

ロシア軍が撤退する兆候があると伝えられていたウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所。ウクライナの原発公社は、ロシア軍が再び兵器を持ち込んだとSNSに投稿し、戦況が激しくなることへの懸念が高まっています。

ロシア軍が占拠を続けるウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所を巡っては、先月ウクライナの原子力発電公社「エネルゴアトム」の総裁が「ロシア軍が撤退する準備を進めている兆候がある」と指摘していました。

しかし「エネルゴアトム」は8日、ロシア軍が複数の多連装ロケット砲を原発の使用済み核燃料の貯蔵施設の隣に持ち込んだとSNSに投稿しました。

そのうえで「この事態をIAEA=国際原子力機関に報告し、発電所の非武装化とロシア軍の占拠解除に向けて、発電所内部とその周辺に安全地帯を設けるようもう一度要求する」としています。

ロシアで拘束の女子バスケ選手 身柄交換で釈放と発表 米大統領

アメリカのバイデン大統領は、ロシアで違法にあたる薬物を所持していたとして禁錮9年の判決を受けたアメリカの女子プロバスケットボール選手が身柄の交換で釈放されたと発表しました。

バイデン大統領は8日、ホワイトハウスで行った演説で釈放されたブリトニー・グライナー選手と電話で話したとした上で「彼女は安全だ。帰国するための飛行機に乗っている」と述べ、選手がアメリカに向かっていることを明らかにしました。
一方、ロシア外務省は声明を発表し、身柄の交換によって、紛争地で大量の武器を売りさばき、「死の商人」と呼ばれアメリカで服役していた人物が釈放されたことを明らかにしました。

その上で「長期間にわたり交渉していた。アメリカは断固として拒否していたが、同胞を救うため働きかけを続けた」としています。

グライナー選手をめぐってはことし2月に拘束されて以降、バイデン政権がロシア側に働きかけを続け、ウクライナ情勢をめぐって悪化する両国の対立がさらに深まる一因となっていました。

元海兵隊員のポール・ウィラン氏は解放されず

アメリカはこれまでロシアに対し、今回、釈放された女子プロバスケットボールのグライナー選手のほかに、2018年にスパイ活動をしていたとして拘束された元海兵隊員のポール・ウィラン氏の解放も求めてきましたが、今回、ウィラン氏は解放されませんでした。

これについてブリンケン国務長官は8日の記者会見で「ロシア側はウィラン氏について、スパイという虚偽の罪をかぶせたままで、グライナー選手とは異なる扱いをしている」と述べました。

その上で、ブリンケン長官は「われわれは、ロシア側に働きかけを続け、彼を帰国させるためにできるすべての手段を検討していく」と述べ、引き続き、ロシア側に解放を求めていく考えを強調しました。

東部ドネツク州で砲撃続く

ウクライナでは8日もロシア軍による砲撃が行われ、東部ドネツク州のキリレンコ知事は、前の日に州内で少なくとも9人が死亡したほか、8日にはウクライナ側の拠点のひとつバフムトの周辺で砲撃があり、2人が死亡したとSNSに書き込みました。

一方、ロシア大統領府のペスコフ報道官は8日、「ロシアの新しい地域では解放されるべき領土がまだ残っている」と述べ、プーチン政権が併合したと一方的に主張するウクライナ東部と南部の4州の掌握を目指し侵攻を続けていく考えを改めて示しました。

紛争や災害で国内避難した人数が過去最多で支援呼びかけ 国連

UNHCR=国連難民高等弁務官事務所などの推計によりますと、世界各地の紛争や災害によって住まいを追われ国内で避難した人の数は、去年末の時点で5900万人と過去最多となり、さらにことしに入りロシアによるウクライナ侵攻で600万人以上増えたと見られています。

こうした状況について、UNDP=国連開発計画の岡井朝子危機対応局長がNHKのインタビューに応じ、「国内避難民の状況は輪をかけて悪くなっており、避難の長期化も進んでいて、短期的な想定での人道支援では追いつかなくなっている」と述べ、強い危機感を示しました。

そのうえで各国に対して、避難先にいる人々に就職や教育の機会を提供し、政治への参加を保障するなど、社会に受け入れる中長期的な施策が必要だと、呼びかけました。

また岡井局長は、「日本は困った人の目線に立った継ぎ目のない支援を得意とし、東日本大震災などを通じて国内で避難する苦労を理解している国だ」と述べ、国連を通じてこうした国々への支援に協力するよう、期待を示しました。

キーウで大規模な停電への備えが進む

ウクライナの首都キーウではロシアの新たなミサイル攻撃による大規模な停電の発生への懸念が強まっていて、キーウのクリチコ市長は今月2日、SNSで対応策を発表しました。

それによりますと電力供給が失われた場合、市内の45の地下鉄の駅を避難場所として利用できるとしています。

また、クリチコ市長は停電時も営業を続けるスーパーや小売店のリストも公開しました。

プーチン大統領 ウクライナでのエネルギー施設攻撃は“報復”

ロシアのプーチン大統領は8日、首都モスクワで、軍の兵士たちを前に「隣国のエネルギー関連施設への攻撃がいま騒がれている。そのとおり、われわれはやっている」と述べ、発電所などを狙い攻撃を行っていると認めました。

その上で「誰が始めたのか。クリミアに続く橋を損傷させ、ロシア国内の発電所を爆破したのは誰か」などと述べ、みずから始めた軍事侵攻には触れず、一連の攻撃はロシア側の施設が破壊されたことへの報復だと主張しました。

ベトナムで兵器の国際展示会 ロシア以外に調達先多様化なるか?

首都ハノイの軍用飛行場で8日に開幕した国際展示会は、ベトナム国防省が初めて開いたもので、歴史的な関係が深いロシア以外に、アメリカや日本などおよそ30か国から170以上の企業や団体が参加し、兵器や装備品を展示しました。

初日の式典でファム・ミン・チン首相は「海外からの友人を歓迎する。双方にとって関係を強化するよい機会だ」と述べました。
社会主義国のベトナムは、冷戦時代、旧ソビエトとの結びつきが強く、ソビエト崩壊後も主にロシアから兵器を調達してきました。

スウェーデンのストックホルム国際平和研究所の報告書によりますと、2016年から2020年にかけてベトナムが輸入した兵器のうちおよそ66%はロシアが供給したということです。

しかしことし2月、ロシアがウクライナに軍事侵攻したことで、ベトナムでは、ロシア製の兵器の安定供給に懸念の声もあがり、今回の展示会をきっかけに調達先の多様化にかじを切るかどうかに注目が集まっています。

専門家「ベトナムの試みの現れ」

シンガポールのシンクタンク「ISEASユソフ・イシャク研究所」の上級研究員で、ベトナムの外交政策などに詳しいレ・ホン・ヒエップ氏はNHKの取材に対し「今回の展示会は、ロシアの兵器から脱却しようとする、ベトナムの試みの現れだ。兵器の調達先を多様化し、ひとつの国に供給を依存するリスクを減らそうとしている」と述べました。
その背景について、アメリカなどの制裁によってロシアは、兵器の製造に不可欠な部品を輸入できなくなり、ベトナムの兵器の調達計画に影響が及ぶ可能性があると説明しています。

また「ロシアから兵器を輸入し続けると、欧米諸国との関係が悪化するリスクもある。ベトナムは多様化に向けた努力を加速させるしかない」と述べました。

そして、東南アジアにはベトナム以外にもロシアから兵器を購入している国々があるとしたうえで「現在のロシアの状況や、ロシアの軍需産業が直面している制約を考えると、これらの国々もロシアにかわる調達先を探すことに関心を持つだろう」と指摘しました。

そのうえで「もし日本やほかの国々がよい取引を提供できれば、兵器や装備品の主要な供給国として、ロシアにとってかわることができるだろう」と述べ、ロシア離れの動きが東南アジア諸国の間で広がる可能性があるという見方を示しました。