【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(4日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる4日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ウクライナ情勢“冬場で戦闘の進展遅くなる”米情報機関トップ

アメリカの情報機関を統括するヘインズ国家情報長官は3日、戦闘がバフムト周辺などドネツク州に集中していることや、ロシア軍が先月南部ヘルソン州のドニプロ川の東岸地域に撤退したことを踏まえ「戦闘が進展する速さはすでに遅くなっている。今後数か月はこうした状況が続くと思われる」と述べました。

そのうえで「冬が終わり春を迎える3月に、この地域でどのような攻勢が行われるかが焦点だ。両軍とも反撃を準備するため、補給線を整え部隊を再編成するだろう」と指摘し、春に向けて双方が戦闘の態勢を整えるという見通しを示しました。

また、ロシア軍の兵器不足が深刻化しているという分析について「ロシアは現段階で使っている兵器を補うだけの生産能力がない。とりわけ精密兵器は枯渇しつつある」と述べ、ロシア軍の兵器の備蓄がどのくらいあるかが今後の焦点となる、という見方を示しました。

G7と豪 ロシア産原油の取り引き価格に上限で合意

アメリカ政府の発表によりますと、G7とオーストラリアはロシアから海上輸送される原油について今月5日から国際的な取り引きの上限価格を1バレル60ドルに設定する新たな制裁措置について合意しました。

また、60ドルを超える取り引きにはG7に拠点を置く金融機関による海上保険や金融サービスを禁止するとしています。

G7に拠点を置く金融機関は世界の海上保険などのおよそ9割を占めることから、制裁に参加しない国にも効果が及ぶとしています。

これに先立ってEUの加盟国も2日、同じ上限価格で合意していて足並みをそろえた制裁措置でウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアの資金源を抑えこむねらいです。

米イエレン財務長官「最も重要な収入源に切り込む」

交渉を主導してきたアメリカのイエレン財務長官は「ロシア経済は縮小し財政も厳しさを増しているため最も重要な収入源に直ちに切り込むことができる」とのコメントを出しました。

アメリカ政府は、この制裁措置によりロシア産原油の輸入を続ける新興国などが価格低下の恩恵を受けるとしています。

ただ、G7などこの枠組みに参加する国々はロシア産の原油の輸入を段階的に禁止することをすでに決めています。

こうした中、中国やインドなどがどのように対応しロシアに対する制裁が実効性を持つのか今後の焦点になります。

一方、日本企業が参画するロシア極東の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」については来年9月末まで新たな制裁措置の対象外となっています。

ロシア ペスコフ報道官「容認しない」

ロシア大統領府のペスコフ報道官は3日、ロシアの国営通信社に対して「われわれは上限設定を容認しない」と述べ、受け入れられないという考えを示し、速やかに分析を進めた上で今後の対応を決めると明らかにしました。

ゼレンスキー大統領 “制裁の効果が不十分”

G7=主要7か国とオーストラリアがロシア産原油の取り引きに1バレル60ドルの上限価格を設けるなどとした新たな制裁措置で合意したことについて、ウクライナのゼレンスキー大統領は、3日に公開した動画で「テロ国家の予算としては申し分のない価格で、重大な決定とは言えない」と述べ、制裁の効果が不十分だと主張しました。

そして、ポーランドなど一部の国が主張した、1バレル30ドル程度を上限価格とする場合に比べて「ロシアの年間予算がおよそ1000億ドル増えることになる」と強調しました。

ロシア国防相がベラルーシを訪問

ウクライナ侵攻を続けるロシアのショイグ国防相は3日、隣国のベラルーシを訪問し、ルカシェンコ大統領と面会しました。ベラルーシ大統領府によりますと、この中でショイグ国防相は「プーチン大統領の強い希望でここに来た」と述べたということです。

一方、ルカシェンコ大統領は、ウクライナ情勢について、欧米を念頭に「彼らは戦争をいかに継続させるかを考えている。その場合、特別軍事作戦は終わらない」と述べたとしていて、ロシアによる軍事侵攻を支持する姿勢を改めて示したものとみられます。

ロシアとベラルーシはことし10月、国境地帯の情勢悪化に対応するためとして合同部隊を編成していて、プーチン政権としては、ベラルーシとの軍事的な連携強化を進め、欧米をけん制するねらいがあるとみられます。

ウクライナ東部攻防 ロシア軍が前進か

ウクライナ東部ドネツク州のウクライナ側の拠点の1つ、バフムトについて、キリレンコ知事は3日、近郊で断続的な砲撃があり、行政庁舎などが被害を受けてけが人が出たと、SNSに投稿しました。

イギリス国防省は3日「ロシア軍は、バフムトの周囲およそ15キロに及ぶ前線にかなりの兵力や火力を投入し、ここ数日の間に町の南側でやや前進した可能性が高い」とする分析を明らかにしました。

その一方で「ロシアが得る利益に見合わないほどのコストがかかっている。バフムトの占領は、ロシアにとって象徴的かつ政治的な目的になっていると見るのが現実的だ」としています。
ゼレンスキー大統領はウクライナ東部ドネツク州のバフムトの戦況について、3日に公開した動画で「最も激しく、苦しい状況だ。防衛を維持しているわれわれの英雄に深い感謝をささげる」と述べたほか、同じ東部のルハンシク州やハルキウ州で戦力を強化していることを明らかにしました。

ウクライナ 軍事侵攻以降1500万人超が国境を越え移動

UNHCR=国連難民高等弁務官事務所は、ことし2月にロシア軍が侵攻を開始して以降、ウクライナから国境を越えて周辺の国々に移動した人の数が11月29日の時点で延べ1500万人を超えたと発表しました。この多くが軍事侵攻を受けた避難民だとみられています。

国境を越えた人が向かった主な国は、
▽ポーランドがおよそ788万人
▽ハンガリーがおよそ181万人
▽ルーマニアがおよそ158万人
▽スロバキアがおよそ97万人
▽モルドバがおよそ70万人などとなっています。

また、ロシアに移動した人はおよそ285万人で、ウクライナから周辺国に移動した人の数はあわせておよそ1583万人にのぼっています。

一方で、こうした国々から軍事侵攻以降、ウクライナに入国した人の数はおよそ812万人となっていて、この中にはいったん国外に逃れたあと、戦況を見ながらウクライナに帰国する人も含まれていると見られます。