温泉王国で「サウナ」が熱い!

温泉王国で「サウナ」が熱い!
私は、サウナー(=サウナ愛好家)です。日々の疲れから解放され、心身共に「ととのう」、サウナの魅力にとりつかれています。群馬に赴任して3年目。全国的なサウナブームが続く中で「温泉王国」と言われる、ここ群馬でも今“サ活”が熱いんです。サウナ専門店に、ベッドルームサウナ、サウナドクターに、サウナミーティング。熱~い現場にご案内します。(前橋放送局ディレクター 杉山裕美)

ようこそ サウナ専門店へ

まず訪れたのは、ことし3月、前橋市にオープンした県内初のサウナ専門店。こだわりのサウナを求めたサウナーたちが集う人気スポットです。
月に数回の「レディースデー」を除けば、そこは、熱い男たちのための、熱い場所。今回、特別に許可を得て撮影を行いました。

「最高のサウナを提供したい」

そんな思いで、店を構えているのは、支配人の若林優貴さん。これまで100以上のサウナを回った生っ粋の「サウナー」です。

石川県出身、縁もゆかりもない群馬で、しかも「脱サラ」してまでサウナ専門店を構えたのには、ワケがありました。
若林さん
「群馬は温泉王国ですよね。(仕事で)群馬に来た時、サウナに入るという習慣がなかなかないと感じたので、群馬にサウナを作ってチャレンジしたかったんです」

きのうも、きょうも来ちゃいました

サウナの中に入ると、思ったよりも優しい熱さでした。理由は、暖める「まき」。
“特有の柔らかい熱が身体の芯までじっくりと温めてくれます”と、ホームページではアピールしています。

そして、その熱風をスタッフがタオルであおいで送る「アウフグース」をしています。ここでの若林さんの別名は「ねっぱ(熱波)やし」。
タオルを大きくあおぐ、そのパフォーマンスも見ものの1つです。

熱くなった体は、ひのきの水風呂で冷やし、その後、横になったり、座ったりして、体を休める。この繰り返しが「ととのう」一連の流れです。
サウナ客
「最高でしたね」

「きのう来てみたら、メチャクチャよかったので通いたいなと思って、きょうも来ちゃいました」

「ここに来ると、嫌なことも忘れてすっきりして帰れます」
若林さん
「群馬のサウナを少しでも盛り上げたい。自分の好きなサウナに、好きな入り方で入ることで(多くの人の)生活が豊かになっていけばいいですね」

寝ながら汗だく ベッドルームサウナ

次に訪れたのは、前橋市内のホテルです。「サウナはこちら」と外にある階段を先導されて案内されました。
「離れ」のような場所、このホテルの「37(=サウナ)号室」が目的地でした。

客室そのものがサウナというその名も「ベッドルームサウナ」。ことし7月にできたばかりです。

「サウナ付き客室」は聞いたことがありますが、こちらのホテルでは、逆転の発想から、客室をサウナにしてしまったそうなんです。
早速、こちらも「サウナ-」のNHKスタッフが体験させてもらいました。

すると、わずか5分ほどで、全身“汗だく”です。
NHKのスタッフ
「寝た状態でサウナに入ることで、背中が温かいですし、楽な体勢で入ることができて、とてもリラックスできています」

サ道を行く 専門家に会いに行った

医学的には、どんな効果があるのか。専門家を取材できないか、インターネットで探していたところ、見つけました。

その名は、加藤容祟さん。プロフィールを見ると、慶應義塾大学医学部の特任助教で、日本サウナ学会代表理事、しかも、出身は群馬県富岡市。

この人以外に「群馬とサウナ」を語れる適任者はいない!早速、東京に出張しました。

研究室を訪ねると、まず、白衣の下のTシャツの胸元にチラチラ見える、ある文字に私の目はくぎづけになりました。
サ道

サウナにはまる主人公の漫画で、テレビドラマ化されています。取材直後から熱さを感じる、お医者さんでした。

サウナドクターが語る その効果とは

その熱さが群馬でも増すサウナについて、質問すると一転、冷静にその効果を語ってくれました。

加藤さんの専門は、がん研究。予防の重要性を感じる中でサウナも研究テーマになりました。

自身もサウナにはまり、各地を行脚。まさに“サウナドクター”として実践と研究を続けてきました。
加藤医師
「(効果の)1つは、循環器系ですね。高血圧、心筋梗塞のリスクの低減効果がある。もう1つは認知症のリスク低減効果もあります。そして、精神科の疾患です。統合失調症やうつ病の予防にもつながります。“気持ちいいな”と入っているだけで、病気が遠のいているというのが、サウナの魅力かなと思います」
さらにこんな効果も。
加藤医師
「いわゆる“ととのう”という、サウナのあと、独特の爽快感を感じている時、ふだんだったら思いつかないような“アイデア”が降ってくるような状況に脳科学的にもなると言われています」

サウナミーティングでアイデアが次々と?

加藤さんも語る、この「サ活」の効果をねらった施設が、実際にみなかみ町にありました。

話し合っているのは、この施設を作った地元の一般社団法人の人と、その仲間たちです。
「もう一歩のところを絞り出すためにも、行っちゃいますか」

ミーティングの最中、アイデアが出なくなってきたところに発したメンバーのひと言が“GOサイン”でした。

ノートパソコンを閉じて、立ち上がり、ミーティングスペースを出て、すぐにあるのが…。
サウナです。低温でじっくり入るタイプのサウナの中でアイデアを練ります。

そこを出ると、谷川岳を望める水風呂が。心身共に、すっかり「ととのい」、議論も活発になっていました。
「会議室だと、かしこまっちゃうことがあるので、こういう場所だと自然に普通の会話のなかにアイデアが出てきますよね」

「ふだんだったら『これは言ったら変だ』って思われるようなことも、裸の付き合いをすると、ちょっと言ってみようと思えますよね」
岡村さん
「この施設で、会社の仲間と上質なコミュニケーションを取っていただき、深い関係性を築いていただきたいという思いで運営しています」

群馬とサウナと温泉の未来は

温泉王国・群馬を、さらに熱くするサウナ。群馬出身でもある医師の加藤さんは、群馬とサウナ、そして温泉の未来と真剣に向き合っています。
加藤医師
「群馬には昔から温泉という全国的にも有名で、いいものがある。そこにサウナも組み合わせることで、より健康につながる。群馬に住んでいるだけで、病気が遠のくという魅力を、全国に発信すれば、群馬に多くの人が集まって来るのかなと思っています。そして、それが地方創生につながるのかなと思います」

ホットな群馬から熱い情報、届けます

一連の取材を終えた直後の私。

この記事を、どうすればきちんと、そして、わかりやすく伝えられるのか。表現者としては最も大事なアイデアがなかなか出てきませんでした。

そんなときは、やはり一度サウナへ。“ととのって”戻り、書いたのがこの記事でした。

群馬に押し寄せてきたサウナの「熱波」に対し、温泉はどう共存を図るのか、それとも、逆襲に出るのか。今後も、その動向をきちんと追いながら、ホットな情報を全国に送りたい、その熱い思いを新たにしました。

最後になぞかけを1つ。ことしの夏とかけまして、全国的な“サ活”ブームと、ときます。その心は…

「どちらも群馬がアツイです」

ととのいました?
前橋放送局ディレクター
杉山裕美
2020年入局。営業部門を経て、この夏からディレクター。県内に多く暮らす外国人の取材やツイッター発信など取り組む業務は多岐。