COP27 気候変動の被害支援する新たな基金創設へ“画期的合意”

エジプトで開かれている気候変動対策の国連の会議、「COP27」で気候変動による被害を支援するため途上国を対象に新たな基金を創設することが決まりました。国連の枠組みで各国が協調して被害への資金支援に取り組むことが合意されるのは初めてです。

「COP27」は2週間にわたる交渉を経て会期を延長し、現地時間の20日早朝、成果文書を採択しました。

それによりますと最大の焦点となっていた気候変動による被害「損失と損害」に特化した資金支援について、特にぜい弱な途上国などを対象に新たな基金を創設することを決め、その具体的な内容は来年のCOP28で検討するとしています。

こうした基金は干ばつや洪水などの被害を受けてきた途上国側が長年求めてきたもので、さらなる経済的な負担を懸念して慎重な姿勢を続けてきた先進国側が歩み寄った形となりました。

国連の枠組みで各国が協調して被害への資金支援に取り組むことが合意されるのは初めてです。

また、成果文書には世界の平均気温の上昇を1.5度までに抑える努力を追求するとした去年のCOP26の合意の内容が改めて盛り込まれました。

さらに各国が温室効果ガスの排出量を削減する努力を高めることが緊急に必要だとして必要に応じて2030年までの削減目標を再検討し強化するとしていて、深刻さを増す気候変動への対策に各国が一致して取り組むことを求めています。

専門家「基金は画期的な合意」

気候変動対策の国際交渉に詳しい東京大学未来ビジョン研究センターの高村ゆかり教授は、「損失と損害」に特化した資金支援の基金が合意したことについて「こうした基金は特に影響を被ると考えられてきた国々が、30年来、強く求めてきたもので画期的な合意だ」と評価しました。

その上で「技術的な支援を含め資金が必要としている国々に実際に届く制度を作っていくことが必要だ」と指摘しました。

さらに今回の合意の意義についてウクライナ侵攻で欧米とロシアの対立が深まる中で行われたことを踏まえ「国際的に危機的な状況があるなど非常に難しい世界情勢の中で行われた会議だったが、去年の合意から後退するのではなく改めて温暖化対策が必要だということが確認され、国際的に対策を進めていこうということを再確認したことが一番大きな重要な点だ」と述べました。

その上で「今後は今回の合意に基づいた対策が期待される」と各国が取り組みを着実に実行に移すことの重要性を訴えました。

パキスタン「きょう初めて前向きな転換点に」

ことし大規模な水害に見舞われたパキスタンのレーマン気候変動相は閉会にあたって途上国のグループを代表してスピーチし、「私たちは30年この場で奮闘してきたが、きょう初めて、前向きな転換点を迎えることができた。損失と損害に対応する基金の設立は施しではなく、長期的な投資であり正義だ」と述べ、合意を評価しました。

ザンビア代表「基金創設を歓迎する」

アフリカ南部・ザンビアの代表は「アフリカは排出量が非常に少ないにもかかわらず、大きな「損失と損害」に苦しんでいる。そのため、世界が初めて合意に至った基金の創設を歓迎する」として、今回初めて創設された基金に期待感を示しました。

また「私たちの国では洪水や干ばつなどが起きている。そのため各国がさらなる排出削減を行い、その熱意を高めていくよう要求していく」と述べました。

ツバルの交渉団「成功した会議になる機会失った」

南太平洋の島国、ツバルの交渉団の1人は、閉幕にあたってスピーチし、新たな基金の創設は歓迎したものの、温室効果ガスの排出削減では十分な成果を得られなかったとして「私たちはこのCOPが本当の意味で成功した会議になる機会を残念ながら失った」と批判しました。

その上で、交渉団の一員として会場を訪れた4人の若者の写真を見せながら、「私たちは彼らの将来を諦めたくない」と述べ、対策の強化を各国に訴えました。

EU上級副委員長「まずは排出削減を急がなければ」

全体会合を終えた、EU=ヨーロッパ連合のティメルマンス上級副委員長は記者団に対し「今回、『損失と損害』の基金ができたことはすばらしい。しかし、まずは排出削減を急がなければいくらお金を積んでも解消できない被害に直面する。私たちは排出量の削減を急がないといけない」と述べ、地球の気温の上昇を1.5度までに抑えるためには、温室効果ガスのさらなる削減が必要だと強調しました。