衆院 選挙区「10増10減」の改正公職選挙法が成立

いわゆる1票の格差を是正するため、衆議院の小選挙区の数を「10増10減」する改正公職選挙法が、参議院本会議で賛成多数で可決・成立しました。

改正法は早ければ12月下旬に施行され、それ以降公示される衆議院選挙から適用されることになります。

改正公職選挙法では、衆議院の小選挙区を
▽東京や神奈川など5つの都と県で合わせて10増やす一方、
▽宮城や新潟、広島など10の県で1つずつ、合わせて10減らすとしています。

「10増10減」する都県を含め過去最多となる140選挙区の区割りが変更されます。

この区割りをおととしの国勢調査をもとに試算すると、いわゆる1票の格差は最大1.999倍となり、現在の2.096倍から改善されます。

また比例代表は、5つのブロックで「3増3減」となります。

▽東京ブロックで2、
▽南関東ブロックで1増える一方、
▽東北ブロック、
▽北陸信越ブロック、
▽中国ブロックで、それぞれ1減ります。

改正公職選挙法は、18日の参議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党や、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、社民党、NHK党、参政党などの賛成多数で可決・成立しました。

一方、共産党、れいわ新選組は反対しました。
改正公職選挙法が成立したことを受けて、政府は今月28日にも改正法を公布する方針です。

条文では、公布から1か月が経過した日から施行するとされていて、来月12月28日にも施行されることになります。

そして、施行日以降に公示される衆議院選挙から新しい区割りが適用されることになります。

選挙制度の抜本的な改革で与野党協議へ

改正法をめぐって、衆議院の特別委員会では、自民党や立憲民主党などが提案した付帯決議が採択されました。これに基づいて、今後、選挙制度の抜本的な改革に向けた与野党の協議が始まる見通しです。

付帯決議では「法律の施行後も、選挙制度は不断に見直していくべきだ」として、速やかに与野党協議の場を設け、人口減少や地域間格差が拡大している現状を踏まえ、議員定数や地域の実情を反映した区割りの在り方などについて抜本的な検討を行うとしています。

そして、3年後・令和7年に行われる次の国勢調査の結果が出る時点をめどに具体的な結論を得るよう努力するとしています。

寺田総務相「有権者に十分な周知必要」

寺田総務大臣は、閣議の後の記者会見で「半数近くの140選挙区で変更が行われ、大幅な区割りの変更となるため、有権者に混乱が生じないよう十分な周知が必要だ。チラシや区割り改定地図を作成し、総務省のホームページやSNS、各地の選挙管理委員会の広報誌に掲載するなど、きめ細かな周知を継続的に行っていく」と述べました。

松野官房長官「混乱生じることないよう周知啓発図る」

松野官房長官は、午後の記者会見で「今回の区割り改定は『アダムズ方式』での定数配分によるはじめての改定で、選挙区間の人口格差の是正に寄与するものと考えている。政府としては、今後、選挙人をはじめ、関係者に混乱が生じることがないよう周知、啓発を図っていきたい」と述べました。

区割りはどう変わる?

今回の改正公職選挙法では、15の都県で小選挙区の数が変わります。

選挙区が増えるのは5つの都と県です。
▽東京は5つ増えて30に、
▽神奈川は2つ増えて20に、
▽埼玉と愛知は1つずつ増えて16に、
▽千葉も1つ増えて14になります。

減るのは10の県で、いずれも1つ減り、
▽広島は6、
▽宮城と新潟は5、
▽福島と岡山は4、
▽滋賀、山口、愛媛、長崎は3、
▽和歌山は2になります。

また、北海道や大阪、兵庫など10の道府県では、選挙区の数は今のままですが、線引きが変更されます。

これによって、合わせて25の都道府県で140選挙区の区割りが変わることになり、全国289選挙区の半数近く、過去最大規模の区割りの変更となります。

今回の区割り改定では、自治体の分割の解消にも力点が置かれました。

これまでは105の市区町が、複数の選挙区に分割されていましたが、分割は32の市と区に減ります。

一方、比例代表は、5つのブロックで「3増3減」となります。
▽東京ブロックが2増えて19に、
▽南関東ブロックが1増えて23になる一方、
▽東北ブロックは1減って12に、
▽北陸信越ブロックと中国ブロックも1減って10となります。

分割される「千葉4区」では

今回の区割り改定で、千葉4区は東西に2つに分割され、新4区と新14区に再編されます。

千葉4区で当選を続けてきた立憲民主党の野田元総理大臣は、分割されたあと、どちらの選挙区から立候補するのか、悩んでいるといいます。

政治家を目指した40年ほど前から駅前でのチラシ配りを続けていますが、今週号のタイトルは「悶絶の区割り」としました。
「4区か14区か、悶絶しながらの選択となる。現時点では、全くの白紙だ」などと苦しい心情を記しています。

野田氏は、NHKの取材に対し「苦悩というレベルではなく、悶絶だ。東と西、両方とも本当に長い間応援をしてくれる人がいて、今日まで続けていられる。どっちを選ぶというのはそう簡単ではない」と述べました。

野田氏は「相手が強いほうに私がチャレンジするのは当然だと思う」としたうえで、自民党の候補者がそれぞれの選挙区で誰になるかなども見極めて、選挙区を決めたいとしています

県の面積の約7割占める「岡山新3区」では

小選挙区が5から4に減る岡山県。このうち「新3区」は現在の3区と5区の大部分となる18の市町村で構成され、県の面積のおよそ7割を占める広大な選挙区となります。

この地域では、自民党の現職の国会議員3人が活動していて、自民党はこの3人から次の衆議院選挙の候補者を選ぶ方針です。
ただ、各議員の地元関係者からは「候補者に選ばれても、選挙区が広く活動が大変になる」と困惑の声が上がっています。

▽阿部俊子氏の後援会長は「1票の格差は是正されたが、住民の声が届かなくなるという危惧がある。人口割りで決めるだけで本当にいいのか疑問を覚える」と話しています。

▽加藤勝信氏の地元秘書は「選挙区の端から端まで2時間以上かかるのではないか。今までの体制で選挙区内を回りきることができるか不安に思っている」と話しています。

▽平沼正二郎氏の後援会長は「沿岸部から山間部まで広く課題もそれぞれだ。1人の政治家が見るのは大変だろうし、政治のコストが上がってしまう」と話しています。

与党の対応は

与野党各党は、今後「10増10減」の対象となる小選挙区で、候補者擁立の調整を進めることにしています。

自民党は、小選挙区の数が減る10の県のうち、滋賀、岡山、山口、愛媛の4県では、去年の衆議院選挙で議席を独占したため、現職議員のいずれかが小選挙区から立候補できない可能性があります。

また、ほかの6つの県でも、新たな選挙区で候補者の地盤が重なるところもあり、調整が必要となる見通しです。

自民党は、まずは地方組織レベルで候補者の調整を行う方針で、難航した場合は、党本部が対応することもありうるとしています。

調整にあたっては、党内の対立を避けるため、これまでの選挙結果や、世論調査のデータなど、一定の客観的な基準を用いるべきだという声も出ていて、調整の進め方も議論になる見通しです。

森山選挙対策委員長は「できるだけ早く各小選挙区で誰が戦うのか明確にしないと、総理大臣の解散権を縛るとまでは言わないが、非常に窮屈な思いをさせるのではないか」と述べ、調整を急ぐ考えを示しています。

一方、選挙区が増える5つの都と県では、新たな候補者を擁立することになり、自民党は公明党とも調整を行う見通しです。

公明党内で、東京、埼玉、千葉、愛知の4つで候補者の擁立を目指す案が出ているのに対し、自民党からは「4つも譲ることはできない」という意見が出ていて、今後、具体的な協議が行われるものとみられます。

自民 茂木幹事長「司法の判断にしっかり対応」

自民党の茂木幹事長は、記者団に対し「衆議院における1票の格差が2倍未満に縮小されることになり、司法の判断にしっかり対応するものになった」と述べました。

そのうえで「党内の候補者調整はまさにこれからだが、森山選挙対策委員長とも協力しながら、党内の意見なども丁寧に聞きながら進めていきたい」と述べました。

公明 石井幹事長“選挙区増の地域に積極的に候補者擁立目指す”

公明党の石井幹事長は、記者会見で「投票価値の平等に向けて前進となり、評価したい。選挙区が増える地域に、党として積極的に候補者の擁立を目指す考えに変わりなく、今後、自民党との協議も進め、 与党として議席を最大化できるようにしていきたい」と述べました。

一方、公明党が小選挙区の議席を確保している広島県で、選挙区が1減ることについて「引き続き、公明党で戦わさせてもらいたい」と述べ、引き続き候補者擁立を目指す考えを強調しました。

また、選挙制度を抜本的に見直す与野党協議の場が設置されることについては、「時代の状況なども変わってくるので、常に選挙制度を点検することは重要だ。公明党としても積極的に参加していく」と述べました。

野党の対応は

野党第一党の立憲民主党は、小選挙区の数が減る10の県のうち福島と新潟では、新たな選挙区で地盤が重なる議員が出るため、調整が必要になる見通しです。

調整にあたっては、地元の事情を十分に考慮する必要があるとして、まずは各県の地方組織レベルで検討を進める方針です。

一方、選挙区が増える東京、神奈川、埼玉、千葉、愛知の5つの都県については「都市部で無党派層も多く、得票を伸ばすことが期待できる」として、積極的に候補者を擁立したい考えです。

また、候補者を一本化する「野党共闘」をめぐり、野党間では「まとまらなければ与党の候補者に勝利して政権を獲得することができない」と期待する声がある一方、「まずは各党が候補者の擁立を進めるべきで、共闘は先の話だ」といった意見もあるなど温度差があり、調整が進むかどうかが焦点です。

立民 泉代表「一つの節目 選挙制度議論を」

立憲民主党の泉代表は、記者会見で「かねてから、1票の格差を是正するため、粛々と早期に成立させるべきだと訴えてきたので、一つの節目だ。大都市圏への人口の集中で都道府県ごとの議員定数の格差が広がっている状態は注視しなければならず、衆議院と参議院それぞれ、全党で選挙制度を議論していくべきだ」と述べました。

そのうえで「新たに設けられる選挙区では、当然、独自候補の擁立を進めていきたい。ほかの党との調整は、現時点では考えていない」と述べました。

立民 玄葉元外相「残念 地方の意見通りやすい仕組みに」

福島県の小選挙区が5つから4つに減ることについて、衆議院福島3区選出の立憲民主党の玄葉元外務大臣は「率直に残念で、地方の意見が通りやすい仕組みに選挙制度を抜本的に改めることも含めて考えていくべきだ。地域の一体性や生活圏、経済圏などをもっと重視した区割りになるよう工夫する必要がある」と述べました。

また「私の選挙区は2つに分かれることになり、文字どおり体が引き裂かれるような感じだが、決まったことなので対応していかなければならない。後援会の皆さんに丁寧に説明したい」と述べました。

維新 藤田幹事長「先送りせずに成立は当たり前」

日本維新の会の藤田幹事長は、記者団に対し「『やりたくない』という声もあったようだが、もともと与党が自分たちで言ってきたことであり、先送りせずに成立したことは当たり前だ。『そもそも定数削減をやろう』というわれわれのスタンスは変わらない」と述べました。

共産 田村政策委員長「制度の抜本的な改正に踏み込むべき」

共産党の田村政策委員長は、記者会見で「小選挙区制では、選挙のたびに区割りを変えなければならなくなっていて、選挙が成り立たない。区割りが何度も変わると、有権者は、自分が票を投じた候補者の議員活動を検証して次の選挙で審判をくだすことさえできなくなることもあり、制度の抜本的な改正に踏み込むべきだ」と述べました。

国民 榛葉幹事長「解散風きのうから 候補者の擁立に注力」

国民民主党の榛葉幹事長は、記者会見で「1票の格差をなくすのは当然だ。いわゆる『解散風』が、きのうあたりから、そよ風のように吹いており、いつ何があってもいいように、候補者の擁立に注力していきたい」と述べました。

課題は“住民への周知” 説明会開く選管も

改正法によって過去最大規模の区割り変更が行われることになり、課題となるのが住民への周知です。

総務省は、有権者の混乱が生じないように、ホームページなどに新たな区割り地図を掲載するほか、各地の選挙管理委員会の広報誌などでも周知するよう依頼することにしています。

また、選挙管理委員会では住民向けの説明会を開くところもあります。

このうち、東京 杉並区では17日、地域の町会長などが集まる会合で、区の選挙管理委員会が地図を配って新しい区割りや決定の経緯などを説明して理解を求めました。

杉並区は、現在、「7区」と「8区」に分けられていますが、「10増10減」により「7区」の全域と「8区」の一部の地域が、隣の中野区とともに新たにできる「27区」に分けられます。

出席した人からは「投票所の場所はどのように変わるのか」といった質問のほか、「杉並区の一部だけが分割されると、自分たちの住む杉並区の代表を選ぶという意識が薄れてしまう」といった不満も出ていました。

杉並区選挙管理委員会の江川雅志事務局長は「別の選挙区の立候補者に投票してしまわないよう、今後も説明会を開くなどして周知徹底を図りたい」と話していました。