大相撲九州場所 平幕の阿炎 優勝決定戦を制し初優勝

大相撲九州場所は千秋楽の27日、平幕の阿炎が12勝3敗で並んだ大関 貴景勝、平幕 高安との3人の優勝決定戦を制して初優勝を果たしました。平幕の力士が優勝するのは3場所連続で、史上初めてです。

九州場所の優勝争いは14日目を終えて平幕で2敗の高安と、3敗の大関 貴景勝、平幕 阿炎の3人に絞られていました。

千秋楽の27日、阿炎が高安に突き倒しで勝ち、貴景勝も結びの一番で関脇 若隆景に勝ったため、12勝3敗で3人が並び28年ぶりに3人による優勝決定戦が行われました。

優勝決定戦は2連勝した力士が優勝となる「ともえ戦」で行われ、くじ引きでまず阿炎と高安が対戦して、阿炎が立ち合いで左に大きく飛んではたき込みで高安に勝ちました。

阿炎はこのあと対戦した貴景勝も押し出しで破って初めての優勝を果たしました。

平幕力士の優勝は名古屋場所の逸ノ城、秋場所の玉鷲に続いて3場所連続で、史上初めてです。

また、平成3年以来、31年ぶりにことしの6場所すべてで異なる力士が優勝しました。

阿炎はことし7月の名古屋場所のあと右ひじと左足首を手術して秋場所を休場し、今場所は休場明けでしたが、得意の力強い突き押し相撲を見せ、中日・8日目まで1敗を守りました。

9日目から2連敗しましたが、11日目には1敗だった王鵬に勝ち、14日目には3敗で並んでいた関脇 豊昇龍も破って優勝争いに踏みとどまりました。

照ノ富士の休場で横綱不在だった今場所は、前頭9枚目の阿炎が三役経験者としての実力を示し、悲願の初優勝を果たしました。

阿炎「うそのような感じでまだ高ぶっている」

初優勝を果たした阿炎は表彰式でのインタビューで「うそのような感じでまだ高ぶっている。何とも言えない感じだ」と率直な心境を話しました。

3人による優勝決定戦で高安との一番では立ち合いで左に大きく飛びましたが「変化というか横から攻めるつもりで。立ち合いが強かったので飛ばされてずれる感じになった」と振り返っていました。

続く大関 貴景勝との一番では持ち味の突っ張りを貫き「低く、とにかく速く当たることだけを考えた」と話しました。

師匠で元関脇 寺尾の錣山親方からは毎日「一番集中」というメールをもらっているということで「星を考えずに『一番集中』で取った。師匠には『おかげさまで』と言いたい。本当に迷惑しかかけてこなかったので、少しでも喜んでくれたらいいと思う」と目に涙をためながら話しました。

今場所は休場明けでしたが「いい調整ができて状態もいい感じで迎えられた。それもあってこういう成績が残せた。来年はもっと力強い相撲が取れるようになりたい」と今後の抱負を述べました。

八角理事長「阿炎に迷いがなかった」

日本相撲協会の八角理事長は初優勝した阿炎について「とにかく大関に勝って優勝したので立派だ。貴景勝は迷ったが、阿炎に迷いがなかった。この勢いで頑張ってほしい」とたたえました。

千秋楽まで優勝を争った大関 貴景勝については「自分がという気持ちがあったと思う。序盤で連敗した時はどうなるかと思ったがここまで粘り強くやった」と評価しました。

単独トップに立っていた高安の本割の相撲については「慎重に慎重に追い詰めていったけど、いなされて、また一からになっていた」と振り返りました。

そして、6場所すべてで優勝力士が変わったことしの大相撲を振り返り、「横綱 照ノ富士のけがが大きい。けがをしなければ2回は優勝できたと思う。若手が上がるんだという気持ちが必要だし、私も含めて親方衆が頑張って、強い横綱大関を作ることが必要だ」と話していました。

埼玉県出身の力士の優勝 史上2人目

平幕の力士が3人による優勝決定戦を制して優勝したのは史上初めてです。

また、埼玉県出身の力士の優勝は、去年初場所の大栄翔以来、史上2人目です。

初優勝を果たした阿炎は埼玉県越谷市出身の28歳。

身長1メートル87センチで長い腕をいかした力強い突き押し相撲が持ち味です。

高校卒業後に錣山部屋に入門し、平成25年夏場所で初土俵を踏みました。

その後も順調に番付を上げ、平成30年の初場所で新入幕を果たし、3年前の名古屋場所では新三役に昇進しました。

高々と足を上げて踏むしこは美しく、思い切りのいい取り口と明るい性格で人気を集める一方で、別の力士とともに手足と口が粘着テープなどで縛られた互いの様子を撮影した動画を自身のSNSに投稿したとして、日本相撲協会から厳重注意を受けました。

さらにこの問題を受けて開かれた研修会に参加したあと、報道陣の取材に対し「爆睡していた。寝ていて聞いていない」などと発言し、2回目の厳重注意を受けました。

また、前頭5枚目だったおととし7月場所中などに複数回に渡って接待を伴う飲食店に出入りし、日本相撲協会のガイドラインに違反したとして、3場所出場停止の懲戒処分を受けました。

たび重なる不祥事にまゆをひそめる向きもある中「一生懸命頑張るだけ。変わった自分を見せたい」と去年の春場所に西幕下56枚目で復帰し、ふた場所連続で幕下優勝して十両に戻りました。

十両でも名古屋場所で11勝、秋場所で12勝を挙げ続く九州場所で7場所ぶりに幕内に復帰しました。

幕内でもふた場所連続で12勝をあげて春場所は自己最高位の関脇に昇進し、その後も三役を守っていましたが小結だった名古屋場所で勝ち越したあと、右ひじと左足首を手術して秋場所は休場しました。

前頭9枚目まで番付を下げて迎えた休場明けの今場所は、手術の影響を感じさせない力強い突き押しで白星を重ね、千秋楽に優勝決定戦も含めて3連勝し、逆転で初めての優勝を果たしました。

阿炎「見てくれていると思って集中した」錣山親方は入院で休場

初優勝を果たした阿炎は表彰式のあと報道陣の取材に応じ、体調不良で入院し今場所を休場した師匠で元関脇・寺尾の錣山親方から26日に「気合いの入った相撲を見せてくれ」というメールが来ていたことを明かしました。

そして「師匠が見てくれていると思って集中した」と千秋楽の土俵に上がったということです。

阿炎が新型コロナウイルスに関する相撲協会のガイドラインに違反したなどとして3場所出場停止の処分を受けたときも師匠からは「周りに迷惑をかけたのだからしっかり稽古して返しなさい」と諭されたということで、「少しは返せたかな」とほっとしたような表情を見せました。

師匠からは場所を通じてメールでアドバイスをもらっていたということで「アドバイスをしてくれてしっかり自分の相撲を取り切れてよかった。会ったら握手してもらえたらうれしい」と笑みを浮かべていました。

阿炎 勝因は思い切りのよさ

阿炎は7月にひじと足首の手術を受け、今場所は休場明けでしたが、師匠の元関脇・寺尾の錣山親方のことばを胸に刻んで得意の突き押しで白星を重ね、初めての賜杯をつかみました。

新型コロナのガイドラインに違反したことによる3場所の出場停止で一時は幕下まで番付を下げた阿炎は幕内に戻った去年の九州場所でいきなり12勝を挙げて優勝争いを盛り上げ、続くことし初場所でも12勝を挙げて優勝争いに絡み、一気に三役復帰を果たしました。

ここからというところでしたが、ことし7月の名古屋場所のあと右ひじと左足首の手術を決断しました。

「ここ2、3年痛かった。ひじは入門する前から痛めていました。それがずるずると長引いてしまって、しっかりここで治さないといけないと思い手術しました」と理由を明かしていました。

秋場所は休場し、地道なリハビリを続けた阿炎。

今場所に向けては師匠の元関脇・寺尾の錣山親方から「リハビリの場所だから、勝っても負けてもいいから思い切ってやりなさい」と言い聞かせられていました。

師匠に言われたとおり、阿炎は初日から思い切った相撲内容を福岡の土俵で見せました。

初日の碧山戦では、立ち合いから強烈なもろ手突きで重い相手を後ずさりさせ、そのまま突っ張って圧倒しました。

取組後にはコンディションについて「けがをする前に近い」と、手応えを感じているようでした。

前頭9枚目で前半戦は上位陣との対戦が組まれない中、着実に白星を重ねて今場所も優勝争いに加わり、終盤戦では三役力士との対戦が組まれました。

12日目には関脇・若隆景と、14日目には3敗で並んでいた関脇・豊昇龍と対戦し、今場所を休場した師匠から毎日もらうメールに書かれている「一番集中」ということばどおり、気持ちのこもった相撲で関脇を連破しました。

思い切りのよさに加え、冷静に相手の動きを見ながら相撲を取る判断力も光り、11日目からは5連勝で終盤戦を駆け抜け、見事に初優勝を果たしました。