ロシア軍事侵攻 専門家“冬の戦闘激化 来年いっぱい続くか”

ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めてから24日で9か月となります。冬の寒さが厳しさを増すなか、今後、東部を中心に戦闘が激しくなるという見方も出ています。

ウクライナ軍 占領地域のさらなる奪還目指す

ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍は、発電所などインフラ施設を標的にしたミサイルや無人機による攻撃を繰り返し、このうち首都キーウでは23日、爆発が複数あり、3人が死亡したということです。

ウクライナ国営の電力会社「ウクルエネルゴ」は23日、24時間の緊急停電を全土で実施すると発表するなど、冬の寒さが厳しさを増すなか電力不足が深刻化しています。
一方、ウクライナ軍は、欧米から供与された兵器も使い今月南部の要衝ヘルソンを奪還したことを弾みに戦況の主導権を握りながら占領地域のさらなる奪還を目指したい考えです。

これに対してロシア軍は、ヘルソンから撤退させた部隊の一部を東部のドネツク州とルハンシク州に投入しているとみられます。

さらに、支配地域を維持するために広範囲にわたって防衛線を築いていると指摘され、今後、東部を中心に戦闘が激しくなるという見方も出ています。

一方、ロシアは、プーチン大統領の側近、対外情報庁のナルイシキン長官がアメリカのCIA=中央情報局のバーンズ長官と今月、トルコで会談するなどアメリカと接触する動きも見せています。

ただ、現時点で停戦に向けて表だった動きはみられず、ロシア軍は、ウクライナ軍から激しい反撃を受けながらも依然として十分な戦闘部隊を維持しているとみられ、戦闘のさらなる長期化が懸念されています。

専門家「冬の戦闘は激化 来年いっぱい続くか」

ロシアの軍事や安全保障に詳しい東京大学先端科学技術研究センターの小泉悠 専任講師は、NHKのインタビューに対し、冬の間、戦闘が激化し、長期化は避けられないという見方を示しました。

小泉氏は、現在の戦況について、今月、ウクライナ軍が南部の要衝ヘルソンを奪還したことなどを挙げ、「この2か月は、ウクライナ軍のペースで進んできたが、今後はウクライナが主導権を取り続けられるか、ロシアがそれを取り返すのかわからなくなってきた」と述べ、ドニプロ川を挟んで対じした両軍は、互いに攻勢をかけるのが難しいとしてヘルソン周辺の戦線はこう着状態に入るという見方を示しました。

そのうえで「ロシアは、新しい勝負の場所を東部のドンバスにしようとしていて、特にバフムトの周辺で非常に激しく攻勢をかけ始めている。いったんは、大きな戦闘を休止してロシアもウクライナも次の大きな攻勢に出ようとしているが、それがいつどこなのかを探り合っている状況ではないか」と述べました。
また、冬を迎えたウクライナの戦地については、秋にぬかるんでいた地面が凍って戦車などが動きやすくなる一方、凍った地面にざんごうを掘るなど防御のための活動が困難になるとしました。
そのうえで「どちらが先に大規模な攻勢を発動して相手を受け身に回させるかが勝負になってくる」と述べ、先に大規模な攻勢を仕掛けた側が戦いを有利に進められると指摘しました。

そして「この冬の戦闘は激化するのではないか。真正面から戦力どうしをぶつけるような戦闘になる可能性が高い。互いの軍事力の地が出るような戦場になるだろう。戦闘が来年の春先まで続いて、春先にまた土がぬかるむ時期がやってきて、夏になると戦闘が再開できてということで、来年いっぱいぐらいまで戦闘が続くコースが見えてしまう」と述べました。
さらに、ロシアがウクライナ国内にある発電所などのインフラ施設をミサイルで攻撃していることについては「一種の場外乱闘だ。戦場で勝てなくなってきたからそれ以外の場所で勝てるようにしたいということだ。ただロシアは、どこかの時点で住民の生活を狙った巡航ミサイル攻撃を切り上げざるをえなくなって、戦場での勝負が中心になってくるのではないか」と述べ、巡航ミサイルの攻撃を継続することにも限界があると指摘しました。

そして、ロシアの今後の出方については「ウクライナをロシアの勢力圏に取りもどすことがロシア側の大きな目的であるように見える。これは簡単に諦められる目標ではない」と述べました。