制服購入必要なし?広がるサブスク

制服購入必要なし?広がるサブスク
入園や入学時に購入が必要な制服。「費用が高い」「成長が早いので、買い替えが必要になるかも」。そう思ったことがある方、少なくないのではないでしょうか。そんな悩みを、定額の料金を支払って商品やサービスを利用する「サブスク」(=サブスクリプション)で解決しようという動きが出ています。いまや「移住の支援」にまで及んでいるというサブスクの最新動向を取材しました。(大分放送局記者 山之内豊/北九州放送局記者 永延良太)

園児の制服を毎月500円で

こういうのがほしかったーー

思わずそう言いたくなるサブスクが、来年度大分県日田市の認定こども園で始まります。

それが“制服”のサブスクです。
この園では、登園時は制服を着用し、園内では体操服を着て過ごします。

新品の価格は制服(ブレザー上下)が2万4000円、体操服(ジャージ上下)が6400円の合計3万400円。

園は、この負担を軽くするために、来年度から毎月500円で制服と体操服を“貸し出す”サブスクの導入を決めました。

このサービスを使えば、3年間毎月支払った場合でも、かかる費用は1万8000円と、新品を購入するより安く済みます。

園から貸し出される制服・体操服は、ほとんどが卒園した園児たちのお下がり。

これまでバザーで販売されていたものを活用し、数が足りなければ園が新品を調達します。

最大の“お得感”は、なんと言っても、サイズを何度でも変更できる点です。

子どもの成長に対応

「突然体が大きくなってきたので買い換えたのですが、さらに大きくなってしまって、制服がパツパツの状態でずっと登園させていました」

こう話したのは、園の卒業生の吉村灯真くんの母親です。

入園当時の灯真くんは目立って大きな体格ではありませんでしたが、その後ぐんぐん成長。
年中の時に最も大きなサイズの制服に買い換えたものの、それでも成長に追いつかなかったと言います。

灯真くん自身も「きつかった。おなか引っ込めて着ていた」と、当時の状況を振り返りました。

園は、こうした悩みを持つ家庭の声をキャッチして、何度でもサイズ変更ができるようにしたというわけです。

保護者に大好評

11月に行われた来年度の入園者向けの説明会では、このサブスクに入園予定の保護者たちの関心が集まりました。
「月額500円という安さに魅力を感じました。園にいる期間を通して体に合ったサイズを着られるのもすごく魅力的です」「使わなくなった制服を無駄にすることなく活用できる」といった声が聞かれました。

私自身(山之内)転勤族だったため、子どもの転園や転校を何度も経験しました。

新品を揃え直した経験があるだけに、今回の取材を通じて、「自分の時代にもこんなサービスがあったらよかったのに」と、心からうらやましく感じました。

一方、園側が驚いたのが、保護者たちからのある要望でした。

ジャージだけでなく、半袖の体操服も対象にしてほしいというのです。

実は園は、肌に触れる半袖のお下がりの貸し出しは、保護者には抵抗感があると思い、対象から外していました。

しかし意外にも、抵抗感は少ないことが判明。

このため園では、半袖の体操服もサブスクの対象にする方向で検討を始めています。
渕健一 園長
「保護者の負担軽減に加えて、モノを捨てずに大切に使うことにもなり環境に優しい。サブスクを通じて少子高齢化の中で選ばれる幼稚園になることを期待している」

カギは“移住”

続いては、北九州から。

ここでは、“斬新”という言葉がふさわしいサブスクの構想が計画中です。

それが「飛行機乗り放題」と「賃貸住宅」をセットにした定額サービス。

計画を練っているのは、北九州市に本社を置く「スターフライヤー」。

福岡県内と東京を結ぶ便を中心に路線展開をする航空会社です。
対象となる路線は羽田ー北九州間。

サービスの利用者は、福岡県内の賃貸住宅に入居することができます。

いったい、どんな人をターゲットにしたサービスなのか。

会社が掲げる利用者のイメージの1つは、「東京の賃貸マンションに家族で住んでいる会社員」。
キーワードは「リモートワーク」と「移住」です。

考えられるケースは、こんなイメージです。

都内のIT企業で働くAさん。

仕事にやりがいを持っているものの、家族と一緒にもう少しのんびりした地方都市に住んでみたいという理想をもっています。

そんな矢先、コロナ禍でリモートワークが中心となり、東京の会社に所属しながら福岡県への移住を決断。

今回のサブスクを利用して、休日と平日の5日間は福岡の賃貸住宅で、残りの2日間は東京で過ごすことに…。

気になる料金設定は、東京都心部の家族向けマンションの家賃と同程度の20万円から40万円とお高めですが、料金設定を含め、詳細は調整が続いています。

会社によると、羽田ー福岡間への路線拡大も検討しているということで、リモートワークを導入する企業などとの法人契約も視野に入れているということです。

ライフスタイルをくみとる

スターフライヤーの社内で、この斬新なサブスクのアイデアが持ち上がったのは、感染状況が落ち着き、会社の経営も改善に向かってきたことし春のこと。

コロナと共生しようという“ウィズコロナ”の流れも浸透しつつあったことから、その新しい働き方・暮らし方の象徴である「リモートワーク」と「移住」に着目した形となりました。
町田修 社長
「リモートワークなどの利用が広がる中で、地方に住みたいという人たちの気持ちを後押ししながら会社としての収益につなげていく」
私(永延)は学生時代を東京で過ごしましたが、首都圏で就職した友人には、コロナ禍でリモートワークの機会が増え、「オフィスにほとんど行っていない」という人もいます。

「福岡県内に住みたい」と思ってくれる人が増えれば、航空会社だけでなく地域全体が活性化する可能性もあると感じました。

「サブスク」のサービスはいま、飲食や衣類、鉄道などあらゆる分野に広がり続けています。

実はこんなものがほしかったというニーズや、ライフスタイルの変化までくみとる新しいサービスが、今後も登場しそうです。
大分放送局日田支局記者
山之内豊
1990年入局
去年11月から日田支局
作者が日田市出身の人気漫画「進撃の巨人」のファン
北九州放送局記者
永延良太
2017年入局
初任地は高松放送局
身長188センチ
台湾留学経験も