G20首脳宣言 欧米やロシアなど立場異なる各国の主張を反映

インドネシアで開かれていたG20サミット=主要20か国の首脳会議は16日、首脳宣言を採択して閉幕しました。

宣言ではロシアによるウクライナへの軍事侵攻について「ほとんどの国が強く非難した」と明記した一方で、ロシアへの経済制裁に異論が出たことも記していて、欧米やロシアなど立場が異なる各国の主張を反映させた内容となりました。

インドネシアのバリ島で開かれたG20の首脳会議には欧米や中国、インドなどの首脳やロシアのラブロフ外相が参加しました。

16日はポーランド国内にミサイルが落下したことを受け、一部の日程が変更されましたが、午後のセッションを行い各国が首脳宣言を採択しました。

議長国のインドネシア政府が発表した首脳宣言では「ウクライナでの戦争についてほとんどの国が強く非難するとともに、人々に多大な苦痛をもたらし世界経済のぜい弱性を悪化させた、と強調した」などと明記しました。

一方、ロシアに対する経済制裁やウクライナ情勢について「ほかの見解や異なる評価があった」として、ロシアや経済制裁を行っていない一部の国の立場も踏まえました。

また「核兵器の使用、もしくは使用の脅しは容認しない」として、ロシアのプーチン政権が核戦力の使用も辞さない姿勢を示していることに明確に反対しています。

そのうえで「紛争の平和的な解決と危機に対処するための努力は、外交や対話と同様に重要で現代を戦争の時代にしてはならない」と呼びかけています。

ウクライナ侵攻後初めて開かれたG20の首脳会議では欧米とロシアが激しく対立しましたが、議論の成果である首脳宣言では、立場が異なる各国の主張を反映させて、合意を優先させた形となりました。

インドネシア大統領“首脳宣言まとめるにあたり激しいやり取り”

G20サミット=主要20か国の首脳会議の閉幕後、議長国インドネシアのジョコ大統領が記者会見し「首脳宣言をまとめるにあたり、ウクライナ情勢の議論に最も時間を要した」と述べ、異なる立場の国どうしの間で激しいやり取りがあったと明らかにしました。

そして、首脳宣言はロシアを含めたすべての参加国によって合意された内容だと強調しました。

ウクライナ ハミアニン大使「重要なのは行動を起こすこと」

G20サミット=主要20か国の首脳会議が開かれたインドネシアに駐在するウクライナのハミアニン大使は、NHKのインタビューに応じ、「大部分の国がロシアの軍事侵攻と戦争犯罪を非難しているという立場を明確に示したことはよかった」と述べ、採択された首脳宣言を歓迎しました。

そして「強い言葉での宣言はとても重要だが、もっと重要なのは実際に行動を起こすことだ」として、各国に対し、戦闘の早期終結に向けてロシアへの制裁強化など具体的な行動を求めました。

一方、ポーランド国内に落下したミサイルについてハミアニン大使は「間違いなくロシアによる軍事侵攻の直接的な結果であり、すべての責任はロシアにある」と述べたうえで、ウクライナ側から発射されたミサイルだったという情報は現時点では否定しました。

そして、ミサイルがどこから発射されたのかなど詳しい状況については、ポーランドによる調査の結果を待ちたいとの見方を示しました。

仏 マクロン大統領 “世界の分断避けるメッセージ発信”

フランスのマクロン大統領は、G20サミットの閉幕後に記者会見を開き「私たちの選択は、世界の分断を避けることだ。G20サミットは事態の緊迫化と、世界の分断を避けるため、明確なメッセージを送る責任があった」と述べ、中国やインドなども含めて戦争を望まないというメッセージを発信できたとして、今回のG20の成果を強調しました。

そのうえで「中国の習近平国家主席とは、核の脅威の拡大を避けるための詳細な意見交換を行った。中国は、今後フランスとともに重要な仲介役を果たすだろう」と述べ、ウクライナ侵攻に関する中国の役割を強調し、来年はじめに自ら中国を訪問して、対話を強化する考えを示しました。

また、ポーランド国内にミサイルが落下したことについては、「何が起きたのかを正確に解明するための調査が現在も行われていて、ポーランドと協力している」と述べ、ミサイルが落下した経緯を慎重に見極める姿勢を強調しました。