【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(30日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる30日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

米シンクタンク「ロシア軍 バフムト急速包囲の可能性低い」

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は29日、「ロシア軍の情報筋が主張するようなテンポで前進したとは考えにくい。ロシア軍がバフムトを急速に包囲する可能性は低い」と分析しています。

また、「戦争研究所」はロシアの受刑者250人が、国内最大級の戦車の製造工場で強制労働を命じられたほか、工場の労働者が長時間労働を強いられていると、ロシアの独立系のネットメディアが伝えたことに触れ「ロシアが一般的な労働力不足を補おうとしているようだ」という見方を示しています。

ウクライナ副首相「寒さ暗闇で屈服するわけにいかない」

ウクライナでは東部で激しい戦闘が続く一方で、ロシア軍によるインフラ施設への攻撃で深刻な電力不足となる中、ウクライナのベレシチュク副首相は「寒さや暗闇で屈服するわけにいかない」として、厳冬期でも徹底抗戦を続けるよう国民に呼びかけました。

ロシア軍が10月以降繰り返している大規模なミサイル攻撃によってウクライナでは首都キーウをはじめ各地で深刻な電力不足に陥っています。

ウクライナのシュミハリ首相は29日の会議で、国内の電力需要の30%が不足しているとしながらも、天然ガスや石炭などの備蓄は十分にあると強調しました。

また、ベレシチュク副首相は29日、「厳冬期はきょうから100日間、もう1つの試練だ」とSNSに投稿しました。

ウクライナ政府は、ロシア軍によるインフラ施設をねらったさらなる攻撃に警戒を強めていますが、ベレシチュク副首相は「われわれは今、寒さや暗闇で屈服するわけにいかない。わずか100日だ。その後は春が来る」と書き込み、厳しい寒さのもと電気や暖房が不足する中でも徹底抗戦を続けるよう国民に呼びかけました。

ゼレンスキー大統領 プーチン政権の戦争犯罪を問う姿勢

ゼレンスキー大統領は29日、新たな動画を公開し「ロシア側は大きな損失にもかかわらず、依然としてドネツクで前進を図り、ルハンシクでは陣地を固めようとしている。南部でも何かをたくらんでいる」と述べました。

今後、気温が下がると、これまでぬかるんでいた地面が凍結し、双方の部隊の機動性が上がるとされ、戦闘は一層激しくなることが懸念されています。

ゼレンスキー大統領は「世界は、この戦争に加担したすべての人間に裁きを受けさせるよう、あらゆる手段を講じるだろう」と述べ、ロシアのプーチン政権の戦争犯罪を問う姿勢を改めて示しました。

米ロの核軍縮協議延期 ロシア高官は年内の再開難しい認識示す

アメリカとロシアは、両国の核軍縮条約「新START」に基づく関連施設への査察の再開に向けた協議をエジプトの首都カイロで29日から行うとしていましたが、アメリカ国務省は28日、ロシア側から延期すると通知を受けたことを明らかにしました。

これについてロシア外務省のリャプコフ次官は29日、記者団に対し年内の協議再開は難しいという認識を示しました。

そのうえでリャプコフ次官は延期した背景について「アメリカは査察の再開にばかりこだわっていたが、われわれは他の課題が優先だった。しかしアメリカは、ロシアのシグナルを受け止めようとしなかった」と述べ、アメリカがロシアの優先課題に消極的だったと主張しました。

今回の協議についてアメリカ政府は、ウクライナ情勢ではなく核軍縮問題が話し合われるとしていました。

ただ、ウクライナ侵攻を続けるロシアとしては、この条約に基づく協議にとどまらない形でアメリカとの交渉を模索していた可能性もあり、今後、協議が再開されるのかなどが焦点です。

ゼレンスキー大統領の妻 戦争犯罪を問う特別法廷の設置訴え

ウクライナのゼレンスキー大統領の妻オレーナ氏が29日、訪問先イギリスの議会で演説し、ロシアの戦争犯罪を問う特別法廷の設置を訴えました。

オレーナ氏は「ウクライナの数多くの都市がロシアの攻撃にさらされ、われわれは第2次世界大戦中のイギリスの記憶と同じような恐怖を体験している。あなた方は降伏しなかったし、私たちも降伏しない」と述べました。
そのうえで「必要としているのは勝利だけではなく正義もだ」と述べ、ロシアの戦争犯罪を裁くための特別法廷の設置を訴えました。

オレーナ氏は28日、ロンドンで開催された紛争下の性暴力の防止をテーマにした国際会議に出席し、会議を主催したイギリス政府によると「性暴力は、相手への支配を証明する最も残酷で最も動物的な手段だ」と強調したうえで「ロシアは性暴力を武器として使っている」などと非難し、加害者の責任を追及する重要性を訴えていました。

ロシア産の肥料 輸出再開と国連発表

世界的な食料危機への懸念が高まる中、国連は、ロシアによる軍事侵攻以降、滞っているウクライナ産とロシア産の農産物などの輸出再開に取り組んでいますが、29日、ロシア産の肥料の輸出が再開されたと発表しました。

輸出されるのは、ヨーロッパの港や倉庫に保管されていたロシア産の肥料26万トンで、このうち2万トンを積んだ最初の船が29日オランダからアフリカのマラウイに向けて出発したということです。

国連のデュジャリック報道官は会見で「人道的なニーズにこたえ、アフリカの農産物の壊滅的な損失を防ぐだろう」と述べ、今後もウクライナ産とロシア産の農産物などの輸出のために取り組むと強調しました。

アメリカ 変圧器などのエネルギー安保関連 73億円相当支援へ

アメリカ国務省は29日、ウクライナに対し5300万ドル、日本円にして、およそ73億円相当のエネルギー安全保障に関する支援を行うと発表しました。具体的には変圧器やブレーカー、それに車両などを提供するということです。
ロシア軍によるウクライナの電力関連のインフラ施設への攻撃について、国務省は「ウクライナの軍事作戦に影響を与えるとともに、冬の間、現地の人たちが重要なエネルギーを入手することを妨げウクライナの人たちの決意をくじこうとしている」と分析しています。

東部ドネツク州では激しい攻防続く

ウクライナ東部では、ドネツク州のウクライナ側の拠点の1つバフムトについて、親ロシア派の指導者が28日「ロシア側の部隊が前進に成功し、包囲が近い」と述べました。

これに対し、ウクライナ政府の高官は29日「ロシア軍はバフムトに入ろうとして多くの犠牲を出している」と述べるなど、双方の激しい攻防が続いています。

ウクライナ 国内で30%の電力不足と国営電力会社

ロシア軍は先月以降、電力やガスなどの供給を担うインフラ施設に対して大規模なミサイル攻撃を繰り返しています。

攻撃の影響でウクライナ国内では深刻な電力不足に陥っていて、ウクライナ国営の電力会社は29日、国内で30%の電力が不足し、計画停電を続けていると明らかにしました。

西部ビンニツァ州の知事は28日、州内の市の1つでロシア軍による火力発電所への攻撃のあと暖房用の温水を供給する設備が停止し1万8000人に影響が出ているとして、復旧作業を急ぐとともに暖を取れる拠点の設置を進めていると明らかにしました。

ウクライナ政府は、ロシア軍が来週にも新たなミサイル攻撃を計画しているという見方を示し、インフラ施設をねらったさらなる攻撃に対して警戒を強めています。

NATO外相会議 電力不足のウクライナへ支援で合意

ルーマニアの首都ブカレストで29日に始まったNATOの外相会議で、ロシアのミサイル攻撃で電力網などが被害を受け、深刻な電力不足に陥っているウクライナに対し、燃料や発電機を提供するなど支援を強化することで合意しました。

会議にはウクライナのクレバ外相も出席し「今回、伝えたいのは『より早い支援を』ということだ。防空システムがあれば、ロシア軍による次のミサイル攻撃からインフラ施設を守ることができる」と述べて、NATO加盟国に対しより迅速な軍事支援の提供を求めました。

会議ではウクライナが目指すNATO加盟についても意見を交わしたということですが、会議のあとの記者会見でストルテンベルグ事務総長は「われわれはウクライナの意思を認識し尊重するが、今の焦点は、ロシアの軍事侵攻とたたかうウクライナに支援を提供することだ」と述べ従来の見解を示すにとどめました。

ドイツ カタールから長期間LNG供給 ロシア依存から脱却に向け

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け、ロシア産天然ガスの依存からの脱却を急ぐドイツは、中東のカタールから初めて長期間のLNG=液化天然ガスの供給を受けることになりました。

これは、カタールの国営エネルギー会社カタール・エナジーが29日、記者会見で明らかにしました。

それによりますと、カタール・エナジーは2026年から15年間、ドイツへ年間、最大で200万トンのLNGを供給するということです。

ドイツは輸入する天然ガスのうち55%をロシア産が占めていましたが、ウクライナへの軍事侵攻を受けてロシア依存からの脱却を進める方針を打ち出し、世界有数の輸出国カタールに供給を働きかけてきました。

ドイツメディアによりますとドイツにとっては初めての長期間の供給になるということで、ロシアへのエネルギー依存からの脱却に向け一歩前進したかたちです。

ドイツのエネルギー政策を担当するハーベック経済・気候保護相は「15年の契約はすばらしい」と述べ、発表を歓迎しました。