物価高騰対策など 今年度第2次補正予算 参院本会議で可決 成立

物価高騰対策などを盛りこんだ今年度の第2次補正予算は、参議院本会議で採決が行われ、賛成多数で可決 成立しました。

一般会計の総額が、28兆9222億円の第2次補正予算案は、参議院予算委員会で可決されたのを受けて、2日夜に開かれた参議院本会議で採決が行われました。

採決に先立つ討論で、自民党は「国際情勢、国内経済ともに風雲急をつげており、国民の命と健康、生活、雇用事業を守り抜くため、一刻も早く執行に移し、一日も早く国民に届けることが今、求められている」と述べました。

一方、立憲民主党は「これまでの政府の対応は、あまりにも遅すぎると言わざるをえない。生活や仕事の現場はまさに待ったなしだが、本気で立て直そうという熱い思いがこの予算案からは伝わらない」と述べました。

そして、採決が行われた結果、自民・公明両党と国民民主党などの賛成多数で可決され、成立しました。

第2次補正予算には、
▽家庭や企業の電気や都市ガスの料金の負担軽減や、燃料価格の抑制など「物価高騰・賃上げへの取り組み」として7兆8170億円。

▽妊娠や出産に際して合わせて10万円相当の経済的支援や、スタートアップの育成などを行う「新しい資本主義の加速」に5兆4956億円が盛りこまれています。

また、
▽新型コロナや物価高への対策などとして、
4兆7400億円の予備費も計上されています。

成立した第2次補正予算

2日の参議院本会議で成立した今年度の第2次補正予算は、ことし10月に決定した経済対策の実行に必要な追加の歳出が盛り込まれ、一般会計の総額が28兆9222億円となっています。

経済対策で掲げられた5つの柱に沿ってみていきます。
まず1つめの柱「物価高騰・賃上げへの取り組み」です。
このうち、▽高騰が続く電気代や都市ガス料金の負担軽減策に3兆1073億円。
▽ガソリンなどの燃料価格を抑えるための補助金の支給を継続するため3兆272億円が計上されています。
また、▽中小企業に継続的な賃上げを促すため生産性の向上や事業再構築などを支援する費用として、7800億円が計上されました。

2つめの柱の
「円安を生かした地域の稼ぐ力の回復・強化」では、
▽外国人観光客を呼び込んでインバウンド需要を喚起するための施策や、受け皿となる観光地や観光産業を支援するための費用として1500億円が盛り込まれました。
▽また先端半導体などの重要物資を国内で生産する能力を強化し、安定供給を実現するための体制整備の費用に7949億円。
▽中小企業の海外市場開拓を支援する費用などとして、207億円が計上されました。
3つめの柱は、
岸田内閣が掲げている「新しい資本主義」の実現の加速です。
▽人への投資を抜本的に強化するため、デジタル分野などの新たな技能の習得支援や成長分野へのキャリアアップ支援に752億円、
▽大学の理工系学部への転換を支援する事業などに3002億円。
▽また脱炭素社会の実現に向けて企業の研究開発支援やクリーンエネルギーで動く自動車の導入促進などの事業に1兆1034億円が盛り込まれました。
▽さらに妊娠や出産をした際に育児用品の購入などの負担を軽減するため、合わせて10万円相当の経済的支援を行う費用として1267億円が計上されています。

4つめの柱である
防災・減災や安全保障など「国民の安全安心の確保」については、
▽防災・減災に向けた公共事業に1兆2502億円。
▽新型コロナウイルスの感染拡大に備えて病床の確保などの交付金に1兆5189億円。
▽ワクチンの確保に加えて接種体制の整備や実施の経費として1兆2072億円。
▽さらに変化する安全保障環境への対応として自衛隊の装備強化などの経費に3248億円が計上されました。
最後に5つめの柱である「今後への備え」として、
▽新型コロナや物価対策として設けた予備費に3兆7400億円を積み増すほか、
▽国際情勢の変化や災害の発生で経済的な対応が必要な場合に備えるためとして、1兆円の新たな予備費が設けられました。

一方、財源としては、今年度の税収が上振れした分を充てるほか、昨年度の予算で使われなかった剰余金も活用します。

それでも不足する22兆8520億円については、新たに国債を発行して賄います。

この結果、今年度の新規の国債の発行額は、ことし5月に成立した第1次補正予算の段階よりも1.5倍余りに膨らみます。

「基金」に巨額予算 “使途や効果の検証を”

今回成立した第2次補正予算では、各省庁が所管し、複数年度にわたる事業に支出できる国の「基金」に、総額で9兆円近い巨額の予算が計上されました。

「基金」については、適切に使われているかのチェックが十分でないという指摘もあり、使途や効果を検証することが求められます。

今回の補正予算では、新たに設けられた16の基金も含めて、合わせて50の基金に合計8兆9013億円の予算が計上されました。

1度の補正予算で基金に支出する金額としては過去最大です。

内訳を見ますと、
▽ガソリン価格の高騰を抑制する目的などに使われる経済産業省の「燃料油価格激変緩和基金」に3兆272億円。
▽半導体や蓄電池の安定供給確保を支援するための基金に8288億円が計上されています。
▽また、厚生労働省のワクチン生産体制などの緊急整備基金に4750億円。
▽文部科学省の大学が理工系に学部を転換するのを支援する「大学・高専成長分野転換支援基金」に3002億円が計上されました。

国の「基金」は、複数年度にわたる補助事業などに継続して支出できるため、会計年度ごとに予算を編成する「予算単年度主義」の弊害を是正する手段として活用されています。

しかし、財政法では「特に緊要となった経費」に限って、補正予算の編成を認めており、野党からは今回補正予算に計上された巨額の基金の必要性をめぐって批判の声もあがっています。

また「基金」が適切に使われているかどうかのチェックが十分でないという指摘もあり、今回の補正予算成立を受けて、基金を所管する各省庁には運用の透明性をはかり、使途や効果をしっかり検証することが求められます。

「基金」とは

「基金」は、国の補助金などを積み立てた資金です。

独立行政法人や公益法人の事業に使うために設けられます。

財務省に毎年、予算を要求して、査定を受けたうえで、措置される事業費と違い、基金の資金はいったん積み立てられると、複数年度にわたって継続的に支出できます。

事前に、いくら必要か見積もるのが難しかったり、年度によって必要な額が大きく増減したりしても柔軟に支出できるというメリットがあります。

一方で、「基金」については、毎年、予算査定を受ける通常の事業に比べて、支出が適切に行われているかどうかチェックが不十分だという弊害も指摘されています。

今回の予算委員会の審議でも、野党が補正予算に盛り込まれた多額の「基金」の積み増しを問題にしていました。

岸田首相「補正予算成立は1つ結果を出したということ」

岸田総理大臣は、総理大臣官邸で記者団に「コロナ禍や世界的な物価高騰など、歴史を画するような課題を前にして1つ1つ結果を出していくことが大事だと言ってきた。総合経済対策の裏付けとなる補正予算が成立したことは1つ結果を出したということだ。来年はじめから電気料金の引き下げや子ども子育て対策、さらには国内の投資促進による地方の活性化などの取り組みを1日も早く国民に届け、実感してもらえるよう全力を尽くしていきたい」と述べました。

また、今後の対応について「旧統一教会の被害者救済法案、さらには防衛力の強化など、大変重要な課題がまだ山積している。引き続き緊張感を持って、ひとつひとつの課題に挑戦し続けていきたい」と述べました。

自民 茂木幹事長「スピーディーに執行していきたい」

自民党の茂木幹事長は、記者団に対し「厳しい国会運営のなか、早期に成立することができた。当面の物価高対策や世界経済の下振れリスクへの対応、さらには成長分野への投資の拡大に向けて、予算に盛り込まれた施策をスピーディーに執行していきたい」と述べました。

また、旧統一教会の被害者を救済するための法案について「来週6日から国会審議がスタートするが、政府には丁寧に説明してほしい。被害救済や再発防止に向け、今国会でしっかり成立させたい」と述べました。

立民 泉代表「規模が大きいだけで即効性に乏しい」

立憲民主党の泉代表は、訪問先の茨城県筑西市で「規模が大きいだけで、国民に直接届く即効性に乏しい。財政赤字の中で有効な予算ではなく反対した」と述べました。

また、「予算委員会での審議を通じて岸田内閣の不祥事の多さが明らかになった。秋葉復興大臣をはじめ、疑惑を抱えたままで説明責任を果たせない政務三役がいることは国民の信頼を失う。臨時国会での岸田総理大臣の最後の仕事は、旧統一教会の被害者を救済するための法案を成立させることで救済に資する法律を力を合わせてでも仕上げたい」と述べました。

公明 山口代表「政府に速やかな執行を促したい」

公明党の山口代表は、記者団に対し「物価高に対応する施策を速やかに実行することが一番重要だ。公明党が提案した、妊娠や出産に際してのあわせて10万円相当の経済的支援も、今回が継続的な実現に向けての第一歩なので、自治体と連携しながら実行していくことが重要だ。政府には、速やかな執行を促したい」と述べました。

共産 小池書記局長「物価対策は焼け石に水」

共産党の小池書記局長は、記者会見で「緊急で必要になっている物価対策には役に立たない中身で、実効性のある賃上げの具体策が全く盛り込まれていない。物価全体が上がっているのに部分的で一時的な対策で焼け石に水だ。いろいろな面から見て問題の大きい補正予算なので反対した」と述べました。