金融危機から25年 米利上げなどで新たな危機に警戒感強まる

25年前の1997年11月24日、当時、4大証券の一角だった「山一証券」が自主廃業に追い込まれました。この月は大型の金融破綻が相次ぎ、日本は深刻な金融危機に陥りました。その後も世界で金融危機が繰り返される中、現在は、アメリカの利上げなどを背景に新興国の債務が膨らんでいて、新たな危機につながらないか、警戒感が高まっています。

25年前「暗黒の11月」

25年前の1997年11月、「暗黒の11月」とも呼ばれたこの月は、「三洋証券」「北海道拓殖銀行」「山一証券」「徳陽シティ銀行」が相次いで経営破綻。

翌年の10月には「長銀」=「日本長期信用銀行」12月には「日債銀」=「日本債権信用銀行」が破綻しそれぞれ一時国有化されるなど日本の金融システムが根底から揺らぎました。

日本の金融危機は2003年になってようやく沈静化したものの、2008年には、リーマン・ショックが発生するなど、その後も世界で金融危機が繰り返されています。

足元では、新型コロナウイルス対応として実施された大規模な財政出動などで新興国や途上国の債務が膨らんでいます。

国際決済銀行によりますと、ことし3月末の時点の新興国全体の政府や企業などの債務の合計は82兆ドルと、2011年12月末の時点と比べ、およそ2.6倍に拡大しています。

インド洋の島国・スリランカは、財政運営の失敗に新型コロナの影響も重なって外貨不足に直面し、深刻な経済危機に陥りました。

アメリカなどが記録的なインフレを抑えるため、大幅な利上げに踏み切る中、新興国で資金の流出や、ドル高によるドル建ての債務の増大が一段と加速すれば、金融市場の混乱などを通じて新たな金融危機につながりかねないことから、警戒感が高まっています。

繰り返される金融危機

25年前の1997年11月、「三洋証券」、「北海道拓殖銀行」が経営破綻したのに続いて、当時の4大証券の一角、「山一証券」が自主廃業に追い込まれました。

バブル経済の崩壊以降、株価が大幅に値下がりし、不動産価格の下落も続いたことなどから、金融機関は巨額の不良債権を抱えました。大手銀行などは軒並み赤字に転落し、翌年には、長銀=日本長期信用銀行や日債銀=日本債権信用銀行が破綻するなど日本の金融システムが根底から揺らぎました。

不良債権処理を急ぐため、銀行などが企業への融資を控える「貸し渋り」が社会問題化するなど、金融危機は、企業の資金繰りにも影響を及ぼし日本経済の低迷を長引かせる要因となりました。

1990年代の金融危機を経て日本は、金融危機を防ぐための規制の枠組みや危機が起きたときに金融システムの安定化をはかる具体的な手段や法制度などを整え金融危機は2003年の夏には沈静化しました。

しかし金融危機は繰り返されます。2008年9月には、アメリカの大手証券会社、「リーマン・ブラザーズ」の破綻をきっかけにした世界的な金融危機が発生。アメリカの住宅市場の悪化でサブプライムローンと呼ばれる低所得者向け住宅ローンが焦げ付き、関連する金融商品に投資していた証券会社やヘッジファンドなどが多額の損失を計上しました。

「リーマンショック」をきっかけに世界同時株安が急速に進行するなど、金融市場は大混乱に陥りました。影響は瞬く間に世界中に広がり、日本でも2008年度のGDP=国内総生産の実質の伸び率は、マイナス3.6%と大幅な落ち込みとなりました。

米利上げが世界の金融市場混乱の要因になるケースも

アメリカが利上げに踏み切った際には、新興国から資金が流出し、通貨危機に陥るなどして、世界の金融市場が混乱するケースがたびたび起きています。

1994年に起きたメキシコ通貨危機では、FRBがこの年の2月から、政策金利を急速に引き上げたことで、政情不安が起きていたメキシコから資金が流出しました。この結果、メキシコの通貨・ペソは、ドルに対して一時、およそ60%急落。ドル建ての債務の返済が難しくなったメキシコは、各国から支援を受けて、危機を乗り切ったものの、その後も急激なインフレや経済の低迷が続くことになりました。

また、FRBが政策金利を引き上げた1997年には、7月にタイで通貨・バーツが急落するなど資金流出が加速して経済危機が発生。危機は、インドネシア、マレーシア、韓国などにも波及して、「アジア通貨危機」を引き起こし、翌年のロシア・ルーブル危機にもつながるなど、世界的な金融不安を招く形となりました。

そして、アメリカが大幅な利上げを続けることし。外国為替市場でドル高が続く中、新興国の通貨はドルに対して大きく下落しています。ドル建ての債務が膨らんで返済負担が増加し、新興国経済に打撃となるおそれが指摘されていて、5月には南アジアのスリランカが債務の増加と外貨不足、それに通貨安が重なり、経済危機に陥りました。

こうした事態を受けて、G20=主要20か国の財務相・中央銀行総裁会議でも新興国経済の動向が今後のリスクになると指摘されるなど、警戒感が高まっています。

新型コロナ対応収束に向かい 専門家から警鐘も

今月17日、IMF=国際通貨基金と東京大学が危機対応をテーマにした会議を都内で開きました。

会議には25年前の金融危機の際、日銀の信用機構課長として危機対応にあたり、その後、副総裁を務めた、大和総研理事長の中曽宏さんや金融庁の前の長官でニッセイ基礎研究所エグゼクティブ・フェローの氷見野良三さんのほか、インドの中央銀行の元総裁、それにアメリカの大学教授など、各国の金融の専門家らが参加しました。

この中で新型コロナウイルスをめぐる危機対応について討論が行われ、専門家からは、新型コロナ対応として各国が行った大規模な金融緩和について、他に選択肢はなかったという意見が出されました。

その一方で、緩和の規模が過剰だったのではないかという指摘や、財政出動により新興国を中心に公的債務が膨らんでいる点に注意すべきだという指摘も相次ぎました。

そのうえで、新型コロナ対応の局面が収束に向かいつつある中で、「市場の安定のために中央銀行が対応するはずだ」といった市場の過度な期待やモラルハザードを排除しなければならないとか、過度な金融緩和の継続は、金融危機の芽になりうるなど、警鐘を鳴らす意見も出されました。
討論の中で、中曽さんは、「おそらく次の世代も金融危機の管理や対応をしなければならない局面が来る。過去の危機管理のDNAを次の世代に受け継ぐことが大事だ」と指摘し、過去の金融危機の教訓を伝えていくことの重要性を強調していました。