旧統一教会の被害者救済法案が衆院可決 賛成多数で

旧統一教会の被害者救済に向けて悪質な寄付を規制する新たな法案は、衆議院本会議で、自民・公明両党や立憲民主党などの賛成多数で可決されました。
法案は参議院に送られ、会期末の12月10日、成立する見通しです。

旧統一教会の被害者救済を図る法案は、法人などが霊感などの知見を使って不安をあおり、寄付が必要不可欠だと告げるなど、個人を困惑させる不当な勧誘行為を禁止しています。

また、野党側がマインドコントロールによる寄付の禁止を求めていたことを踏まえ、法人などに対し、個人の自由な意思を抑圧し、適切な判断が困難な状況に陥ることがないようにするなどの配慮義務を課すとしています。

さらに罰則も設けられ、禁止行為に違反し、行政の勧告や命令にも従わなかった場合には、1年以下の懲役か100万円以下の罰金の刑事罰が科されます。

法案は、事前の協議により野党側の主張も反映させる異例の形でまとめられ、8日の衆議院の特別委員会で、配慮義務の規定の「配慮」という文言を「十分に配慮」にするとともに、配慮義務を怠った場合に法人名を公表するなどの修正が加えられました。

そして衆議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党と、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決され、参議院に送られました。

一方、共産党は、いわゆるマインドコントロールに適切に対処できないなど、被害者救済や被害防止には不十分だとして反対したほか、れいわ新選組も反対しました。

法案は参議院に送られ、直ちに本会議で審議入りする予定です。そして会期末の今月10日に成立する見通しです。

法案の概要

旧統一教会の被害者救済を図るための新たな法案は、政府が事前に野党側の意見も聞き、主張を反映させるという異例の形でまとめられました。

法案では、現在の法律では十分に対応できない悪質な寄付を規制しています。

具体的には、
▽法人などが霊感などの知見を使って不安をあおり、寄付が必要不可欠だと告げるなど、個人を困惑させる不当な寄付の勧誘行為を禁止しています。

また、
▽個人に借金させたり、自宅などを売らせたりしてまで資金を調達するよう要求することも禁じています。

そのうえで、
▽罰則も設けられ、禁止行為に違反し、行政の勧告や命令にも従わなかった場合には、1年以下の懲役か100万円以下の罰金の刑事罰が科されます。

さらに、
▽野党側が、マインドコントロールによる寄付の禁止を求めてきたことを踏まえ、法人などに、
・個人の自由な意思を抑圧し、適切な判断が困難な状況に陥らせることや
・個人や家族の生活の維持を困難にすることがないようにするなど、十分に配慮する義務を課すとしています。

・義務を怠った場合は、勧告や法人名の公表を行うとしています。

このほか、
▽被害者救済に向けて、
・不当な勧誘行為に基づく寄付に「取消権」を認めるほか、
・寄付した本人が取り消しを求めない場合でも、扶養されている子どもなどに一定の範囲内で「取消権」を認め、本来受け取れるはずだった養育費などを取り戻せるとしています。

また、
▽法案では、施行の2年後に見直しを行う規定も設けられています。

岸田総理大臣は、法案をめぐり「マインドコントロールによる寄付については、多くの場合、不安を抱いていることに乗じて勧誘されたものと言え『取消権』の対象となる。配慮義務は、禁止行為とする場合よりも、より幅広く行為を捉えることができ、民法上の損害賠償請求を容易にする効果が高い」と述べています。

一方、政府は、法案の規制対象について、
▽法人格のない団体も含めると説明しているほか、
▽集められた寄付金の帰属先を、組織の幹部などの個人に変えて規制対象から逃れる行為が起きないよう、対応を検討していくと説明しています。

配慮義務の規定 修正内容

法案は、自民党や立憲民主党などで調整の結果、寄付の勧誘を行う法人などに課す配慮義務の規定について、衆議院の特別委員会で修正が行われました。

具体的には、配慮義務を怠ったことが確認された場合、行政が勧告を行い、勧告に従わなかった場合は、法人名を公表するなどの措置をとることが新たに盛り込まれました。

また、条文の「配慮」という文言を「十分に配慮」とする修正も行われました。

与野党は、これらの修正によって、配慮義務規定の実効性が高まったとしています。

配慮義務規定をめぐっては、野党側が、いわゆるマインドコントロールによる悪質な寄付を明確に禁止すべきだとして、「禁止規定」に変更したうえで、罰則を適用するとともに、「取消権」の対象とすることを求めていましたが、与党側は、信教の自由や財産権など、憲法で保障されている権利に反するおそれがあるとして、折り合いませんでした。

このほか、修正では法律を見直す規定について、施行後3年から2年に短縮されました。

本会議を傍聴した「宗教2世」など被害を訴える人たちは

家族が多額の献金をしたなどと被害を訴えている人たちは、衆議院本会議を傍聴したあと、記者会見を行いました。

「小川さゆり」の名前で被害を訴えている、いわゆる宗教2世の女性は「与野党が新法をつくることは奇跡に近く、ことし8月に初めて野党のヒアリングに参加したときは想像できなかった。旧統一教会や親を恨み、全部忘れようと思っていたが、自分の子どもに同じ思いをさせたくないという思いできょうまできた」と振り返りました。そのうえで「今後も被害者のことを忘れないでほしい。課題が残っている部分も忘れずに、これからも議論を続けてもらいたい」と述べました。

また、元妻が旧統一教会の信者で、多額の献金で家庭が崩壊したと訴えている橋田達夫さんは「第1章のページが開いた。感無量だ」と述べました。

自民 茂木幹事長「国会をいい形で閉じることができる」

自民党の茂木幹事長は、派閥の会合で「現行法制上、最大限の対策を盛り込み、野党の提案も可能なものは反映した法案に仕上げることができた。いちにちも早い被害の救済と再発防止を図っていきたい」と述べました。

そのうえで「国会は、サッカーの日本戦でいうと、前半は相当厳しい戦いだったが、後半にきて補正予算と救済法案を成立させることで2ポイントをとり、逆転とまでは言えないかもしれないが、いい形で閉じることができる」と述べました。

立民 泉代表「まずは法案の前進を勝ち取った」

立憲民主党の泉代表は、党の代議士会で「被害者や弁護団と協力しながら生々しい被害の実態を明らかにしてきたことが法案につながった。政府は当初、大変後ろ向きだったが、われわれが先につくって国会に提出した法案が政府の考え方の原案になった。まずは法案の前進を勝ち取ったことを多として、さらに前に進んでいきたい」と述べました。

維新 藤田幹事長「これで終わりではない」

日本維新の会の藤田幹事長は、党の代議士会で「われわれも、最後まで詰めると言ってやってきた。新法なので、このあとの影響を注視していく。これで終わりではないという気持ちを持っての法案への賛成だ」と述べました。

共産 小池書記局長 国会の会期延長申し入れ

共産党の小池書記局長は、旧統一教会の被害者救済を図る法案について十分な審議時間を確保する必要があるとして、尾辻参議院議長に対し10日までの国会の会期を今月16日までの6日間延長するよう申し入れました。

このあと、小池氏は記者団に対し「配慮義務を禁止規定にしておらず、根本的な問題が解決されていない。各党・各会派が知恵を出し合って、より実効性のある法案にしていくことが国会としての責務だ」と述べました。

国民 玉木代表“われわれが求めてきた救済の骨格すべて反映”

国民民主党の玉木代表は、記者団に対し「われわれが求めてきた被害救済の骨格がすべて反映されているので賛成した。ただ、絶えざる見直しは必要で、今回の法案で対象になっていない霊感商法などへの包括的な罰則や禁止規定を盛り込んだ法案を提出し、さらなるブラッシュアップを図っていきたい」と述べました。

れいわ 山本代表「国が被害者に賠償を」

れいわ新選組の山本代表は、記者会見で「ある意味で、公害や薬害と同じようなものであり、こまごました法律の改正などを積み重ねても、根本的に解決しようとしている部分は違うので、国がしっかりと被害者に対して賠償していくべきだ。国の不作為によって拡大した被害は、国によって救済されるしかない」と述べました。