ウクライナ ロシアの軍事侵攻から9か月 地図で振り返る戦況

ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めてから24日で9か月となります。これまでの戦況を地図で振り返ります。

ロシアのプーチン大統領はことし2月24日、ウクライナ東部の住民を保護するためとして「特別軍事作戦」を行うと宣言し、軍事侵攻を開始しました。

ロシア軍は、3月にかけて首都キーウに向けて部隊を進めましたが、補給の問題などを抱えるなか、対戦車ミサイルなどを駆使したウクライナ軍による激しい抵抗を受けました。

3月下旬には、キーウやその周辺での軍事作戦の大幅な縮小を表明し、当初想定していたとされる首都などの早期掌握を事実上断念したとみられます。

部隊が撤収したあとのキーウ近郊のブチャなどでは多くの住民が遺体でみつかり、戦争犯罪の疑いがあるとして国際社会でロシアの責任を問う声がいっそう強まりました。
ロシア軍は、4月下旬から軍事作戦が第2段階に入ったとして、東部や南部で攻勢を強めました。
5月下旬にはウクライナ側の部隊が拠点としていた製鉄所などでの激しい戦闘を経て、東部ドネツク州の要衝マリウポリを完全に掌握。
7月初めには、東部ルハンシク州の完全掌握を宣言したものの、ドネツク州の各地で、ウクライナ側の抵抗にあい戦況はこう着しました。

高機動ロケット砲システム=ハイマースなど欧米の軍事支援を受けたウクライナ軍は、反転攻勢を強め9月に入って東部ハルキウ州のほぼ全域を奪還したと発表し、さらに領土の解放を進める構えを見せました。
一方、プーチン大統領は9月下旬、予備役の部分的な動員を始めて兵員不足を補うとともに、東部と南部の4つの州の併合を一方的に宣言し、成果として強調しました。また、プーチン大統領は、核戦力の使用も辞さない構えを示すなど欧米側への威嚇も強めます。

ウクライナ軍は先月ドネツク州のリマンを奪還し、南部ヘルソン州でも反転攻勢を強めると、ロシア側は今月、州都ヘルソンを含むドニプロ川西岸地域から部隊を撤退させました。

ロシア軍は、ドニプロ川の東岸で防衛を強化するとともに、撤退させた部隊をウクライナ東部に投入しているとみられ、再び東部での戦闘が激化しています。
一方、先月8日、南部クリミアとロシアを結ぶ橋で爆発が起き、橋の一部が崩落すると、2日後、ロシア側は報復措置だとしてキーウを含む各地にミサイルや自爆型の無人機による攻撃を行いました。その後もロシア軍はウクライナ各地のインフラ施設を狙った攻撃を重ねています。

このためウクライナでは、電力などの供給に深刻な影響が続いていて、冬が厳しさを増す中でウクライナの当局や電力会社は、施設の復旧や代替手段の住民への提供を急いでいます。

アメリカの軍事支援 総額で190億ドル余りに

アメリカ国防総省は23日、これまでのウクライナへの軍事支援の総額を発表しました。それによりますと、ことし2月にロシアによる軍事侵攻が始まって以降、総額で190億ドル余り、日本円にしておよそ2兆6000億円の軍事支援を行ったということです。

具体的には射程が長く、精密な攻撃が可能だとされる高機動ロケット砲システム=ハイマース38基や、防空ミサイルシステム「ナサムス」8基、それに銃弾1億400万発余りや対戦車ミサイル「ジャベリン」8500基余り、地対空ミサイル「スティンガー」1600基余りを供与したということです。

国防総省は声明で「アメリカはウクライナの自衛のための追加の能力を供与するため、同盟国などと取り組みを続ける」として、軍事支援を継続する姿勢を強調しました。