トヨタ・ソニーなど国内8社出資 先端半導体の国産化へ新会社

次世代の半導体の開発競争が世界的に激しくなる中、トヨタ自動車やソニーグループ、NTTなど日本の主要な企業8社が、先端半導体の国産化に向けた新会社を共同で設立したことが明らかになりました。経済安全保障上、重要性が増す先端半導体の5年後の量産化を目指すことにしています。

関係者によりますと新会社の名称は「Rapidus」で、
▽トヨタ自動車、
▽デンソー、
▽ソニーグループ、
▽NTT、
▽NEC、
▽ソフトバンク、
▽半導体大手のキオクシア、
▽三菱UFJ銀行の8社が出資します。

新会社では、自動運転やAI=人工知能、スマートシティーなど大量のデータを瞬時に処理する分野に欠かせない先端半導体の技術開発を行い、5年後の2027年をめどに量産化を目指します。

政府も研究開発拠点の整備費用などに700億円を補助することにしていて、近く、西村経済産業大臣が発表する見通しです。

先端半導体をめぐっては回路の幅をできるだけ細くして性能を高める「微細化」の技術開発で、アメリカや韓国、台湾のメーカーがしのぎを削っています。

現状では3ナノメートルまで量産化が進んでいますが、新会社では海外で働く日本の技術者を呼び戻すなどして、世界でも実用化されていない2ナノメートル以下の半導体の生産に道筋をつけたい考えです。

さらに政府は、欧米との共同研究を加速させながら、日本の強みである半導体の製造装置や素材などを生産する企業とサプライチェーンを構築し、国内の生産体制を強化することにしています。

日本はデータを記録するメモリや、カメラなどに使われる画像センサーなどの半導体でシェアが高いものの、高度な計算を行う先端半導体の分野ではアメリカや台湾などに後れを取ってきました。

こうした課題に対応するため、官民一体となって、先端半導体の量産化に向けたプロジェクトに乗り出すもので、各社の技術を結集し、巻き返しを図れるか注目されます。

国内でも生産強化の動き 政府も支援

あらゆる製品に欠かせない半導体は、経済安全保障上、重要な物資となっていて、世界で開発や生産を強化する動きが出ています。

アメリカではことし8月、半導体の開発や生産に520億ドル以上、日本円で7兆5000億円以上を投じることなどを盛り込んだ法律を成立させたほか、EU=ヨーロッパ連合もことし2月、官民合わせて430億ユーロ、日本円にして6兆2000億円余りを投じる方針を示しています。

これに対して日本政府は、ことし4月から半導体の生産体制を強化するため、総額6000億円余りの基金を活用し、支援に乗り出しました。
▽支援第1号は台湾のTSMCで、ことし6月にソニーグループやデンソーと共同で、熊本県に建設する予定の工場に最大で4760億円を補助することが決まりました。
さらに、
▽キオクシアなどが三重県に整備する新たな生産施設に最大で929億円、
▽アメリカのマイクロンテクノロジーが広島県に整備する生産施設に最大で464億円を補助することも決まっています。
また先端半導体の研究開発に向けて、政府はことし6月、茨城県つくば市にTSMCの新たな研究拠点を誘致しました。

そして翌月には日米両政府によるいわゆる経済版の「2プラス2」にあわせて次世代の半導体を日米で共同研究するため、国内に新しい研究開発拠点を整備する方針を表明しました。

日本としては、半導体の設計や製造に関するアメリカのノウハウを吸収しながら、日本のシェアが高い製造装置や素材の知見を組み合わせ、半導体の研究開発を加速させることにしています。

今週、閣議決定した補正予算案でも、先端半導体の技術開発や、生産拠点を整備する費用などとして、合わせて1兆3000億円余りが盛り込まれていて、半導体産業の育成が喫緊の課題となっています。

国主導の支援プロジェクト うまくいかなかったケースも

国が主導して半導体産業を支援するプロジェクトはこれまでもありましたが、海外のライバル企業との競争に敗れ、うまくいかなかったケースもあります。
日本の半導体産業は、ピーク時の1988年に世界シェアの50%を占めるなど、圧倒的な競争力を誇っていました。

しかし半導体の輸出が日米貿易摩擦の原因ともなったことから、その後、アメリカとの間で日本に海外製の半導体の輸入を義務づける「日米半導体協定」が結ばれました。

さらにこの時期、韓国や台湾のメーカーが力をつけてきたこともあり、日本の半導体産業の競争力は徐々に低下していきました。
こうしたなか、1999年に日立製作所とNECのDRAMと呼ばれる記憶用半導体の事業を統合し、エルピーダメモリが設立されました。

エルピーダメモリはその後、三菱電機の事業も引き継ぎ、DRAMのシェアで世界3位になりました。

ただ半導体産業は、巨額の設備投資を継続的に行う必要があるうえ、景気の動向によって需要や価格が乱高下します。

2009年にはリーマンショックの影響で、経営環境が急激に悪化し、国の支援を受け300億円に上る資本増強を行って経営の立て直しを進めました。

しかしその後、1ドル80円前後の歴史的な円高と、海外メーカーとの競争に敗れ、エルピーダは2012年に経営破綻しました。
エルピーダメモリは、アメリカの半導体大手、マイクロンテクノロジーに買収され、事業は受け継がれましたが、結果的に270億円余りの国民負担が発生しました。

エルピーダの破綻は、国と企業が巨額の投資に耐えられなかったことが要因のひとつとされていて、景気の動向しだいで業績が大きく変わる半導体産業を、国や企業がどこまで支えていけるかが問われています。

新会社で先端半導体の量産化へ

新たに設立される会社「Rapidus」では、世界で実用化されていない回路の幅が2ナノメートル以下の先端半導体の量産化を目指します。

こうした先端半導体は、自動運転やAI=人工知能、スマートシティーなど未来の社会に必要不可欠なものとされ、今後、需要は飛躍的に高まるとみられています。

ただ先端半導体の技術開発に日本は大きく出遅れていて、現在、主流となっている回路の幅が5ナノメートルから16ナノメートル程度のスマートフォンやデータセンター向けの半導体の開発は、台湾のTSMCや韓国のサムスン、アメリカのインテルなどが先行しています。
ことし6月には、サムスンが3ナノメートルの半導体の量産を開始したほか、2025年までにはサムスンに加えてTSMCも、2ナノメートルの半導体の実用化を目指す方針を打ち出しています。

こうしたなか日本として、今後も先端半導体の調達を海外に依存する状況が続けば、ひとたび紛争などが起き、調達が困難になった場合、日本経済に深刻なダメージが及びかねないという懸念があります。

このため新会社を設立し、官民一体となって、2ナノメートル以下の先端半導体の量産を目指すことにしたもので、すでに周回遅れともいわれる海外メーカーとの差を少しでも埋めることができるか注目されます。

出資企業のねらいは

新会社に出資する企業には、今後、需要拡大が見込まれる先端半導体を安定的に調達するねらいがあるものと見られます。

「産業のコメ」とも言われる半導体は、幅広い分野で活用されていますが、コロナ禍で調達が滞り、自動車や電機メーカーが操業をストップしたり、減産を余儀なくされたりしました。

こうしたことから、
▽トヨタ自動車やグループ会社のデンソーには、開発が進む自動運転や安全技術の進展によって、先端半導体の需要が高まることを見据え、国内に安定的な調達先を確保するねらいがあるものと見られます。
また、
▽ソニーグループは、スマートフォンのカメラなどの画像認識で使われる半導体、「CMOS画像センサー」で世界的に高いシェアを誇るほか、
▽NTTやNECは最先端の街づくり「スマートシティー」の実現などに必要な通信インフラの分野で高い技術を持っています。
さらに
▽ソフトバンクは、5Gよりさらに高度な通信規格を見据えて技術開発を進めているほか、グループ内にはイギリスの半導体開発会社「Arm」があります。

▽半導体大手の「キオクシア」もスマートフォンやデータセンターなどに使われる「フラッシュメモリ」と呼ばれる記憶用の半導体で世界的に高いシェアを維持しています。

いずれの企業も次世代に向けた技術開発で先端半導体の活用が見込まれることから、新会社に参画することで、先端半導体のサプライチェーンを構築し、安定調達につなげるねらいがあるものと見られます。