【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(11日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる11日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

「州都ヘルソン ほぼウクライナ軍の支配下に」

ウクライナ南部ヘルソン州の議会のセルヒー・ハラーニ議員は11日、首都キーウで記者会見を開き「州都ヘルソンはほぼウクライナ軍の支配下にある」と述べ、ウクライナ軍は州都ヘルソンのあるドニプロ川の西岸地域の奪還に向けた作戦の最終段階にあるという認識を示しました。

また、ハラーニ議員は州都ヘルソンではすでにウクライナ国旗が掲げられているとしています。その一方で、州都ヘルソンを含むドニプロ川の西岸地域から対岸の東側に向けて撤退しきれなかった多くのロシア軍兵士が民間人の服に着替えてとどまっているとしていて、住民には軍による掃討作戦が終わるまで自宅で待機するよう求めているということです。ドニプロ川を泳いで逃げようとして溺れて死んだロシア軍の兵士も多くいるということです。

ヘルソンをめぐっては、ロシア国防省が11日、日本時間の11日午前11時までに部隊の撤退を完了したと発表していました。

プーチン大統領のG20でのビデオ演説“そのような計画ない”

ロシア大統領府は、インドネシアで今月15日と16日に開かれるG20=主要20か国の首脳会議について、プーチン大統領は対面での出席を見送ることがすでに明らかになっていましたが、ロシア大統領府のペスコフ報道官は11日、記者団にオンライン形式での参加やビデオ演説を計画しているのか質問され「そのような計画はない」と述べ、完全に欠席することになりました。

また現地を訪問しないという決断はプーチン大統領自身が下したとしたうえで「ロシアにいる必要性があるということに関係している」と理由を説明しました。

一方、今月18日と19日にタイの首都バンコクで開かれるAPEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議についてもプーチン大統領が欠席し、出席者に向けたビデオ演説を収録する予定もないと明らかにしました。

G20の首脳会議にはラブロフ外相が、またAPECの首脳会議にはベロウソフ第1副首相がそれぞれ派遣される予定です。

“ロシア兵士の死傷者数 10万人大幅に上回る” 米軍制服組トップ

アメリカ軍の制服組トップミリー統合参謀本部議長は9日、ニューヨークで行われたイベントで、ロシアがことし2月にウクライナに侵攻して以来、ロシア軍の兵士の死傷者の数が10万人を大幅に上回っているとの見方を明らかにしました。

一方、ウクライナ側の兵士の死傷者数も同じくらいだとしたほか、民間人も4万人が死傷したとみられると指摘しました。

また、ミリー議長は、ロシア軍がヘルソンから撤退したことや、冬の間、戦闘がこう着状態になり得ることで、ウクライナとロシアの間で停戦に向けた交渉の機会がもたらされる可能性についても言及しました。

米シンクタンクと英国防省の戦況分析

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は「ウクライナ軍は10日、着実に前進した」と指摘する一方「ロシア軍の撤退完了まで一定の時間がかかり、特にウクライナ軍は州都ヘルソン周辺でロシア軍が準備した防衛線と対じすることになり、州全体でも戦闘が続くだろう」として、当面、激しい攻防が続くと分析しています。

また、ウクライナ軍がヘルソン州などで戦闘の主導権を握る中、ロシア側は一時的な停戦を探って時間を稼ぎ、その間に徴集兵の訓練を行うなど軍の立て直しを図ろうとしているという見方を示しました。

一方、戦況を分析するイギリス国防省は11日、ロシア軍が先月10日以降、電力施設や水力発電のダムなどを標的に攻撃を行い、ウクライナは広範囲で被害を受け特に首都キーウで影響が出ていると指摘しました。

そのうえで「ロシア軍は医療や暖房など重要機能に無差別に影響を与えている。軍事目標よりも重要なインフラ施設を優先して攻撃し、ウクライナ国民の士気をくじこうとする意図が強く感じられる」と分析しています。

ウクライナで戦っていたとみられる日本人男性死亡 政府関係者

ロシア軍との戦闘に参加するためウクライナに入り、現地で戦っていたとみられる日本人男性が死亡したことを日本政府関係者が明らかにしました。

日本政府はウクライナでの戦闘で日本人が死亡したという情報を受けて現地の日本大使館を通じてウクライナ側に情報提供を求めていました。

その結果、日本政府関係者によりますと、ウクライナでの戦闘で20代の日本人男性が死亡したことが分かったということです。

男性はロシア軍との戦闘に参加するためウクライナ側にたって戦っていたとみられていましたが、今月9日、死亡したということです。

ウクライナのどの地域の戦闘で死亡したのかなど詳しい情報は分かっていません。

現在、大使館が日本にいる家族との連絡などを行っているということです。

関係者によると、ロシアによるウクライナ侵攻で日本人が死亡したのはこれが初めてだということです。

日本政府は、ウクライナ全土に退避勧告を出しており、どのような目的であっても渡航はやめるよう呼びかけていました。

ウクライナ ゼレンスキー大統領「41の集落を解放」

ウクライナのゼレンスキー大統領は10日、新たな動画を公開し「きょうは、南からいい知らせがある」としたうえで「現在進行中の作戦でウクライナの国旗が本来の場所に戻ったところはすでに数十か所に上る。41の集落が解放された」と述べて、南部ヘルソン州などでロシア側から領土の奪還を進めていると強調しました。
また、ウクライナ軍のザルジニー総司令官は、ロシア軍がドニプロ川を挟んでヘルソン州の州都を含む西岸地域から対岸に部隊の撤退を始めたとする動きについてSNSに「撤退はわれわれの行動による結果だ。補給システムを破壊し、指揮統制を混乱させ、敵は逃げるしかなくなった」と投稿し、作戦の成果だとアピールしました。

一方、レズニコフ国防相は10日、ロイター通信のインタビューに対し、ロシア軍がヘルソン州の州都を含む地域からドニプロ川の対岸に部隊の撤退を始めたとする動きについて「ロシア軍はまだヘルソンとその周辺、そしてドニプロ川の西岸に残っていて、その数はおよそ4万人だ」と述べ、まだロシア軍の部隊の多くは撤退していないという分析を明かしました。

そのうえで「1日や2日で、こうした部隊を撤退させるのは容易ではなく、最低でも1週間はかかるだろう」として、川の対岸にロシア軍が撤退するにはまだ時間がかかるという見方を示しました。

“各地で紛争解決が困難に” 日本の貢献に期待 国連事務次長補

国連の「平和構築支援オフィス」のトップを務めているエリザベス・スペハー事務次長補は10日、東京都内でNHKのインタビューに応じました。
スペハー事務次長補はロシアの軍事侵攻を受けているウクライナについて、「人々をいかに支援するのか、人道的な対応や捕虜の交換、対話の可能性がないのか探っている」と述べ、貢献を模索していることを明らかにしました。

一方でウクライナ情勢を受けて、国際社会の分断が深まっていると指摘し、「国連は加盟国が合意する範囲でしか力を発揮できず、今、困難に直面している。責務を果たすため、いかに国連を強化するかを考えなければならない」と述べ、各地で紛争の解決が困難になっているとして、国連改革の必要性を訴えました。

またスペハー事務次長補は、日本が来年1月から安保理の非常任理事国を務めることを踏まえ「日本は平和構築の分野で国連に惜しみなく出資している国で高い信頼を得ている」と評価したうえで、平和構築や国連改革にリーダーシップを発揮するよう、期待を示しました。

米 ウクライナに防空システムなど560億円相当の追加軍事支援

アメリカのバイデン政権は10日、ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナに対して防空システムなど、4億ドル、日本円にしておよそ560億円相当の追加の軍事支援を行うと発表しました。

具体的には、移動式の防空システム「アベンジャー」4基や防空用の地対空ミサイル「ホーク」、それに高機動ロケット砲システム=ハイマースに使われる追加のロケット弾などが含まれています。

ロシア軍は巡航ミサイルや無人機を使ってウクライナのエネルギー関連施設など、重要なインフラ施設を集中的に攻撃しています。

アメリカ国防総省は声明で防空システムなどの供与を通じてウクライナ軍やインフラ施設を守るための防空能力を強化するとしています。

国防総省によりますとロシアによる軍事侵攻が始まって以降、アメリカがウクライナに行った軍事支援は総額でおよそ186億ドル、日本円にしておよそ2兆6000億円にのぼります。

南部ヘルソン州 ウクライナ軍 集落の奪還示す映像伝えられる

ロシア軍が部隊を撤退させると発表したウクライナ南部のヘルソン州内の地域では、ウクライナ軍が集落の奪還を進めていることを示す映像が伝えられています。

このうち、ロイター通信が配信したヘルソン州内で撮影されたとする映像では、ウクライナ軍の兵士が建物のベランダに設置されていたロシアの国旗を取り外したり、屋根にウクライナの国旗を掲げたりする様子が見てとれます。

また、ヘルソン州と隣接するミコライウ州の集落でもロシア軍が撤退した様子が伝えられ、集落に住む女性は「あまりに多くのものが破壊されました。学校は壊され、建物の窓は1枚も残されていません。ウクライナ軍が大きな困難にもかかわらず集落を解放してくれて、本当に幸せです」と話していました。