性同一性障害特例法では、戸籍の性別変更を認める要件として
▽18歳以上であること、
▽現在、結婚していないこと、
▽未成年の子どもがいないこと、
▽生殖腺や生殖機能がないことなどを定めていて、すべてを満たしている必要があります。
これらの要件が妥当かどうか争われたケースで、最高裁判所はこれまで「憲法には違反しない」とする判断を示していました。
“性別変更に手術必要” 大法廷で審理へ 新たな判断の可能性も
戸籍の性別を変更するには、生殖能力をなくす手術を受ける必要があるとする法律の規定が、憲法に違反するかどうかが争われた申し立てについて、最高裁判所は15人の裁判官全員による大法廷で審理することを決めました。この規定について最高裁は3年前、「憲法に違反しない」と判断していますが、新たな憲法判断が示される可能性が出てきました。
最高裁判所大法廷で審理されることになったのは、男性として生まれ、女性として社会生活を送る人が、戸籍の性別変更を求めた申し立てです。
戸籍の性別を変更するには、生殖腺を取り除く必要があるとする性同一性障害特例法の規定について「手術を強制するもので、重大な人権侵害で、憲法に違反する」と主張して、手術を受けていなくても性別変更を認めるよう求めています。
この規定について最高裁は3年前に「変更前の性別の生殖機能によって子どもが生まれると、社会に混乱が生じかねないことなどへの配慮に基づくもので、規定の目的などを総合的に検討すると憲法に違反しない」とする判断を示しています。
しかし今回の申し立てについて、15人の裁判官全員による大法廷での審理が決まったことで、判例の見直しや、新たな憲法判断が示される可能性が出てきました。
代理人の南和行弁護士は「最高裁に特別抗告をしてから、2年がたったのちに大法廷に回付され驚いています。丁寧な判断を期待します」と話しています。
戸籍の性別変更認める要件と過去の判断は
【生殖機能がないこと】
7日、大法廷での審理が決まった生殖機能をなくす手術を受ける必要があるとする規定については、3年前の1月に初めて判断を示しました。
「変更前の性別の生殖機能によって子どもが生まれると、社会に混乱が生じかねないことなどへの配慮に基づくものだ」として憲法に違反しないと判断。性別変更を求める申し立てを退けました。
結論としては4人の裁判官全員一致でしたが、このうち2人が規定について「手術は憲法で保障された身体を傷つけられない自由を制約する面があり、現時点では憲法に違反しないが、その疑いがあることは否定できない」という補足意見を述べました。
「変更前の性別の生殖機能によって子どもが生まれると、社会に混乱が生じかねないことなどへの配慮に基づくものだ」として憲法に違反しないと判断。性別変更を求める申し立てを退けました。
結論としては4人の裁判官全員一致でしたが、このうち2人が規定について「手術は憲法で保障された身体を傷つけられない自由を制約する面があり、現時点では憲法に違反しないが、その疑いがあることは否定できない」という補足意見を述べました。
【現在、結婚していないこと】
結婚に関する規定については、おととし3月に「異性の間だけで結婚が認められている現在の婚姻秩序を混乱させないように配慮したもので、合理性に欠くとはいえない」として、憲法に違反しないと判断しています。
4人の裁判官全員一致の結論でした。
4人の裁判官全員一致の結論でした。
【現在、未成年の子どもがいないこと】
この規定は、2004年に特例法が施行された時には「子どもがいないこと」とされていましたが、子どもが成人した場合には性別を変更できるよう、2008年の法改正で緩和されました。
改正前の規定について最高裁は2007年、「子どもがいる人の性別変更を認めると家族の秩序を混乱させ、子どもの福祉の観点からも問題が生じかねないという配慮に基づくもので、合理性を欠くとはいえない」として、憲法違反ではないとする判断を示しました。
そして、改正後の規定についてもこの考え方を踏襲し、去年11月の決定で「憲法に違反しないことは明らかだ」としています。
ただ、5人の裁判官のうち1人は「規定は合理性を欠き、個人の権利を侵害していて憲法違反だ」とする反対意見を述べました。
改正前の規定について最高裁は2007年、「子どもがいる人の性別変更を認めると家族の秩序を混乱させ、子どもの福祉の観点からも問題が生じかねないという配慮に基づくもので、合理性を欠くとはいえない」として、憲法違反ではないとする判断を示しました。
そして、改正後の規定についてもこの考え方を踏襲し、去年11月の決定で「憲法に違反しないことは明らかだ」としています。
ただ、5人の裁判官のうち1人は「規定は合理性を欠き、個人の権利を侵害していて憲法違反だ」とする反対意見を述べました。
性別変更は1万人以上に
司法統計によりますと、特例法が施行されてから去年までに全国の家庭裁判所で性別変更が認められたのは、1万1030人にのぼっています。
当事者や支援者で作る団体などは、規定の撤廃など法律の抜本的な見直しを早期に行うよう求めています。
当事者や支援者で作る団体などは、規定の撤廃など法律の抜本的な見直しを早期に行うよう求めています。