家のカギかけたっけ… 思い出せないのなんでなん?

家のカギかけたっけ…。
外出後、気になったことありませんか?
私(記者)も確認しに家に引き返したことが何度もあります。
ほんの少し前のことなのに思い出せないのなんでなん?
病気?老化?
いえいえ、理由は脳のしくみ。
そのしくみを利用した生活術もあるんです。
(大阪放送局 なんでなん取材班 井手遥 鈴椋子)

ちゃんと戸締まりしたのに

皆さんも家のカギをかけたか思い出せなくなることありませんか?
大阪中心部の商店街で聞いてみました。
60代男性
「かけ忘れたかもしれへんと思ってウチに戻って確認する。しょっちゅうやらかします」

70代女性
「あります。私だけじゃなくて、新幹線に乗った友人から『家のカギがかかっているか確認して』って頼まれたこともあります」

20代男性
「寝坊して家を出たときとか、ぼーっとして家を出たときは特に心配になります」
50人に聞いたところ40人が、カギをかけたか思い出せなかった経験があると回答しました。

このうち35人は「確認しに戻ったことがあるけど、ちゃんとかかっていた」そうです。

ちゃんと戸締まりしたのに。思い出せないのはなんで?

あなたの脳でも起きていること

疑問に答えてくれたのは、脳のしくみに詳しい加藤俊徳医師です。
「脳の中で運動を司る部分と、日々の出来事を記憶していく部分は、別のところにあります。その仕組みも違うんです。カギをかけるという行為は毎日している行動なので、新しい出来事として記憶されることが少なくなっていきます。印象に残りにくく、行動を思い返そうとしても思い出せないんです」
例えば、自転車に初めて乗るとき。

最初は脳のなかでも、運動を司る部分(大脳、小脳)と、出来事を記憶する部分(海馬)の両方が働いて、自転車の乗り方を習得しようとします。

しかし、脳は「省エネ化」していく特徴があります。

やがて自転車に乗れるようになると、出来事を記憶する海馬はほとんど働かなくなります。その結果、記憶に残りにくくなるのです。

脳の「省エネ化」こそ、カギをかけたか思い出せない理由なんです。

つきない心配 安心グッズも

とはいえ、カギをかけたか不安になることには変わりませんよね? 同じ悩みを持つ人は、たくさんいるようです。

複数のメーカーが対策グッズを販売しています。
こちらは精密部品メーカーが開発したカギのかけ忘れを通知してくれるスマートロック。

別の部品と合わせて使うと、ドアから離れたときにかけ忘れを教えてくれます。

リモートでカギをかけることや、スマホから戸締まりの履歴を確認できます。

メーカー「ユーシン・ショウワ」湯浅雄太さん
「カギをかけたか心配になることってどうしてもあると思います。不安のない生活に役立ててほしいです」
スマートロックまで手が出ないという人はこんな商品も。

カギをまわすと、表示窓の色が変わります。
外出先で心配になっても、色をチェックするだけで安心できます。

メーカー「美和ロック」佐々木亮介さん
「慌てて家を出ても、すぐ手元で確認できるのが一番の魅力だと思います。ふだんからカギをするという習慣も身につけてもらえたら」

脳に記憶させよう

今すぐにできる対策もあります。加藤医師によると、ポイントはカギをしたあとの行動。

加藤医師
「カギをかけたあとにもう1つ、プラスアルファで行動をすることです。仕組みを複雑化する必要があるんですよね。複雑な行為をすると、脳のより広い範囲を使うことになり、記憶に残りやすくなります」

とりあえず実践してみましょう。カギをかけたらポーズを取って台詞を言うことにしました。
「おっぱっぴー」

これなら確実に記憶に残ります。でも、ご近所さんとの関係が心配です。
加藤医師によると、プラスアルファの行動は、指さし確認など簡単なことでも大丈夫。

ただ、こうした行動も「脳の省エネ化」によって、次第に意識されなくなってきます。

そのため、定期的に新しい行為を取り入れるとよいそうです。カギをかけたあとスマホで撮影するのもおすすめです。

脳の効率化で脱“三日坊主”!?

とはいえ、この「脳の省エネ化」、悪いことばかりではないんです。

皆さんは新たに始めようとした勉強や運動などが長続きしなかった経験はありませんか?

私も三日坊主を繰り返してきました。社会人になってからの数年間だけでも、ホットヨガやギター、ピアノ、ダイエット…。

そんな三日坊主な私でも「脳の省エネ化」を使えば楽に続けられるかもしれないんです!

コツを教えてくれたのは、東北大学の瀧靖之教授です。

「脳の省エネ化」によって習慣化された行為。この行為をやめようとすると、今度はやめることにも多くのエネルギーを使うことになるというのです。
瀧教授
「現状維持バイアスというものがあって、日常生活の習慣を変えることは私たちにとってすごく難しいことです。ただし、いったん習慣になると、今度はやらないほうが気持ち悪くなる。まさに逆の現状維持バイアスがかかるということなります。個人差はありますが、大体2か月程度を乗り越えると今度はやめたくてもやめられなくなります」

2か月を乗り越えれば。うーん、その2か月続けることができないのですが…。

小さなことからコツコツと

実はここからがポイント。瀧教授が教えてくれたのは、少しずつ少しずつ始めて行くこと。

「スモールステップ法」と呼ばれています。

例えば、ジョギングを始めようとするとき。
最初から何キロも走ろうとせず、最初の1週間はジャージに着替える。

次は玄関まで行ってみる。

そして家の周りを走ってみるなど、とにかく何があっても2か月間、毎日続けるのがコツです。

「着替えるだけで本当にいいの?」と思ってしまいそうですが、楽しんで続けることが習慣を作るうえで重要です。

また、「歯磨き」や「食事」など、すでに習慣化されている行動の前後に行うことも効果的。新たな行動まで自然な流れができ、習慣になりやすいということです。

“なりたい自分”をイメージ

習慣化させるために大事なことが、もう1つ。

その先にどんな良いことがあるか、どんな自分になりたいかをイメージすることです。

瀧教授によると、イメージすることで、脳がその実現のために無意識に最良の選択をしていくことが研究で分かってきているということです。

脳の働きをうまく利用すれば、ストレスなく、なりたい自分になれるかもしれません。

「カギかけたかな?」と不安になるのも、三日坊主になってしまうのも、脳のしくみが背景にありました。

その仕組みを理解して、私も、もう一度ダイエットに挑戦したいと思います。