ポーランド落下のミサイル ウクライナ軍迎撃発射か 分析進める

NATO=北大西洋条約機構に加盟しているポーランドの国内に落下したミサイルについて、ウクライナ側は、ロシアによる攻撃だとして批判しています。
一方、アメリカのAP通信は、ウクライナ軍がロシアからのミサイルを迎撃するため発射したものだったとみられると伝え、ポーランド政府やNATOは、分析を進めています。

ウクライナでは15日、ロシア軍による大規模なミサイル攻撃が各地で行われましたが、ポーランドの外務省は、日本時間の15日夜遅く、ウクライナとの国境に近い村にロシア製のミサイルが落下し、2人が死亡したと発表しました。

ことし2月のロシアによる軍事侵攻以降、NATO=北大西洋条約機構の加盟国内で初めて犠牲者が出たことになります。

ポーランドのモラウィエツキ首相は16日、NATOの加盟国の領土や安全などが脅かされている場合に対応を協議すると定めた北大西洋条約第4条の適用を要請するかどうか、検討していることを明らかにし、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアによる攻撃だとして批判しています。

一方、アメリカのバイデン大統領はG7=主要7か国とNATOが行った緊急の首脳会合のあと「調査が完全に終わるまでは確かなことは言えないが、軌道から考えると、ロシアから発射されたとは考えにくい」と述べました。

また、アメリカのAP通信は、複数のアメリカ政府関係者の話として「初期段階の分析では、ミサイルは、ウクライナ軍がロシアからのミサイルを迎撃するために発射したものだったとみられる」と伝えました。

ベルギー国防省も声明で、ロシアのミサイルに対してウクライナが対空ミサイルシステムで迎撃した結果起きた可能性があるとしたうえで「現時点では、ポーランド国内の目標を故意にねらった攻撃だと示す情報はない」と明らかにしています。

ロシア国防省のコナシェンコフ報道官は16日、「写真を分析した結果、ミサイルの破片はウクライナ軍の地対空ミサイルシステムS300のものだと確認された」と主張しました。

そのうえで「ウクライナや外国の当局からロシアのミサイルだとする声明が出されたが、状況をエスカレートさせるための意図的な挑発行為だ」と批判しました。

アメリカのCNNテレビによりますと、ポーランドに落下したミサイルは、NATOの監視活動を行っていた航空機がレーダーで捕捉していたということで、ポーランド政府やNATOは、ミサイルが落下した実態の把握に向けて分析を進めています。

地対空ミサイルシステム「S300」とは

「S300」は、地上から航空機やミサイルを撃ち落とす高性能な地対空ミサイルシステムで、ソビエト時代に開発が始まりました。

システムのタイプや発射するミサイルによって性能は異なりますが、主なタイプの射程は150キロ程度で、都市など広い範囲を防御できるとされています。

S300は、ロシアやウクライナなど旧ソビエト諸国で使われてきたほか、NATO=北大西洋条約機構に加盟しているスロバキアやギリシャなどにも輸出されています。

ロシアによるウクライナ侵攻後、ウクライナは、扱い慣れたS300の供与を各国に求め、スロバキアからロシア製のS300が供与されました。

一方、ウクライナ軍やイギリス国防省などは、ロシア軍が、S300を迎撃だけでなく地上への攻撃にも転用し、高精度なミサイルの不足を補っているという見方を示しています。