
老朽化進むインフラの安全対策 広域管理を提言 国の専門部会
中央自動車道の笹子トンネルで起きた天井板崩落事故から10年の2日、国の専門部会は老朽化したトンネルや橋などの安全対策について提言をまとめました。自治体が単独で対応してきたこれまでの考え方を抜本的に見直し、複数の市町村や都道府県などが連携して、地域のインフラを共同で計画的に管理するよう求めています。
国土交通省によりますと、全国にある道路や橋などは、今後、数十年で老朽化が急速に進むことが確実となっています。
10年前の笹子トンネルの事故のあと、安全対策について検討してきた国土交通省の専門部会は、今後の対策の考え方や具体的な取り組みについての提言をまとめ、2日公表しました。
それによりますと、特に小規模な自治体では施設の維持や管理のための人員や予算が不足していて、補修が手付かずのものも多く「この状態を放置すれば、重大な事故や致命的な損傷を引き起こすリスクが高まることになり、早急な対応が必要だ」と指摘しています。
そして、個別の施設を自治体単独で維持・管理するのは限界があるとして、行政の区域にこだわらず複数の自治体など、広域で戦略的に対策を進めるなどこれまでの考え方を抜本的に見直すよう求めました。
具体的には
▽必要な施設の選定や優先順位などの判断を広域で行うことや
▽複数の自治体が共同で施設の管理を行うなど負担を減らす体制を作るほか
▽人口の減少などで利用が少ない施設については、集約化を検討することなどを求めています。
提言を受けて、国土交通省は今後、具体的な取り組みのための制度や体制作りを進めることにしています。
「インフラ管理まとめることで安全守る体制作りに」
社会資本メンテナンス戦略小委員会の家田仁委員長は「全国の自治体の4分の1は、専門の技術を持った職員が1人もいないのが現状で、インフラの管理をひとまとめにすることで、安全を守る体制作りにつながる。今後、インフラの維持には『減少』や『取捨選択』も必要で、国民の理解と協力が欠かせない。二度と笹子トンネルのような事故が起きないよう、国民全体で危機感を持ち、社会として取り組んでいく必要がある」と話していました。