ミサイル ポーランドに落下 専門家の見立てと今後の行方は?

ポーランドに落下したミサイルについて、16日夕方、ロシアの安全保障に詳しい防衛省防衛研究所の兵頭慎治 政策研究部長に聞きました。

ウクライナ側の迎撃ミサイルが着弾との見方

Q.落下したのはウクライナ側の迎撃ミサイルという情報もあるが見立ては?
A.ウクライナはロシア製の防空システム「S300」を持っていて、ロシア製の迎撃ミサイルの破片ではないかという指摘がある。
15日もロシアからウクライナ全土にミサイル攻撃が行われたので、ロシアから発射されたミサイルを迎撃するためにウクライナ側が発射した迎撃ミサイルの一部の破片がポーランド領内に着弾したという見方が強まっている。
ただ、今回の着弾がウクライナだけが関与している話なのか、ロシアのミサイルも着弾している可能性はあるのか、慎重に見極めていく必要がある。

Q.ウクライナの迎撃ミサイルがそのまま着弾したのか、迎撃した結果、ミサイルの破片が着弾したのか?
A.いずれの可能性もあると思う。
ただ、ミサイルの破片が見つかっていることからすると、上空で迎撃を行ったウクライナ側のロシア製ミサイルの一部がポーランド領内に着弾した可能性もあると思う。
いずれにしても、現時点では現場の状況がはっきりしていないので、断定的なことは言えない。

ポーランドもロシア製ミサイルを保有

Q.そもそも、ウクライナはロシア製のミサイルを持っている?
A.ウクライナ軍はこの戦争が始まる前に、旧ソ連製やロシア製の兵器を保有している。
それから旧ソ連製の兵器を使っていた東欧諸国から供与も受けているので、今回、ポーランド側に着弾したとみられるロシア製のミサイルも保有している。

Q.公開された写真を見ると、地面が陥没している。破片でもそのようになる?
A.落下したのがどの程度の大きさの破片、あるいはミサイルの一部なのかというのは、現時点で分かっていない。
ポーランド側の調査によって、どういう事実認定がされるのかを注目したい。

責任の所在は「難しい判断」

Q.ロシア側は今回の落下地点周辺をねらってミサイル攻撃をしていた?
A.ロシアはウクライナの首都キーウを始め、全土のインフラを破壊するためにミサイル攻撃を続けていて、ポーランドとの国境周辺を集中的に攻撃していたわけではないと思う。
必ずしもポーランドとの国境線でウクライナとロシアの戦闘が激化していたわけではない。

Q.ポーランドにミサイルが落下した責任はどこにある?
A.これは、なかなか難しい判断になると思う。
今回、ウクライナが保有するロシア製のミサイルのみが着弾したとしても、ウクライナ側が迎撃を行わざるを得なくなった原因はロシア側にある。
着弾の責任を、ポーランドやNATO全体としてどの程度認定していくのか、あるいはしないのかは、かなり政治的な対応になるとみられる。

今回の事態が示すものは?

Q.落下したミサイルについて情報が錯そうしている感がある。
A.今回の落下をめぐって、ウクライナはロシアの犯行と断定しているが、アメリカやポーランドが慎重な姿勢を見せていて事実関係をめぐってウクライナとNATO加盟国の間で温度差ができ始めている。
そこはロシアからするとつけいる余地が出てきたということで、ロシア側がウクライナの言動には信ぴょう性がないという形で強くウクライナを非難し、ウクライナとNATOの分断を図るような形で情報戦を仕掛けてくる、そういう形で利用される可能性もあるのではないかと思う。

Q.今回の事態が示すものは?
A.ウクライナ戦争が長期化する中で、NATOを巻き込んだ戦争のエスカレーションが今まで懸念されてきたが、今回、NATO加盟国のポーランドに被害が出てしまった。
戦争の火の粉が違う地域に飛んでしまうと戦争が一挙に拡大していく危険を伴うことになるので、戦争のエスカレーションが起こりうるということを改めて確認する事態になったと受け止めている。