政治資金のネット関連支出 5年前の約1.6倍に SNS関連は17倍

インターネットを利用した選挙運動が解禁されてから来年で10年になります。

総務省に届け出があった国会議員関係の政治団体の去年の政治資金収支報告書について、NHKがネット関連の支出を独自に集計した結果、SNS関連の支出が大幅に増加し、5年前のおよそ1.6倍の1億8000万円余りに上ったことが分かりました。

NHKは総務省が25日公開した去年の政治資金収支報告書のうち、政党支部を含む国会議員関係の702の政治団体を対象に、支出や支払先の項目に「ホームページ」や「WEB」「SNS」などインターネット関連の用語が記載された金額を独自に集計しました。

その結果、全体のおよそ29%にあたる207の政治団体にネット関連の支出の記載があり、総額は1億8333万円に上りました。

去年と同様、衆議院選挙が行われた2017年の収支報告書も同じ方法で分析したところ、支出の総額は1億1470万円で、4年間でおよそ1.6倍になっていました。

中でも「Facebook」や「LINE」「YouTube」などSNSに関連した記載がある支出の総額は、4873万円で、284万円だった2017年に比べて17倍に増えています。

国会議員関係の政治団体には、収支報告書が各都道府県の選挙管理委員会に提出され、今回の集計に含まれない団体が少なくとも1400以上あり、ネット関連の支出の総額は実際にはさらに多いとみられます。

インターネットを利用した選挙運動が解禁されてから来年で10年を迎えますが、政治資金の支出の状況からは、政治の現場でネットやSNSを活用した活動が広がっていることがうかがえます。

【ネット関連支出詳細】

総務省が公開した政治資金収支報告書のうち国会議員関係の政治団体の支出の項目には「ホームページ」や「WEB」「SNS」などネットに関連した幅広い内容が記載されています。

具体的には
▽「ホームページ管理運営代」や「サーバー使用料」などのサイトの維持・管理に必要な経費のほか、
▽メールマガジン配信業務
▽LINE公式アカウントの利用料などの記載が多くありました。
中には、「SNSサポート代」として合わせて484万円、「YouTube配信映像・音声制作料」として合わせて258万5000円などSNSを通じた情報発信に多額の費用を投じているとみられる団体や、ネット上のひぼう中傷などに対応するコンサルティング会社に対し、「WEB対策費」として50万円余りを支払っている団体もありました。

SNS活用の政治家支援サービスとは

政治資金収支報告書にネット関連の支出先として記載された企業を取材すると、SNSを活用した政治家の活動を支援するさまざまなサービスが生まれていることが分かってきました。

このうち「ネット秘書」の利用料金の支出先として記載された企業のホームページを見ると、政治家のツイッター発信を支援するサービスの内容が紹介されています。

このサービスでは、
▽投稿内容を分かりやすい内容するための添削や
▽フォロワー数など運用実績の分析、
▽政策やターゲット層に合わせた目標設定などをマンツーマンで支援するとしています。

さらにある政治団体から「ネット広報費」として88万円が支出された都内の会社を取材すると、
▽SNSの効果的な活用法などを紹介する政治家向けのオンラインセミナーや、
▽選挙区内の有権者だけに30秒のPR動画やバナー広告などを配信する「ターゲティング広告」などのサービスを提供していました。

このサービスでは選挙区だけでなく、有権者を性別や年齢、興味のある政策などから絞り込んで、政治家のPR広告を配信することもできるということです。

この会社のサービスを利用する全国の政治家や候補者は地方議員を含めておよそ3000人に上り、その数は、この5年間で10倍以上に増えているということです。

サービスを提供している選挙・政治情報サイトの運営会社の高畑卓代表取締役は「文書でなく、ショート動画を使って有権者にPRするのが候補者側の最新のトレンドです。新型コロナの前は街頭演説やビラ配りが活動の中心でしたがコロナ後は、有権者と握手することも難しくなり、ネットでのPRに多くの時間を割くよう変わってきたと思います」と話していました。

若い世代ほど情報は「インターネット」から

有権者は政治や選挙に関する情報を主にどこから得ているのか。

前回の衆議院選挙のあと、選挙の啓発活動を行っている都内の公益財団法人が有権者3150人を対象に行った調査では、
▽テレビが60.4%、
▽新聞が17.8%、
▽インターネットは16.1%でした。

一方、世代別にみると若い世代ほど「インターネット」と回答した割合が高く、
▽30歳から49歳は31%、
▽18歳から29歳は41.9%でいずれもテレビは下回りましたが、新聞を大きく上回りました。

このほか、選挙でインターネットをどのように利用したのか、18歳から29歳の有権者に複数回答で聞いたところ、
▽ニュースサイトや選挙情報サイトが28.2%、
▽政党や候補者のホームページ・ブログが18.5%、
▽政党や候補者のツイッター、フェイスブック、インスタグラムが17.7%、
▽動画共有サイトが11.3%でした。

専門家「政治家が本腰を入れてSNSを使おうとしている」

政治心理学が専門でネットと政治の関係に詳しい麗澤大学川上和久教授は今回の結果について、「ネットの情報は、テレビや新聞と違い自分の思いを編集されずに発信できる強みがあり、政治家にとって大きな魅力になっている。政治資金がこれだけネット関連に使われているということは政治家たちが本腰を入れてSNSを使おうとしている表れだと思う」と指摘しました。

そのうえで、「政治や選挙でネットの活用が進むことで政治参加が活性化し、民主主義が成熟するというメリットが期待できる一方、ネット空間では自分が好む意見だけを受け入れる傾向があり、アメリカではネット政治によって社会の分断が進んだと指摘されている。ネットの情報をうまく咀嚼して政治参加に利用する有権者を増やしていくことが重要だ」と話しています。