心臓病の1歳女児 円安で海外移植の費用急騰 募金募る 仙台

重い心臓病の1歳の女の子がアメリカで心臓の移植手術を受けるため、両親が学生時代を過ごした仙台市で記者会見を開きました。費用は急激に進む円安で急騰し5億円余りと見込まれていて、両親は募金への協力を訴えました。

去年10月31日に生まれた東京・豊島区の佐藤葵ちゃん(1)は、生後間もなく心臓の壁に穴が空いているのが見つかり、2回の手術のあと、重い心不全になりました。

さらに人工心臓の手術をことし6月に受けましたが、感染症などのリスクが高く、一刻も早く心臓を移植をする必要があるということです。

ただ、国内での移植が早期に実現するかは不透明で、両親は21日、学生時代を過ごした仙台市で会見を開き、アメリカでの移植を受けるために募金に協力してほしいと訴えました。

ただ、円安が急激に進んだため手術費や渡航費などが高騰し、去年、同じようにアメリカで心臓移植を受けた別の子どもと比べるとその1.5倍にあたるおよそ5億3000万円と見込まれているということです。

父親の佐藤昭一郎さんは「家族ではどうしようもない金額が必要な状況です。娘の命を救うため支援をお願いしたいです」と話していました。

両親や支援団体は今後3か月の間をめどに募金を呼びかけることにしています。

1歳の葵ちゃん 人工心臓手術も移植必要

東京・豊島区の佐藤さん夫妻の次女、葵ちゃん(1)は現在、埼玉県内の病院に入院しています。

去年10月31日、東京都で生まれた葵ちゃんは、誕生の翌日、心臓から雑音が聞こえると指摘され、心臓の壁に穴が空いているのが見つかりました。

ことし1月、2回にわたって心臓の穴をふさぐ手術を受けましたが、心臓から血液を十分に送ることができず、重い心不全と確認されました。

翌2月には一時的に退院しましたが、だんだんとミルクが飲めなくなり4月に再び入院し、6月には体の外につける人工心臓の手術を受けました。

ただ、人工心臓をつけた状態では感染症などのリスクも高く、病院から出ることはできません。

装置の不具合や血栓ができるのに備えるため、家族の24時間の付き添いも求められ、主に母親の清香さんが病院に寝泊まりしているということです。

主治医によりますと葵ちゃんには心臓移植が必要で、両親は国内での移植を検討しましたが、早期に手術を受けられるか不透明なことから、両親は受け入れの内諾を得たアメリカのコロンビア大学病院での移植手術を希望しています。

両親の大学時代の恩師や友人らが支援

佐藤葵ちゃんの海外での心臓移植を実現させようと、両親の大学時代の恩師や友人らが集まり、仙台市で21日から募金活動を始めました。

葵ちゃんの両親、佐藤昭一郎さんと清香さんは東北大学の出身で、ともにアメフト部に所属していました。

当時、アメフト部の監督をつとめていた永野信広さんによりますと、昭一郎さんは2000年に東北大学に入学し、アメフト部の主力メンバーとして活躍するなどチームを引っ張る存在だったといいます。

また、清香さんはマネージャーとして入部し、選手たちのサポートにあたっていたということで、2人は卒業後も永野さんと交流を続けていました。

ことし7月、父親の佐藤昭一郎さんから移植のための募金に協力して欲しいと相談を受け、支援団体の中心メンバーを引き受けました。

支援団体には、永野さんをはじめとする大学のアメフト部の友人たちが集まったほか、仙台市出身の清香さんの同級生なども集まり、仙台市内ではおよそ20人で募金を行うということです。

永野さんは「人の親だったら誰もがする決断をサポートしたいと思い、募金への協力を引き受けました。葵ちゃんが元気になったらぎゅっと抱きしめてあげたい」と話していました。

永野さんたちは23日も仙台市で募金を訴えるほか今後3か月をめどに土曜日や日曜日を中心に活動を続け、早期の移植につなげたいとしています。

臓器移植 国内で早期に受けるのは難しい状況

1年間に国内で臓器移植を受けた人は、希望する人全体の2%余りにとどまり、国内で早期に移植を受けるのは難しい状況です。

日本臓器移植ネットワークによりますと、臓器移植を希望する人は10月末の時点でおよそ1万5800人いますが、1年間に実際に移植を受けられるのはおよそ400人ほど、希望者全体のわずか2%から3%ほどにとどまっています。

このため、移植を希望する人は年単位で待つ必要があり、心臓移植の場合は平均で3年ほどかかるとされています。

また、ここ数年は新型コロナウイルスの感染拡大で心臓を含む臓器提供について医師などが説明する救急医療の現場がひっ迫するなどした影響もあり、臓器提供自体の件数が減少していました。

このうち6歳未満での臓器提供は、
▼2019年には6件でしたが、
▼おととしは3件、
▼去年は3件、そして
▼ことしも10月末時点で3件にとどまっています。

これに対して心臓の移植を待つ10歳未満の人は、ことし9月末の時点で43人となっています。

こうした背景について日本臓器移植ネットワークは臓器を提供する施設が限られていることに加え、臓器提供に対する理解が広がらず、提供者が少ないことを理由としてあげています。

人口100万人あたりの臓器提供者数を世界各国で比較すると、2020年の時点で▼アメリカが38.03人、▼韓国が9.22人に対し、日本はその1割以下、0.61人にとどまっています。

一方、特に子どもの場合は年単位で移植を待つことができないケースも少なくないことから、海外で移植を希望する人も相次いでいて、日本移植学会によりますと1984年から2017年までに18歳未満の118人が海外で心臓移植を受けたということです。

ただ、海外での移植には保険が適用されないため巨額の費用がかかり、子どもの家族に大きな負担がかかるのが現状です。