防衛費増額“国民負担あり方 真正面から議論し理解を” 財政審

財務大臣の諮問機関、財政制度等審議会は焦点となっている防衛費の増額について、安定的な財源の確保が不可欠だとして、国民負担のあり方を真正面から議論し、国民の理解と納得を得るよう求める提言を取りまとめました。

財政制度等審議会は、29日の会合で来年度予算案の編成に向けた提言にあたる「建議」を取りまとめ、榊原定征会長が鈴木財務大臣に手渡しました。

この中では、政府が検討を進める「中期防」=中期防衛力整備計画で、焦点となっている来年度から5年間の防衛費の増額について、「30兆円を超えて相当程度増額することになればそれ自体、歴史の転換点と言い得る」として、歳出・歳入両面にわたる財源措置の検討を求めています。

そのうえで、防衛費の負担を先送りすることなく、歳出改革とともに安定財源を確保しなければならないとしたうえで、国民負担のあり方を真正面から議論し国民の理解と納得を得ることが重要だと指摘しています。

また、新型コロナ対策として大規模な財政措置を講じている現状を「例外」と位置づけ、各種の対策を段階的に縮小し確実に終了させるべきだと提言しました。

さらに、今回の提言では、イギリスのトラス前政権が財源の裏付けがないまま大規模な減税や財政出動を掲げたことで市場の信認を失い、退陣した事例を紹介し、「イギリスの混乱を他山の石とし、市場の不信を招かぬよう責任ある財政運営を行っていくことが不可欠だ」と指摘しました。

財務省は提出された建議を踏まえて、今後、来年度予算案の編成作業を本格化させる方針です。

榊原会長 “歳出・歳入両面の改革で安定財源を”

財政制度等審議会の榊原会長は記者会見で、防衛費増額の財源について「まずは歳出改革を行った上で、歳入面で安定的財源を措置するという二本柱だ。わが国の国債発行の水準は非常に大きく、それをしっかりと減らしていく。さらにプライマリーバランス=基礎的財政収支の黒字化を目指す方向もしっかりと堅持するよう建議でも提言しており、その達成を目指すべきだ」と述べ、安易な国債発行に頼らず歳出・歳入両面の改革で安定財源を確保すべきだという認識を示しました。

また審議会の増田寛也分科会会長代理は、「世界でも類を見ないほど国債の発行残高が積み上がっている中、単純に赤字国債では財政の信認が失われることになってしまい、好ましくない。大きな歳出を伴うものには安定財源でと言われており、財源については12月に具体化の議論を行うことになると思うが、きちんとした議論が展開されることを期待する」と述べました。