“旧統一教会の問題で「質問権」行使”と表明 永岡文部科学相

旧統一教会の問題をめぐって、永岡文部科学大臣は宗教法人法に基づく「質問権」を行使すると表明しました。「質問権」の行使による調査で、解散命令に該当しうる事実関係を把握した場合、裁判所への解散命令の請求を検討する方針です。

旧統一教会に対する宗教法人法に基づく「質問権」の行使をめぐり、永岡文部科学大臣は閣議のあとの記者会見で「旧統一教会の事案については、教会や信者などの行為に関する不法行為責任を認めた判決が多数あることなどから、専門家会議が先にまとめた基準の『公的機関において当該法人に属する者による法令違反や当該法人の法的責任を認める判断がある』という点に該当する」と述べました。

また「文部科学省で把握しているかぎり、令和3年までの民事裁判の判決で認められた損害賠償額も多数の原告につき、累計で少なくとも14億円に及ぶことなどから、基準でいう『法令違反による広範な被害や重大な影響が生じている疑いがある』と認められることにも該当する」と述べました。

そのうえで永岡大臣は「以上のことから文部科学大臣として、旧統一教会に対して報告徴収・質問権を行使することとし、できるだけ速やかに、宗教法人審議会に具体的な事項とその理由を諮問したい」と述べ、旧統一教会に対する「質問権」を行使すると表明しました。

これを受け、文部科学省は、速やかに教会への質問案とその理由をまとめ、今月中にも宗教法人審議会に諮問したうえで、「質問権」を行使する方針です。

そして「質問権」の行使による調査で、解散命令に該当しうる事実関係を把握した場合、地方裁判所への解散命令の請求を検討する方針です。

「質問権」の行使は、平成8年の法律改正でこの規定ができて以来、初めてです。

旧統一教会の担当者「質問内容に即して回答準備」

永岡文部科学大臣が宗教法人法に基づく「質問権」を行使すると表明したことについて、「世界平和統一家庭連合」、旧統一教会の担当者は「政府の意向に従って誠実に対応してまいります。ご質問いただく内容に即して回答を準備します」と話しています。

不法行為認めた民事裁判の判決

文部科学省によりますと、違法な勧誘による献金など、旧統一教会や信者の不法行為を認めた民事裁判の判決が22件あり、損害賠償額は累計で少なくとも14億円になるということです。

判決は1994年以降、東京や大阪、福岡、札幌などの裁判所で出されていて、▽旧統一教会による組織的な不法行為を認めた判決が2件、▽信者による不法行為を受け、旧統一教会の「使用者責任」を認めた判決が20件あります。

直近では東京地方裁判所がおととし、旧統一教会などに470万円余りの賠償を命じた判決があり、元信者の原告が2015年ごろまでに行った献金について、裁判所は「家族の病気などに関して不安や恐怖心をあおられ続ける中で献金をした」として、勧誘などをした別の信者の不法行為だと認め、旧統一教会にも一部で「使用者責任」があるとしました。裁判はその後、最高裁まで争われましたが、1審の判断が維持され、確定しています。

組織的な不法行為認める判断確定の判決は2件 内容は

旧統一教会による組織的な不法行為を認める判断が確定した判決は、これまでに2件あります。

このうち、2016年には信者の女性の元夫が、献金目的で多額の現金を口座から引き落とされ損害を受けたと訴えた裁判で、東京地方裁判所が旧統一教会の対応を「組織的な不法行為」と認定し、およそ3500万円の賠償を命じました。

判決は献金の呼びかけについて、「組織的活動として信者の財産状態を把握した上で献金によって夫を救うという使命のために夫の意思に反して財産を内緒で交付させていた」と指摘し、「組織的な不法行為として賠償責任を負う」と認めました。

2審の東京高等裁判所も組織的な不法行為を認めたうえで、賠償額を3700万円余りに増額する判決を言い渡し、確定しました。

もう1件は、元信者の女性が、信者らから脅迫や詐欺的な勧誘を受け入信させられ、長期間、金銭の支出などを強いられて経済的・精神的な損害を受けたと訴えた裁判で、2017年に東京地裁は組織的な不法行為にあたると判断し、旧統一教会に1000万円余りの賠償を命じました。

判決は、旧統一教会の責任について「勧誘にあたって教義の内容が利用されていることや、長年にわたり信者による同様の勧誘が行われていたこと、集めた献金が教会の活動に使われていたことなどを考慮すれば、勧誘をした信者らと旧統一教会との間に実質的な指揮監督関係があると認められる」として、信者らによる違法行為の賠償責任を負うと判断しました。

この裁判で原告の女性は、国に対しても「不法行為がありながら宗教法人法に基づく規制権限を行使しなかった」と主張して、賠償を求めていました。

しかし判決は「法律に基づく規制権限は、宗教法人の不正行為により個々の関係者が受ける損害の防止や救済を直接的な目的としているとはにわかに解しがたい」と指摘しました。

また、国が解散命令を請求しなかったことについても「解散命令請求は裁判所の職権発動をうながすものにすぎず、個々の国民の財産や精神的自由の保護を直接の目的とするものではない」と判断し、国に対する訴えは退けました。

2審の東京高裁も旧統一教会に対する訴えを認めたうえで、賠償額を1100万円余りに増額した判決を言い渡し、その後、確定しています。

「質問権」今後の想定される動き

「質問権」の行使をめぐり、今後、想定される動きについてまとめました。

Q 質問権の行使の一般的な基準はどのように使われるのか?

A 文部科学省は、基準をもとに旧統一教会への質問案とその理由をまとめ、宗教法人審議会に諮ります。宗教法人審議会の委員は宗教団体の幹部や大学教授など専門家会議と同じ19人で構成されています。委員の意見を踏まえて文部科学省は質問権を行使し、旧統一教会の許可が得られれば立ち入り調査なども行うことができます。

Q どんな質問がされるのか?

A 文部科学省は、「基準が決まったのでこれから質問案を検討する」としています。内容については、旧統一教会の組織的な不法行為を認めた民事裁判の判決や、政府に3700件以上寄せられた金銭トラブルなどの電話相談に関することなどが想定されます。

Q 質問した後はどうなる?

A 文部科学省は、解散命令に該当しうる事実関係を把握した場合、調査の途中でも地方裁判所への解散命令の請求を検討するとしています。請求があった場合、地方裁判所は、文部科学省や旧統一教会から意見を聞いたうえで、解散命令を出すかどうか判断します。文部科学省や旧統一教会は、裁判所の判断に不服がある場合、高等裁判所や最高裁判所に申し立てることができます。

Q 解散命令が出されたらどうなるのか?

A 宗教上の行為が禁止されるわけではありません。ただ、宗教法人は解散となり、固定資産税の非課税などの優遇措置が受けられなくなったり、財産を処分しなければならなくなったりします。

Q 質問権が行使されれば初めて。どこに注目すべきか?。

A 信教の自由を守りながら、宗教法人の活動にどこまで介入できるのか、そして解散命令請求につながるものが見つかるのかが重要な焦点になりそうです。今後開かれる宗教法人審議会では、質問案一つ一つについて、冷静な議論が求められます。

立民 泉代表「年内の解散命令請求へ」

立憲民主党の泉代表は、記者会見で「年内の解散命令の請求にたどりつくかどうかが問われている。これまでに寄せられている被害を認識・把握したうえで、『質問権』を行使すべきで、しっかりやってもらいたい」と述べました。

公明 石井幹事長「適切なプロセス 行使も厳正に対処を」

公明党の石井幹事長は、記者会見で「恣意的(しいてき)な運用にならないよう一般的な基準を作るべきだと主張してきたが、非常に適切なプロセスを踏んでいると思う。行使についても、適切に厳正に対処していただきたい」と述べました。