「プーチン氏 ウクライナ支配達成に執着」米の前駐ロシア大使

ことし9月までロシアに駐在していたアメリカのサリバン前大使は、NHKのインタビューに対し、ロシアによる軍事侵攻前の米ロの攻防の舞台裏を明かすとともに、プーチン大統領について「彼の時間軸は、われわれのものよりもずっと長く、待つことをいとわない」と述べ、プーチン氏は、時間をかけてでも、ウクライナを支配する目標を達成することに執着しているとして、強い懸念を示しました。

NHKのインタビューに応じたのは、アメリカ国務省の副長官などを歴任し、2019年12月からことし9月まで、駐ロシア大使を務めたジョン・サリバン氏です。

サリバン氏は、軍事侵攻が始まる前の去年11月、CIA=中央情報局のバーンズ長官とともに、ロシアのパトルシェフ安全保障会議書記らとモスクワで会談したことを振り返り「われわれの分析によれば、ロシアが軍事侵攻することは分かっていて、そうなればアメリカと同盟国は対抗措置をとり、ロシアは壊滅的になると説明した」と述べ、侵攻の4か月近く前に直接、警告していたことを明らかにしました。

当時、ロシア側は「そんな計画などない」として全面的に否定したということです。

「ウクライナに関する計画は時間をかけて入念に作られてきた」

また、サリバン氏は「ウクライナに関する計画は時間をかけて入念に作られてきた。プーチン大統領が15年前に行った有名な演説にまでさかのぼる」と述べ、プーチン氏は、2007年、ドイツのミュンヘンで開かれた国際会議で、NATO=北大西洋条約機構の拡大を続けるアメリカを強く批判した演説を行って話題となったそのころから、すでにウクライナを支配する構想を練っていたという見方を示しました。

一方、ウクライナでロシア軍の劣勢が伝えられていることについてサリバン氏は「プーチン氏の政治的な立場はある程度弱まった」と述べたものの「政権内でプーチン氏を追放しようとたくらんでいる者たちがいるとはいえない」とも述べ、プーチン大統領は依然として権力を維持していると分析しました。

核兵器使用の可能性は

さらにロシアが核兵器を使用する可能性については「今の時点ではありそうにない」と述べ、プーチン大統領がその使用も辞さない構えを示していることに関しては「私が大使をしていたときもロシア政府の高官からは、米ロの対立が最終的には核戦争につながるかもしれないという話は何度も聞いた。ロシアが交渉の場で使ってきた常とう手段だ」と述べました。

ただ、ウクライナが南部のクリミアを奪還するなど、ロシアにとって侵攻を開始した時よりも状況が悪化した場合は「核兵器使用のリスクを考えなければならない」と述べました。

“プーチン大統領の時間軸”

そして、今後の見通しについてサリバン氏は「プーチン大統領の時間軸は、アメリカや日本の指導者たちが持っているものよりもずっと長い。待つことをいとわず、ウクライナを支配するという目標で妥協することはない」と述べました。

そのうえで「彼はロシア帝国、つまり、合法的にロシアだと信じている世界の一部を取り戻そうとしている。独立したウクライナや、英雄的なゼレンスキー大統領にがまんならないのだ」と述べ、プーチン氏は、ロシアの歴史に名を残す政治的な遺産として、ウクライナを支配するという目標を、時間をかけてでも達成することに執着しているとして強い懸念を示しました。