ザポリージャ原発 “ロシア軍が撤退準備の兆候”

ロシア軍が占拠を続けるウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所についてウクライナの原発公社の総裁は「ロシア軍が撤退する準備を進めている兆候がある」と指摘しました。
ロシア側はこれを否定していますが、ザポリージャ原発をめぐっては、敷地内で砲撃が相次ぎ、安全上の懸念が国際的に高まっていることから、今後の動向が注目されます。

ウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所をめぐっては、ロシア軍が占拠を続ける一方、敷地内で砲撃が相次ぎ、先週も外部からの電力の供給が一時、喪失したとしてIAEA=国際原子力機関が懸念を示しています。

ザポリージャ原発について、ウクライナの原子力発電公社「エネルゴアトム」のコティン総裁は27日、ウクライナ国営テレビの取材に対し「ここ数週間、ロシア軍がザポリージャ原発から撤退する準備を進めている兆候があるとの情報が入ってきている」と述べました。

これに対して、原発が立地するエネルホダル市の当局者は28日、SNSで「原発はロシアの支配下にあり、事実ではない」と反論しました。

また、ロシア大統領府のペスコフ報道官は28日「ありえないことだ」と否定しました。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は27日の分析で、ザポリージャ州でウクライナ軍の差し迫った反撃は確認できないとする一方、ウクライナ軍が原発を奪還する準備を進めているというロシアの軍事専門家などの見方を指摘しています。

そのうえで、こうした論調を踏まえ、ロシア側が、将来的な原発からの撤退を見据えて、情報面での環境を整え始めている可能性があると分析しています。

また、ウクライナ南部では、ロシア軍が今月要衝ヘルソンから部隊を撤退させたあと、ウクライナ側のさらなる反転攻勢に対応するためドニプロ川の東岸地域に防衛陣地を築いているとみられています。

イギリス国防省は28日の分析で、ロシア軍はドニプロ川の東岸地域から州都ヘルソンに向けて毎日のように砲撃を行い、24日にはウクライナ側で10人が死亡、27日には砲撃の回数が1日で54回にも上ったと指摘しました。

ウクライナが奪還に成功したヘルソンでも、依然としてロシア軍による激しい攻撃が続いていることが浮き彫りとなっています。

ロシア モルドバへの天然ガス供給を継続

ロシアの政府系ガス会社「ガスプロム」は、ウクライナの隣国モルドバに向けた天然ガスの供給について、問題が生じたとして、11月22日に供給量を削減する可能性を警告していましたが、28日に供給を継続すると発表しました。

理由については「モルドバ側が支払いをめぐる障害を解消した」とし、詳細は説明していません。

一方で、今後もモルドバ側の支払いに問題が生じればガスの供給を削減、または停止すると主張し、天然ガスをロシアに依存するモルドバに対して、引き続き、揺さぶりをかける思惑もあるとみられます。