GDP なぜマイナスに?日本経済が力強さを取り戻すカギは?

ことし7月から9月までのGDP=国内総生産は、前の3か月と比べた実質の伸び率が年率に換算してマイナス1.2%と、4期ぶりのマイナスとなりました。なぜマイナスになったのか?日本経済が力強さを取り戻すためのカギは?各地の現状と合わせてみていきます。

伸び悩む個人消費 消費者の節約志向強まったか

GDPが4期ぶりのマイナスとなった大きな要因の1つが、GDPの半分以上を占める「個人消費」の伸び悩みです。前の3か月に比べてプラス0.3%にとどまりました。

この時期は行動制限がない夏休みとなったものの、新型コロナの感染が拡大し、旅行や外食などのサービス消費が小幅な伸びにとどまったことに加え、スマートフォンや家電など耐久財の販売が落ち込みました。エネルギー価格や食料品などの物価上昇の影響で消費者の節約志向が強まったとみられます。

円安や物価高騰で…

物価の上昇は個人消費だけでなく企業活動にも影響を与えています。
「淡路瓦」は400年以上続く兵庫県南あわじ市の伝統産業で、「いぶし銀」と言われる輝きが国内だけでなく海外でも人気を集めていますが、燃料費や資材などの高騰が製造業者の経営を直撃しています。
このうち従業員12人の南あわじ市の会社では製造コストのうちガス代が占める割合が6割と、これまでの1.5倍に増えています。さらに、去年と比べて梱包資材は4割、運送費は1割値上がりし、会社は、ことし7月から屋根瓦の価格を10%引き上げました。
一方、コスト削減に力を入れていて、焼く前の瓦を乾燥させる部屋でボイラーの代わりに窯から出る廃熱を利用しているほか、焼く前に傷がないかなどをこれまでより厳しくチェックすることで販売できない不良品の比率をこれまでの10%から3%に下げました。

また、客のニーズに柔軟に対応したデザインや、レンガや表札などの特注品を増やし、収益につなげようとしています。
濱口健一社長は、「出荷し続けなければいけない義務感がある。これまでもコストダウンを考えてきたつもりだが、さらに厳しくなっているので、まだやれることがないか探していきたい」と話していました。

需要は回復傾向にあるけれど…

また、人手不足も景気の足を引っ張る懸念となっています。政府の新たな観光需要の喚起策、「全国旅行支援」や新型コロナの水際対策の大幅な緩和で、観光需要は回復傾向にありますが、人手の確保が課題となっています。

広島県有数の観光地、廿日市市の宮島にある創業120年の旅館では、宿泊客が感染拡大前の8割ほどに回復しています。
しかし、新型コロナの感染拡大の影響で宿泊客が減った時期に、働きがいや、よりよい給料を求めて仕事を辞めるスタッフが相次ぎました。これまでより時給を上げてスタッフを募集していますが、なかなか人が集まらず、現在のスタッフはおよそ120人で感染拡大前に比べて2割ほど少ない数で運営しています。

限られた人数で運営するため、宿泊客が部屋で食事を取れるプランを少なくして、素泊まりや朝食のみのプランを増やしました。
また、1人のスタッフに複数の業務を担ってもらう“マルチタスク化”にも取り組んでいます。例えば、フロントを担当するスタッフは、レストランが混み合う時間帯には配膳や後片づけなども担います。
錦水館の志熊聡 総支配人は「お客様に満足していただくためにも、社員がいきいきと楽しく働いてもらえることがいちばん大事だと思います。世界遺産・嚴島神社で大鳥居の工事の足場も取れて、宮島に注目が集まっているのでどうやったら喜んでいただけるのかを考えながら業務を見極めていきたい」と話していました。

カギを握る「賃上げ」

政府は巨額の財政出動で物価高に直面する消費者の支援などに乗り出しますが、それも限度があります。日本経済が力強さを取り戻すためのカギとなるのが民間が主導した賃上げの流れです。

都内にある不動産投資などを行う会社では、グループ会社を含めると正社員としておよそ300人が働いています。
会社では毎年3月に賃金改定を行っていますが、物価の上昇が続いていることからことし9月、社員全員を対象にベースアップを実施して基本給を平均で5%引き上げました。すべての社員を対象にベースアップを行ったのは2000年に創業して以来、初めてです。

若手社員の賃上げを手厚くして20代と30代の社員は基本給を最大で9%、金額にして2万円から3万円ほど引き上げたということです。会社としては今回のベースアップによって毎月の基本給を引き上げた分だけで年間でおよそ8000万円負担が増えました。
会社によりますとグループ会社を含めた純利益は昨年度は65億円と前の年度より15億円ほど増え今後も円安を背景にしたインバウンド需要の回復を見込んでいます。事業の拡大に伴い、社員の採用も増やす計画で積極的に賃上げを行うことで優秀な人材の確保にもつなげたいとしています。
不動産投資などを行う「いちご」の長谷川拓磨社長は、「人への投資を行うことが重要だと考え全社員を対象にベースアップを行った。新型コロナの影響で利益がいったん落ち込んだが、足もとでは会社の業績は戻りつつあるので、前向きにみんなが働けるように一緒にがんばっていこうと思っている」と話しています。