サッカー 歓喜の日本と落胆のドイツ 逆転勝利に国内外の反応は

サッカーのワールドカップカタール大会。日本代表は過去4回の優勝を誇るドイツを相手に歴史的な勝利をあげました。国内では各地で歓喜の声があがる一方、ドイツからは落胆の声、今後対戦するスペインからは驚きの声があがっています。国内外の反応をまとめました。

ドイツ ベルリンのスポーツバーでは

首都ベルリン中心部にあるスポーツバーでは、およそ50人のサッカーファンが試合を見守りました。
前半、ドイツ代表が先制した場面では大きな歓声が上がり多くの人が喜んでいましたが…

後半、同点に追いつかれると店の中は静まりかえり、さらに逆転されると、頭を抱えて悔しがる人もいました。
試合終了までドイツ代表に「前へ、前へ」「がんばれ、がんばれ」と必死の声援を送りましたが追いつくことができず、多くの人は落胆や驚きの表情を浮かべ店をあとにしていました。
試合を見た人は「本当に残念です。ドイツが2対0で勝つはずでした」とか「日本はラッキーで勝っただけです」などと話していました。

一方で「ドイツ代表は多くのチャンスを逃しましたが日本はチャンスをものにしました。日本のゴールキーパーはよかったですし、ドイツ一部リーグのフランクフルトでプレーする鎌田選手もすばらしかったです」と日本代表のプレーをたたえる人もいました。

ドイツメディア “ドイツ代表の大失敗”

ドイツのメディアはドイツが日本に敗れたことについて「ドイツ代表の大失敗」などと大きく伝えています。
このうちスポーツ専門誌の「スポーツビルト」は、23日の電子版に「ドイツ代表 大失敗のスタート」というタイトルの試合の記事と頭を抱える代表選手の写真を掲載し「信じられない。ドイツ代表の大失敗は1次リーグで敗退した前回大会を思い起こさせる」などと、厳しいトーンで伝えています。
また、ドイツの公共放送ZDFは、23日「ドイツにとってまずいスタート」というタイトルでドイツが日本に敗れたことを伝え、このなかで「ドイツ代表は日本代表を圧倒したものの、多くのチャンスを逃した。前回大会の初戦でメキシコに1対0で敗れたように恥をさらした」と指摘しています。

同じグループのスペインメディア “マジシャンのよう”

1次リーグで日本と同じグループに属し来月1日に日本と対戦するスペインでも、地元メディアは日本の勝利を大きな驚きとともに伝えています。
大手スポーツ紙「マルカ」の英語版は、23日「日本がドイツを驚かせた。ワールドカップでのもう一つのサプライズ」と見出しをつけ、前日にサウジアラビアがアルゼンチンに勝利したことを引き合いに出し「優勝候補の一角のドイツが初戦で日本に敗れた」と、試合結果を大きく伝えています。

またスペインの全国紙「ABC」は23日の電子版の記事で、試合の終盤にいずれも途中出場だった堂安選手と浅野選手が得点を決めたことについて「日本は袖の中にカードを隠し持つマジシャンのようだった。スピードと本能、信念の一撃でドイツの守りを破った」と伝えています。

歴史的な勝利に日本では

国内では各地で歓喜の声があがりました。監督や選手にゆかりのある地域では

森保監督と吉田麻也の出身地 長崎で喜びに沸く声

ドイツ戦から一夜明け、森保監督とキャプテンの吉田選手の出身地の長崎市では、興奮や喜びに沸く声が聞かれました。

18歳の会社員の女性は「森保監督は改めてすごいんだなと思いました。ドーハは昔、悔しい思いをした場所だと思うので、日本の成長が見られたと思います。次も長崎出身の吉田選手、森保監督に期待しています」と話していました。

56歳の会社員の男性は「『ドーハの悲劇』もあった場所なのでなおさらよかったと思います。森保監督のすばらしい作戦勝ちだと思います。よくて同点かなと思っていたんですけど感動しました。コスタリカ戦もぜひとも頑張ってもらいたいです」と話していました。

同点ゴールの堂安律の兄 “興奮した”

同点となるゴールを決めた堂安選手の兄からも喜びの声が聞かれました。

堂安選手は兵庫県尼崎市出身で、ことし4月、元Jリーガーで兄の憂さんと2人で、市内にサッカースクールを開校しました。
憂さんはサッカースクールで園児と小学生を指導していて、試合前には堂安選手から家族宛てにこれまでのサポートについて感謝を伝えるメッセージが携帯電話に送られたきたということです。

憂さんは「文面からは緊張感と覚悟を持って試合に臨もうとしているのが伝わってきた」と話していました。
憂さんは試合を自宅で友人と一緒に見守ったということで「弟がワールドカップで戦うためにこれまで頑張ってきたことを知っているので、努力が報われてほしいとずっと思っていました。ゴールを決めたときはことばにできないくらい感動し、興奮しました。近所迷惑ではないかと心配になるほど叫んで喜びました」と笑顔で振り返っていました。

そのうえで「プレッシャーがある中で点を決めてくれてホッとしました。次の試合も気持ちで負けずにグループステージを突破して世界を驚かせてほしい」と話していました。
そして、尼崎市内でも活躍を喜ぶ声が聞かれました。

堂安選手の実家の近くに住んでいたという60代の訪問看護師の女性は「堂安選手が幼かったころに兄弟で一緒にサッカーボールを蹴って遊んでいる姿をよく見かけましたが、当時から活発でかわいらしい子でした。幼少のときから知っている子が世界で活躍してくれて、みんなうれしいと思います。ずっと応援していきたい」と話していました。

決勝ゴールの浅野拓磨 地元の三重県では

決勝ゴールを決めた浅野選手の出身地 三重県菰野町でも、勝利から一夜明けた24日、前日夜の試合の興奮をそのままに浅野選手の活躍を喜ぶ声が聞かれました。

30代の塾講師の男性は、塾のテレビで試合を見ていたということで「ゴールの瞬間は感動しました。受験を控えた生徒たちと一緒に見ていましたが、浅野選手の活躍から元気がもらえました。これからも応援します」と話していました。

菰野町では今月27日のコスタリカ戦では町民センターにパブリックビューイングの会場を設けて、町を挙げて浅野選手を応援することにしています。

浅野拓磨が兄弟で立ち上げたパン屋に大勢の人

同じ三重県にある浅野選手が兄弟で立ち上げたパン屋には大勢の人が訪れて祝福していました。

浅野選手は7人きょうだいの上から3番目で、2020年に2番目の兄の晃平さんと四日市市にパン屋を立ち上げました。

逆転勝利から一夜明け、パン屋には大勢の人が訪れて列を作りパンを買い求めるとともに、店長を務める晃平さんに祝福のことばを伝えていました。

浅野選手の地元の菰野町から訪れた20代の女性は「ゴールへのお祝いの気持ちが伝わればと思い、パンを買いにきました。地元から応援しているのでがんばってほしい」と話していました。
兄で店長の浅野晃平さんは「4年前は代表の選考に漏れ、今回は大会の直前でけがをしましたが、苦難を乗り越えてやってくれました。次の試合でもゴールを決めて、決勝トーナメント進出を決めてほしい」と話していました。

森保監督が通う広島の理髪店店主からも喜びの声

サッカー日本代表の森保監督は、サンフレッチェ広島の監督時代を含め、30年近く広島市南区にある理髪店で髪を切っています。

理髪店の店主の沖本静夫さんも試合をテレビで見たということで「優勝候補のドイツを相手にどんでん返しがあればいいなと思って見ていました。前半は苦しい展開でしたが、森保監督はよく辛抱される方で責任感も強いので、そういった気持ちが選手に伝わって後半の逆転につながったと思います」と話していました。
森保監督は先月上旬に髪を切りに来たということで「ワールドカップまではもう切る時間がないと言っていました。監督がやぼったくならないように、いつもよりも少し軽めにして、前髪も短くしてバランスがよくなるようにしました。私からはサッカーの話はせず、『気をつけて楽しんで来てください』と声をかけました」と話していました。

そして次の試合に向けて「とにかく楽しんでプレッシャーに飲み込まれず、監督自身がやりきったと思えるまで頑張ってほしいです」とエールを送りました。

天皇皇后両陛下の長女 愛子さまも応援

日本がドイツに勝利した試合は、天皇皇后両陛下の長女の愛子さまもテレビで観戦されました。

側近によりますと愛子さまはテレビの前で応援し、日本代表チームの活躍を喜ばれていたということです。

両陛下は、23日夜、宮中祭祀の「新嘗祭」に臨んでいたため観戦はしていませんが、報道で結果を知り喜ばれていたということです。

岸田首相も祝福 “元気もらい頑張りたい”

岸田総理大臣は参議院厚生労働委員会で「日本全国に勇気を与える素晴らしい勝利だった。ぜひ元気をもらって、私も国会で頑張りたい」と述べました。