ワクチン接種後死亡 アナフィラキシー疑い 対応は適切だったか

今月、愛知県で新型コロナウイルスワクチンの接種を受けた女性がその後、容体が急変し、死亡しました。

遺族が取材に応じ、アナフィラキシーショックが疑われたのに現場で適切な対応をとっていなかったのではないかとして「なぜ亡くなったのかすべて知りたい」と訴えました。

今月5日、愛知県愛西市の集団接種会場で、新型コロナウイルスワクチンの4回目の接種を受けた飯岡綾乃さん(42)が接種から5分後に「息苦しい」と訴え倒れました。

容体が急変して救急搬送されましたがおよそ1時間半後に死亡が確認され、愛知県医師会は重大な事案だとして検証することを決めています。

女性が亡くなった経緯

愛知県愛西市によりますと、亡くなった女性は、今月5日、愛西市佐織総合福祉センターの集団接種会場で新型コロナウイルスワクチンの接種を受けました。
午後2時20分ごろ、ワクチンを接種したところ、およそ5分後に女性にせきなどの症状が現れたことに看護師が気付き、女性を車いすで処置室に運び、会場にいた医師らが対応にあたったということです。

女性は息苦しさを訴え、医師から酸素の投与などの処置を受けましたが、おう吐の症状が現れ、一時的な呼吸停止に陥るなど容体が急変しました。
救急車で病院に搬送されましたが、接種からおよそ1時間半後に死亡しました。

市によりますと、女性は今回が4回目の接種で、基礎疾患はあったということですが、接種前の問診では特に異常はなかったということです。

飯岡さんの夫「なぜ亡くなったのか すべて知りたい」

亡くなった飯岡さんの夫の英治さんが11日、取材に応じ、綾乃さんは接種当日の朝、特に体調が悪い様子はなく、夕方になって突然、病院から連絡を受けて状況を知ったということです。

2日後の今月7日に、市の担当者と現場で処置した医師らから当時の状況の説明を受けましたが、この中で市の担当者が綾乃さんについて「接種直後の経過観察中に息苦しさを訴えて倒れ、血のような泡状のものを吐いた。心肺停止の状態で救急搬送されたが、病院で死亡を確認した」と説明したということです。

英治さんが重いアレルギー反応のアナフィラキシーショックではなかったのかと質問したのに対し、医師は「血たんが出ていたので肺からの出血と考えた」としたうえで、応急処置のアドレナリンの注射はしていないと説明し、なぜ注射しなかったのかと質問すると、当時の状況を伝えたうえで謝罪したということです。

英治さんは「妻がなぜ亡くなったのかどういう不備があったのかもしかしたら助かったのか。すべて知りたい」と訴えています。

アナフィラキシーとは

アナフィラキシーとは急激なアレルギー反応が起こるもので、血圧の低下や意識障害などのショック症状を起こすことがあり、適切に処置をしないと命に関わることもあります。

過去には1995年ごろ、一部のワクチンに含まれていたゼラチンが原因でアナフィラキシーが報告されましたが、現在はワクチンの成分が改良されていて、ほとんど起こることはないということです。

アナフィラキシーは、ひどい場合は命に関わることもありますが、「アドレナリン」などを注射し、適切な処置をとれば回復するとされています。

当時の対応について愛西市は…

愛西市健康推進課の服部芳樹課長は報道陣の取材に応じ、当時の対応について「その場において先生にはベストを尽くしていただいた」と話しました。

そのうえで「ご遺族は日々悲しみの中を過ごされていると思うとこのようなことになってしまったことは大変残念でならない」と話しました。

愛西市によりますと女性はワクチンの接種後、おう吐などの症状が現れたあと、意識が著しく低下して呼吸が停止したため、心臓マッサージなどの処置をしたということです。
その後、医師は看護師にアナフィラキシーショックの対処法の1つであるアドレナリンの投与を指示したということですが、血管を確保できなかったことから投与を断念したとしています。

亡くなった女性が、アナフィラキシーショックだった疑いがあるのかについて、服部課長は「現場にいた先生が女性にアナフィラキシーショックの症状が出ていると判断されたのかどうかはわからない」と話しました。

また現場で処置した医師からは「女性は看護師に体調が悪かったと話していた」と説明され、女性のおうと物に血液が混ざっていたことから肺の異常を疑いながら処置したとの報告を受けたとしています。

愛知県医師会 当時の対応について検証へ

愛知県医師会は重大な事案だとして、近く医療事故の検証を行う専門の医療安全対策委員会を緊急に開き、当時の対応について検証することにしています。

具体的には、女性がアナフィラキシーショックを起こしていた可能性があると見て、女性の体調が変化した経緯や容体が急変したあとに行われた処置などについて詳細を確認し、現場での対応に問題がなかったかどうかを調べるということです。

愛知県医師会の柵木充明会長は「女性はアナフィラキシーショックを起こしていた可能性が考えられる。死亡に至った重大な事案と受け止めていて、臨時で医療安全対策委員会を開くことも含め迅速に対応して検証したい」と話しています。

加藤厚生労働相「自治体に対応の体制確認 改めて通知した」

加藤厚生労働大臣は閣議のあとの記者会見で「厚生労働省としても必要に応じて情報の収集を行っており、きのう、自治体に向けてアナフィラキシーが起きた場合に適切に対応できる体制を改めて確認するよう依頼する事務連絡を出した。ワクチン接種を進めるよう自治体にいろいろとお願いしているタイミングなので、改めて通知させてもらった」と述べました。

愛知県 市町村に通知 再点検求める

女性の死亡を受けて愛知県は10日、県内の市町村に通知を出し、接種と応急治療の体制などを再点検するよう求めました。

このなかで接種を受けた人に、重いアレルギー反応の「アナフィラキシー」や、痛みや緊張によってめまいなどを起こす「血管迷走神経反射」などの症状がみられた場合は国が作成した手引きに従って適切な対応をとるよう求めています。

県では今後、愛西市のワクチン接種体制や事実関係の把握を進め、ワクチン接種の安全な運営に向けて取り組むとしています。