APEC首脳会議が閉幕 議長国タイ 首脳宣言を採択

タイで開かれていたAPEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議は首脳宣言を採択し、19日、閉幕しました。
宣言は「ウクライナでの戦争をほとんどのメンバーが非難した」とする一方、ロシアや制裁に参加していない一部の国の主張も踏まえた内容となりました。

21の国と地域が参加するAPECの首脳会議は、岸田総理大臣や中国の習近平国家主席、アメリカのハリス副大統領、それにロシアのベロウソフ第1副首相らが出席し、19日、貿易や投資をテーマに議論を行い、閉幕しました。

そして、議長国のタイ政府は2日間の議論の成果として首脳宣言を発表し、このなかでロシアによるウクライナ侵攻について「世界経済にさらなる悪影響を与えていることを目の当たりにした」としています。

そのうえで「ウクライナでの戦争についてほとんどのメンバーが強く非難した」とする一方、ロシアに対する経済制裁などについては「ほかの見解や異なる評価があった」とも明記しました。

ロシアのウクライナ侵攻をめぐって各国の立場が異なるなかで、ロシアを非難するアメリカや日本などと、経済制裁を批判するロシアや制裁に参加していない一部の国の主張をそれぞれ踏まえた内容となっています。

こうした表現は、今月16日に採択されたG20サミット=主要20か国の首脳会議の宣言で使われたもので、各国が合意できるようAPECでも踏襲したとみられます。

米 ハリス副大統領と中国 習近平国家主席がことば交わす

アメリカのホワイトハウスは、タイのバンコクで開かれているAPEC=アジア太平洋経済協力会議の会場で19日、ハリス副大統領と中国の習近平国家主席が、短くことばを交わしたと明らかにしました。

ハリス副大統領は、両国の競争が衝突に発展しないように対話のチャンネルを維持していくという今月14日の米中首脳会談で話し合われた点について、改めて言及したということです。

一方、国営の中国中央テレビによりますと、習主席は「バイデン大統領との会談は戦略的かつ建設的なもので両国関係を次の段階に導く重要な意義があった。双方がさらに相互理解を深めて誤解や誤った判断を減らし、両国関係が健全かつ安定した軌道に戻るよう望む。ハリス副大統領にはそのために積極的な役割を果たしてもらいたい」と述べたということです。

議長国タイ プラユット首相「首脳会議は成功」

APECの首脳会議の閉幕にあたり、議長国のタイのプラユット首相が会見し「首脳会議は成功のうちに終わった」と述べ首脳宣言を採択できたこと踏まえ会議の成果を強調しました。

また、プラユット首相は「会議では核兵器についても議題にあがった」と述べ、ロシアが核戦力の使用も辞さない姿勢を見せる中、核兵器の問題に議長国として懸念を示しました。

「バンコク目標」も採択

APECの首脳会議では各国が環境に配慮しながら持続可能な形で経済成長を目指す「バンコク目標」も採択されました。

バンコク目標では、
▽気候変動や自然災害などに対処するためクリーンで低炭素なエネルギーへの移行などを進めることや、
▽海洋ごみを減らすこと、
▽違法伐採を止めるための対策を強化することなどが盛り込まれ、
世界的な取り組みで目標の達成を目指すとしています。

アメリカ高官「APECが政治問題化されてしまう懸念も」

APECでアメリカ政府を代表して各国との調整にあたった国務省のマット・マレー氏がNHKのインタビューに応じ、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐって「APECが政治問題化されてしまうと懸念する国もあった」と厳しい交渉の舞台裏を明かしました。

そのうえで宣言について「ほとんどがロシアを強く非難した」とする一方、ロシアへの制裁に参加していない一部の国の主張も踏まえる必要があったとして、すでに採択されているG20サミットの首脳宣言の文言と同じ内容になったいきさつを明らかにしました。