【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(29日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる29日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

NATO外相会議始まる ウクライナ支援めぐり議論

NATO=北大西洋条約機構の外相会議が日本時間の29日夜、ルーマニアの首都ブカレストで始まりました。厳しい冬となる中、ロシア軍からインフラ施設などへのミサイル攻撃を受けているウクライナを支援する姿勢をいっそう強く打ち出すとみられます。

また、ロシアからの圧力にさらされているとして、旧ソビエトのモルドバやジョージアなどへの支援も強化することで合意する見通しです。

NATOのストルテンベルグ事務総長は会議を前に記者団に対し「NATOはこれまでも前例のない支援をウクライナに提供してきたし、これからも支援を続ける」と強調しました。

今回の会議では、ことし5月にNATOへの加盟を申請し、現在、各国が加盟に向けた批准の手続きを進めている北欧のフィンランドとスウェーデンもすべての議論に参加する予定です。

米シンクタンク「来週にもウクライナ全土にミサイル攻撃か」

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は28日、ミサイルを搭載したロシア海軍の新たな艦艇が黒海で活動しているなどとするウクライナ軍やロシアの軍事専門家による分析を踏まえ「ロシア軍が来週にもウクライナ全土に新たなミサイル攻撃を行う準備をしている可能性が高い」と指摘しました。

そのうえで、ミサイル攻撃のペースを維持させることがロシア側のねらいだと指摘し、ロシアとしては攻撃を定期的に行うことでウクライナ国民の士気をくじかせようとする意図があるものとみられます。

生物兵器禁止条約 再検討会議 ウクライナ情勢めぐり紛糾

生物兵器の開発や貯蔵を禁止する生物兵器禁止条約の再検討会議は28日、スイスのジュネーブにある国連ヨーロッパ本部で6年ぶりに始まりウクライナ情勢をめぐるロシアと欧米などの対立も表面化し、会議は初日から紛糾しています。

会議では、新型コロナウイルスのパンデミックを踏まえ、細菌やウイルスに関する最新の科学的な情報の共有や、兵器への転用が疑われる場合の検証の方法などをめぐって、議論が行われる見通しです。

会議では各国の代表から「生物分野の開発が悪用されないかを調べる国際機関を設立すべきだ」などといった意見が出されました。

一方で、ロシアの代表は「アメリカとウクライナが条約に違反して合同で生物兵器の開発を進めているというわれわれの懸念に、何ら回答が示されていない」と主張し、これに対してヨーロッパ諸国や日本などの代表は「条約を利用して根拠のない主張を行っている」と強く反論しました。

会議は来月16日まで開かれますが、ウクライナ情勢をめぐり各国の対立が続く中、条約の強化に向けた最終文書を採択することができるのか、予断を許さない情勢です。

ゼレンスキー大統領「敵は1週間でヘルソン州に258回砲撃」

ウクライナのゼレンスキー大統領は28日、新たな動画を公開し、最新の戦況について「敵はヘルソンやその周辺へ毎日砲撃を行い、わずか1週間でヘルソン州の30の集落に258回の砲撃を行った」としてウクライナ軍が奪還した南部ヘルソンとその周辺へのロシア軍の攻撃が続いていることを明らかにしました。

そのうえで「ウクライナは決して荒廃した場所にはならない。われわれはロシア軍によって破壊されたすべてのものや家を修復するためにあらゆることを行う」と述べ、ロシアを改めて非難するとともに、インフラの復旧などに全力を挙げる姿勢を強調しました。

ゼレンスキー大統領 北欧など7か国の外相と会談

ウクライナのゼレンスキー大統領は28日、NATO=北大西洋条約機構への加盟を目指す北欧のスウェーデンとフィンランドのほか、バルト3国などを含めた7か国の外相と首都キーウで会談しました。

ウクライナ大統領府の発表によりますと、会談の中でゼレンスキー大統領は各国によるこれまでの支援に謝意を伝えたうえで「特に軍事力の強化や負傷者への医療支援などに感謝している」と述べたということです。

また、会談の中でゼレンスキー大統領は、インフラ施設をねらったロシア軍の攻撃やそれに伴う電力不足に触れ、最新の対空ミサイルの提供やエネルギー分野での緊急支援の必要性を強調したということです。

さらに会議では、ロシアへの制裁を強化するとともにロシアの戦争犯罪を問う特別法廷の設置などに向け協調して取り組むことを確認したということです。

アメリカとロシアの核軍縮協議が延期 米国務省が明らかに

ウクライナ情勢をめぐり対立が深まるアメリカとロシアは、今月29日から核軍縮条約に基づく協議を行う予定でしたが、アメリカ国務省は協議が延期されたことを明らかにしました。

ロシア外務省はことし8月、アメリカとの核軍縮条約「新START」に基づく関連施設への査察活動について、ウクライナ情勢をめぐるアメリカの制裁措置によってロシアの査察官が渡航することが難しくなったなどと主張し、一時的にアメリカ側の査察の受け入れを停止すると発表しました。

この問題をめぐり、ロシア外務省のリャプコフ外務次官は、査察の再開に向けたアメリカとロシアの協議がエジプトの首都カイロで今月29日から来月6日にかけて行われるという見通しを示していました。

しかし、アメリカ国務省の報道担当者は28日、NHKの取材に対し、ロシア側から協議を延期すると通知を受けたことを明らかにしました。

そのうえで「ロシア側は新しい日程を提案すると表明している。アメリカはできるかぎり早い日程で再調整する用意がある」と強調しています。

ウクライナ情勢をめぐり、ロシアのプーチン政権が核戦力の使用も辞さない姿勢を示し各国から懸念があがる中、協議の枠組みは、核大国の米ロが対話を維持するチャンネルとして注目されています。

ウクライナ国防相「ロシアのミサイル 標的の97%は民間施設」

ウクライナのレズニコフ国防相は28日、自身のツイッターに「この9か月間でロシアはウクライナに対して1万6000回以上のミサイル攻撃を行った。標的の97%は民間施設だ」と投稿しました。

そして軍事目標を対象としたものは500回余りにすぎないとして「われわれが戦っているのはテロ国家だ」とロシアを強く非難しています。

国連人権高等弁務官事務所は、軍事侵攻が始まってから今月20日までに少なくとも6595人の民間人がミサイル攻撃や砲撃などで死亡したとしています。

NATO事務総長「ロシアは冬を兵器として戦争に利用」

NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長は、29日から外相会議が行われるルーマニアの首都ブカレストで記者会見し「ロシアのプーチン大統領は電力システムやガスのインフラなどウクライナの人々にとって基本的なサービスを破壊し、冬そのものを兵器として戦争に利用しようとしている。われわれはさらなる攻撃に備える必要がある」と述べました。

そして外相会議では、ロシアのミサイル攻撃による被害を防ぐため、ウクライナの防空システムなどへの支援強化で合意するという見通しを示しました。

ウクライナ 電力不足深刻に 各地で緊急停電実施

ウクライナではロシア軍によるインフラ施設への攻撃で深刻な電力不足が続いていて、国営の電力会社「ウクルエネルゴ」は28日、各地で緊急停電を実施したと発表しました。

こうした中、大規模な停電の際に住民が一時的に身を寄せる非常用テントの設置が各地で進んでいて、首都キーウでは、当局者によりますと、28日の時点で400か所以上に設置されたということです。

南部ヘルソン州でロシア側が防衛陣地構築か

南部ヘルソン州では、ウクライナ軍のさらなる反転攻勢に対応しようとロシア側が防衛陣地を築いている動きが伝えられ、南部のクリミアに隣接する地域の支配にこだわるロシアの姿勢がうかがえます。

ウクライナ南部では、ロシア軍が今月、要衝ヘルソンから部隊を撤退させたあと、ウクライナ側のさらなる反転攻勢に備えているとみられています。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は27日、ロシア側が、予備役から動員した兵士も投入しながら、ヘルソン州のドニプロ川の東岸地域に大規模な防衛陣地を築いていると指摘しました。

その背景として「ロシア軍は、ウクライナ軍がドニプロ川を渡ってヘルソン州の東部で反撃作戦を展開し、クリミアにつながる重要な陸路を脅かす可能性があるとみている」と分析しています。

ロシアが8年前に一方的に併合したクリミアに隣接する地域の支配にこだわるプーチン政権の姿勢がうかがえ「戦争研究所」は「防衛陣地のよしあしにかかわらず、今後の行方を占ううえで、極めて重要であることを浮き彫りにしている」という見方を示しました。

プーチン大統領 カザフスタン大統領のロシア訪問を歓迎

ロシアのプーチン大統領は首都モスクワを訪れた中央アジアのカザフスタンのトカエフ大統領と28日、会談しました。

トカエフ大統領は今月再選し、26日就任式を終えたばかりで、プーチン大統領は「あなたが再選してから最初の外国訪問でロシアを訪れたことは、両国関係にとって特別な意味がある。われわれは高く評価している」と歓迎しました。

旧ソビエトの構成国だったカザフスタンをみずからの勢力圏とみなすプーチン大統領としては、両国の政治的・経済的な結び付きを強調したい思惑があるとみられます。

一方のトカエフ大統領は「ロシアはこれまでも、これからも、主要な戦略的パートナーだ」と応じました。

トカエフ大統領はこれまで、ウクライナに軍事侵攻したプーチン政権とは一定の距離を置く姿勢を示し、29日にはフランスを訪問する予定で、ロシアに偏らず、ヨーロッパなどとの関係も重視する構えを見せています。

電力不足が深刻化 ウクライナで非常用テントの設置進む

ロシア軍によるインフラ施設への攻撃で電力不足が深刻化しているウクライナでは、大規模な停電の際に住民が一時的に身を寄せる非常用テントの設置が進んでいます。

首都キーウの当局者によりますと、市内では28日の時点で400か所以上に設置されているということです。

このうち、市の中心部にあるテントには、発電機や大型の暖房設備、それに飲料水のタンクなどが設置されたほか、スマートフォンの充電設備や無料のインターネット環境が整備されていました。

今月23日に大規模な停電が起きた際には、延べ290人が訪れたということです。

それぞれのテントには非常事態庁の担当者が常駐し、避難してきた住民を24時間態勢で受け入れるとしています。

非常事態庁の担当者は「住民のために常に準備はできている。少しでも快適に過ごせるよう、力を尽くしたい」と話していました。