新型コロナとインフル同時検査キット 医療機関向けの出荷増加

新型コロナとインフルエンザの同時流行が懸念される中、その両方の感染の有無を同時に調べることができる、抗原検査キットの医療機関向けの出荷が増加しています。

検査薬の製造販売などを手がける東京の会社では、ことし9月下旬から医療機関のみで使用されている、同時検査キットの販売を始めました。

先月まではほとんど受注がありませんでしたが、今月に入ってから注文が急激に増えていて、これまでに8万回分の同時検査キットを出荷したということです。

千葉県内にある配送拠点では1000万回分の在庫を確保しているということですが、会社では医療機関の間で同時流行への警戒感が高まっているとみていて、今後、厚生労働省が一般向け販売の検討を本格化することも踏まえ、需要の増加に応じて供給を増やしていきたいとしています。

医学生物学研究所の松岡修部長は「同時流行の懸念もあり、今後、本格的に検査ニーズが高まると見込まれるので、しっかり供給できるよう体制を整えていきたい」と話していました。

同時検査キット 一般販売のメリットとデメリット

医療機関などで行う新型コロナウイルスのPCR検査は、結果が出るまで1日程度かかりますが、抗原検査キットは15分ほどで結果が出ます。

新型コロナとインフルエンザの感染の有無を同時に調べる抗原検査キットの一般販売が解禁されれば、患者にとっては自宅などで簡単に発熱の原因が推測でき、医療機関を受診するか決めるうえで参考になるほか、医療機関にとっても院内での検査を減らすことにつながるため院内感染のリスクが減るほか、受診時の患者の振り分けやオンライン診療の判断材料としても有益だとされています。

一方で抗原検査はPCR検査と比べて精度が低く、ウイルス量が少ない場合は感染していても陰性と判定される「偽陰性」のリスクもあるため、同時検査キットの一般販売にあたっては「偽陰性」による診断や治療の遅れのほか、重症化や感染のまん延につながるおそれもあると指摘されています。

さらにインフルエンザは発熱から12時間経過しないと結果が陽性にならず、検体を採取したタイミングや採取する技術が結果に影響する点も懸念されています。

新型コロナウイルスとインフルエンザとの同時流行が懸念される中、厚生労働省は、医療機関のひっ迫を防ぐため、来週、専門家部会を開いて協議を行い、自宅で検査できる体制の整備を急ぐことにしています。

同時検査キット使用の医療機関は

東京 杉並区の発熱外来では今月に入って、新型コロナウイルスに加えインフルエンザの患者も出始めていますが、症状だけでどちらか判断することが難しいことから、両方の感染を同時に調べることができる抗原検査キットの利用が進んでいます。

医院の発熱外来では今月に入って280人余りが、新型コロナと診断されたほか、子どもを中心に16人がインフルエンザと診断されています。

24日も、患者がひっきりなしに訪れ、午前中だけで、15人が新型コロナに1人がインフルエンザに感染していると診断されました。

このうち9歳の女の子は、23日から38度を超える熱があり、同時検査キットで調べたところインフルエンザのA型に感染しているとわかりました。

また、30歳の男性は、発熱の症状があるものの家族などに感染している人がいないということで、同時検査キットを使ったところ新型コロナと診断されました。

たむら医院の田村剛院長は現在の流行状況について「そこまでひっ迫せずに対応できているが、今後さらに患者が増えると、すべての希望者を診察できなくなるおそれがある」と話しています。

そのうえで「同時検査キットが一般販売されれば外来の緩和が期待できるが、使用方法をよく確認すると共に、自己検査で陰性になったからといって必ずしも感染していないというわけではないということを理解する必要がある」と指摘していました。